第4話 龍のお食事

「この子、何を食べるのかなぁ?」


次の日も、学校が終わると龍の子に会いにいった。

相変わらず座布団の下から出てこない龍の子を、寝転がって眺めて過ごす。


さすがに暇なので、どんぐりで工作をすることにした。

どれを使うか選別しようとどんぐりを広げた、そのとき……。




もぞっ。

籠の中の座布団が動いた。


もぞっ。

やがて、鼻が突き出される。


すんすん……。

しきりに匂いを嗅いでいるようだ。




そして。


大きな黒い目が覗いた。

しばらくわたしをじっと見た後、視線をどんぐりに移した。


龍の子はにゅるんとした動きで少しずつ籠から出てくる。

やがて、手が畳につき……。


その時、わたしは驚いた。

龍の子は、ちょっと浮いていたのだ。


畳から10センチほど高いところをすぅーっと移動している。

どんぐりに辿り着くと、また匂いを嗅いだ。


どんぐりの匂いというのはよくわからないけど、この子はなにか感じるのだろうか?


やがて龍の子は、器用に一つを手に取り……。

ぱくり、と食べてしまった。


わたしは思わず、「あ!」と声をだした。


龍は少し驚いたようにこちらを見たけど「うるさいなぁ」というように口に入れたどんぐりを殻ごとがりがり噛み砕く。


──どんぐりを食べるんだ!


さらさんに教えようと振り返ると、既に部屋の入り口に立っていて、その様子を見ていた。


「もっと持ってくる!」

わたしは湯がいて乾燥させていたどんぐりを、はりきって取りに行った。


戻ったときには、龍の子は置いていたどんぐりを全て口に入れていて、かみ砕く音を響かせていた。


「すごい食欲だねぇ」

さらさんが感心したように言った。


もしかしたら、公園でもどんぐりを食べてそのまま寝てしまったのかもしれない。


わたしはお皿を置いて、そこに追加のどんぐりを入れた。

すると、龍の子はすすす、と寄ってきてそれにも手を付け始めた。


「どんぐりころころどんぐりこ」


わたしは、龍の子の邪魔にならないくらいの小さい声で歌いながら、その食べっぷりを眺めていた。


そのとき、閃くものがあった。


「ぐりこ!」


わたしはさらさんの方を振り向いた。


「さらさん。ぐりこ!この子の名前!どんぐりが好きなぐりこ!」


「おやおや、ふふっ」


さらさんが笑った。

ちょっと気の抜けた名前だけど、それが可愛い。


龍は食べるのをやめて、口を開け、

「クァァァ」とひと鳴きした。


「まぁ、それでいい」


そう言っている気がした。


ぐりこは食べ終えると、敷いてある電気カーペットの上にべったりとお腹をつけ、目を閉じた。


「お腹をあっためて消化するんだよ、きっと。そっとしておこう」


さらさんが言ったので、部屋から引き上げた。

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