第7話 竜胆 -りんどう-

日曜日。

この日は、お客さんが二人やってきた。


二人を見た時、わたしは驚いた。

二人がとてもそっくりで、平安時代のドラマで見るような服装をしていた。

そしてそれを、しっくりと自然に着こなしている。


さらに、二人は小さかった。

背が低いとかじゃなく、大人の全体をそのまま半分くらいにした感じ。


「貴船のおじじから、錦秋の君がこちらにおわすとお知らせいただき参りました」


二人はゆったりとした動作であいさつをした。


「よくお越しくださいました」


さらさんも深々とお辞儀をして言った。


二人をぐりこの部屋に案内すると、ぐりこは座布団の上で丸くなって、うとうとしていた。

部屋に入ってきた二人を見て、驚くでもなく、挨拶をするかのように尻尾を少し持ち上げてゆらゆらと揺らした。


「おぉ。錦秋の君」


「探しました。よくぞご無事で」


二人は深々と頭を下げた。


どうやらぐりこはかなり偉い存在であるようだ。


「ぐりこ、連れて行っちゃうんですか?」


ついに今日かと、わたしは恐る恐る尋ねた。


「はて、ぐりことは」


「はて、その者は知りませぬ」


「えっと……錦秋の君のこと……です」


すると二人は顔を見合わせ、そして当然のように言った。


「龍田姫の今年のお役目はまもなく終わります」


「錦秋の君は明日の満月の夜、龍穴に入らねばなりませぬ」


あぁ、本当にぐりこは行ってしまうのだ。


「龍穴は見つかったんですか?」


「貴船のおじじが見つけました」


「龍登山神社の本殿裏にございます」


これはもうきっと、どうにもならないようだ。


「明日の日の沈む前にそちらにお越しを」


「人の子は錦秋の君の薄衣を持っておりましょう。それを携えておいでくだされ」


その時、部屋の中に風が吹き込み、一瞬目を閉じた。

次に目を開いたときには、二人はいなくなっていた。




そこには、竜胆りんどうの花が二つ、落ちていた。

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