第3話:コスチューム

「……まぁ叫んでも仕方ないか」


 仕方ないので、まずは状況を整理することにした。

 ここは間違いなくアルファンの世界――目の前に見えるのは、物語で主人公が立ち寄る小さな村、ファスタ村だ。

 この村から冒険が始まるはずだ。


 だが俺は剣も鎧も持ってない。代わりに右腕にはR.M.D、つまりリムドがある。

 これを使って何ができるか……考えろ……!


「よし、とりあえず起動だ」


 リムドの空中画面を操作してみる。

『MAP』『STATUS』『INVENTORY』『CRAFT』『SCAN』――

 アンプラのサバイバル機能は生きているらしい。


「SCAN……これ使えるか?」


 試しに村の方向へ向けてSCANを実行すると、リムドが小さく電子音を立て、半透明のホログラムが森を透過して村の構造を映し出した。


「すげぇ……! これ、アルファンで使えたら攻略サイトいらないじゃん……!」


 建物の内部構造まで表示される。村人の位置までマーキングされてるし、完全にチートだ。

 だがこれが無ければ俺は丸腰だ。

 使えるものは使わせてもらう。


「さてと。まずは……服装なんとかしないとな……」


 今着ているのは、アンプラの初期装備であるサバイバルスーツだ。

 宇宙飛行士みたいなこの格好では、アルファンの世界では奇妙奇天烈な代物だろう。

 この世界は剣と魔法の世界だしな。そんな中でSF感丸出しな格好でいたら変人扱いされてしまう。

 とりあえず見た目からなんとかせねば。


 そう思いリムドを起動させる。メニュー画面が表示され、その中の『COSTUME』を選択した。

 これはアンプラでの基本システムで、見た目を自由変えられるというものだ。中には課金しないと手に入らない物も存在する。

 アンプラはやり込んだゲームの1つなので、何十種類と服装が用意されている。

 だが……


「うーむ……どれもアルファンには似合わんな……」


 どの服装も奇抜なものばかりであり、今のこの状況では相応しくない見た目ばかりだった。

 そりゃそうだ。アンプラの世界に合わせて用意されているからな。

 SFのイメージに合う物ばかりなのは当然だ。


「ん~。何かいいのはないか……おっ。これがいいかも」


 奇抜な服装だらけ中で、比較的おとなしそうな物を発見。


「これにするか」


 選んだのは『ウェスタンスタイル』というものだ。これは西部劇に出てきそうなカウボーイをイメージとしたコスチュームである。

 カウボーイシャツとジーンズ、さらにカウボーイハット付きである。


 これなら中世風のアルファンでもギリギリ通用しそうだ。

 というわけでさっそく『ウェスタンスタイル』を選択。


 すると全身のサバイバルスーツが変化し、一瞬でウェスタンスタイルへと変化した。


「うむ。悪くない。しばらくはこのままでいよう」


 というわけで服装も決まり、さっそく動き出すことにする。


「よし……まずは村で情報収集だな。」


 俺は木陰から村の入り口まで歩を進めた。

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