第2話あなたに会うためにここにいます。

「彩奈ー!朝だよー!学校遅刻する!」


母の大きな声が聞こえた。


二日酔いで鈍く頭が痛むのに、不思議と目覚めは軽かった。

昨夜、唯杏くんとたわいも無い話をして笑い合った居酒屋の灯りが、まだ胸の奥でちろちろと揺れていた。


制服を着てご飯を食べいつもより十分支度が早く済んで家を出た。

校門まで行くと、小さい頃から一緒にいる沙耶がドン!と背中を押して話しかけてくる。


「いつもより早いね!早起き?」


「違うよ。なんか早く準備が終わっただk」


「そんなことより!彼氏と別れたのー!いい男探そっと!」


私が話し終える前に、案の定、彼女が元気よく言葉を重ねてきた。

変わらないな、と少し笑ってしまった。


「あー!なんで失恋した女の子のこと笑ってるの!ひどー!」


「やっぱり沙耶は沙耶だね、モテる理由もわかるわー」


そう話し合いながら教室に入った。

いつもどうり授業をして家に帰った。


家に帰ってからも何故か唯杏くんが忘れられなかった。

そしていつの間にか暇な時はその居酒屋に足を運んでいた。

行く度に彼がいた訳ではないが、会えればまたたわいも無い話をして家に帰る。

そんな日々が楽しかった。


そこから二週間が経った。

少し遅い時間にいつもどうり居酒屋に行くといつもの定位置に彼が席に座ってる。

私が遅かったせいかもう潰れていた。

私も隣の席に座って優しく肩を叩き、話しかけると彼はすやすや寝ていてまるで大きい赤ちゃんみたいだった。

彼を眺めながらお酒を飲み、一人で三杯目を飲み終えて、お勘定をお願いして帰ろうとした時、彼がゆっくり目を開けて私を真っ直ぐ見ながら


「うちくる?」


もともと酒気で火照っていた頬が、彼の一言でさらに色を深めた。

私は視線をそらすこともできず、ただ小さく頷くことしかできなかった

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