雲上の証人

@samuraisurfer

第一章 雲空

「……いよいよか」 


スマホの画面を見ながら、篠崎亨が呟いた。

画面はぼやけていて内容は判別できないが、

彼にとって重要な何かであることは確かだった。


スマホをポケットにしまったと同時に、

ドアの向こうから足音が近づいてきた。

彼の視線がそちらへ向いた瞬間、

部屋の扉が開き、一人の男が姿を現した。

互いに顔見知りのようで、軽く挨拶を交わす。

男は気味の悪い笑みを浮かべたまま、

彼にゆっくりと歩み寄ると、

ためらうことなく銀色の刃を胸に突き立てた。


視界は一瞬にして朱に染まり、やがて闇に沈む。


――これが、篠崎亨が最後に発した言葉であり、最後に見た映像であった。

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