神罰の星剣
@kirara000
凍える忘却の先
夢を見た。今は無き、遠い記憶の夢を。
凍えるような雪原で、少女の悲痛な慟哭が響く。喉が酷く痛む。そうか、泣いているのは自分自身だ。血の味を噛み締めながら、痛みを振り切り尚も叫ぶ。麻痺した体の感覚から辛うじて察するに、左腕と両足は既に存在しない。
傷口から滴る鮮血が、純白の雪を紅く滲ませていく。不思議と痛みは無い。体中の体温が雪に奪われていくのを感じた。きっと自分は死ぬのだと、そんな実感と共にただ叫ぶ。悲痛な叫びは激しい吹雪の轟音に飲まれるが、それでも構わずに叫び続ける。
そうか、私は誰かを呼んでいるのだ。霞む視線の先をじっと見据えると、そこには無残にも複数の武具で身体を貫かれた黒髪の男が横たわっていた。少女は死に体の男を呼び、血に塗れた右手を伸ばす。
少女の願いに呼応するかのように、男の背から激しい炎の翼が立ち昇った。血反吐を吐きながら、男もまた、少女に手を伸ばす。
音は遠き彼方に響き、無数の黒い影が近付く気配がする。酷い恐怖と凍てつく吹雪の残響の果てで、少女の手と、男の暖かな手が結ばれ、眩い光が二人を包んだ。
視界を覆う光の中で、こちらを冷徹に見つめる神を見た。そんな気がした。
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