星の物語 終章

 1999年7月31日、ノストラダムスの大予言、その一節「空から恐怖の大王が降りてくる」という予言は、人類が抱いていた多岐に亘る不幸な想像、その全てを超越する形で的中した。四つの巨大隕石が遥か遠い宇宙の彼方から飛来したのだ。

 その巨大隕石は大小様々、最も大きな物で直径は一キロメートルにも及んだ。これらの隕石はそれぞれ、アメリカ合衆国や太平洋、日本、イギリスに落下。衝突の影響で数多くの一般人が死に至ったが、十数時間後に起こった更なる絶望に比べれば「ここまではまだ良かった」地球上の誰もが口を揃えてそう言った事だろう。

 絶望の引き金を引いたのは一人の考古学者。地球上に存在しない未知の元素で構成された巨大隕石調査の為、彼は巨大隕石の表面に直接触れた。予想外だったのは、巨大隕石がその考古学者を瞬く間に吸収してしまった事だ。後にその光景を見ていた者はこう語る「あれは植物のようであり、生物のようでもあった」と。

 考古学者を取り込んだ途端、巨大隕石は生物の心臓のように脈動し、天を衝く大樹へと姿を変えた。僅か数時間で禍々しい大樹へと成長したそれは、後に『宇宙樹うちゅうじゅ』と呼ばれ畏れられる。ここまでの事実から考えるに、巨大隕石は宇宙樹という樹木の『種』だったのだ。

 宇宙樹は種を構成していた元素を、光輝く葉から大気中に散布した。後に『魔力まりょく』と呼ばれるその未知の元素は、地球上の人々を無慈悲な篩にかける。生死を左右する強制的な生存競争だ。

 新元素たる魔力は空気感染するウイルスのように容易に人体へと入り込み、その体に強制的な進化を促した。魔力は人体をより強靭なものとし、元々地球上に存在していた病原菌はその体の前では無力同然となる。

 問題はその力を得る為、魔力に適応しなくてはならないという事。適応出来なかった人間は、体内に宿った魔力に器たる肉体が耐え切れず、無残にもその命を散らす。適応出来た人間は、体内に独自の魔力生成機能、その貯蔵器官を有し、個人差はあるものの、驚異的な身体能力、特殊能力を手に入れる事となる。

 その中でも一際大きな力を得た者達がいた。彼等の一部は、自らに与えられたその大きな力を弱者の為に使うと決意し、災禍を振り撒く宇宙樹の討滅や、人類最期の国家、その存続に心血を注ぐ。彼等彼女等は『星騎士せいきし』と呼ばれ、今日も人類の為に戦い続けている。


 宇宙樹到来から時代は進み、物語は2030年。星の物語は都市の異常現象を発端に、終幕へと向かう。

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