第3話

 純也はゴリゴリの肉食男子。

 三十五歳までは遊びたいと言い切るほど今を謳歌していて、暇さえあれば合コンに参加し、経験値を増やすと豪語している。

 いつか、痛い目見るのではないだろうかと心配になるも、お節介を焼くほどの間柄ではない。


 他愛ない会話をしながら、テーブルの上に所狭しと置かれた料理をつまむ。


「このエビの唐揚げ、美味しい」

「俺にもちょーだい」

「ん、いいよ」


 楢崎の皿に取り分けていると、


「鮎川、何か飲む?」

「あ、じゃあ、カルピスサワー」

「すみませーん、生中とカルピスサワー下さい」

「ホント、お前らって、いいコンビだよな」

「どこが?」

「一見クールで淡々としてるけど、間の取り方とか絶妙だしさ」

「あ、それ分かる! 熟年夫婦みたいじゃない?」

「あぁ、それそれっ!! お互いが出してる空気が同じ波長っつーの? 何か傍から見てて、すっげぇ出来上がってんだわ~」

「勝手に言ってろ」


 楢崎は身長百八十センチ超えの長身で、スーツ姿でも分かるほど筋肉が程よくついている。

 端正な顔立ちなうえ、弁護士という肩書きまであるのだから、モテないはずはない。


 けれど、『女に興味はない』と入社当時から言い切っていて、これまで浮いた噂は一度もない。

 社内でも可愛いと評判の瞳がアプローチしても一切反応を示さなかった、唯一の男だ。


 同期会や社食で会うくらいの間柄だが、本当に見た目はパーフェクトだと言える。

 問題は、アイアンマスクとも言われる無表情さと冷徹な性格だ。


「楢崎ってさ、最後に女の子抱いたの、いつ?」

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