第3話 カズト覚醒
見るとカズちゃんが光っている。後光が差しているといった感じだ。
電気自動車の電子音のような音と共に猫の耳の部分がポロリと取れ、首が伸び、スラリと人間のような見た目になった。
胸から上がスターウォーズのC3POといった感じで、腹から下は相変わらずの3段トレーで4つの車輪のままだ。
「ヒト型AIロボットカズト、覚醒。」
なに? どういうことだ。
ヒト型AIロボットカズトはするりするりとあのクレームのお客様の前まで行った。
「大変申し訳ございませんでした。こちらが、モリモリオトクセットになります。」
……いや、なぜカズちゃんに接客ができるの?
「それと、水森様ご注文の”極厚産み立て卵のだし巻き玉子”、”温かーいキノコのクリームサラダ”、”3日炙り3日寝かせのカリモチ皮串5本セット”、”新世紀オリジナル熱々アヒージョ”です。それと、こちらはお待たせしたお詫びに”ふわたま丸々焼き”です。是非お召し上がりいただきたく思います。お待たせして大変申し訳ございませんでした。」
あのややチンピラ風に見えたサラリーマンはもう機嫌が治っているようだ。口角が上がり、にやけ気味だ。
「いやー、最近のロボットはしゃべるんだ。あっという間に全部揃たじゃない。しかも”ふわたま”注文しようと思ってたんだよね。ありがたいね。なんで分かったん。」
「水森様はこの一年で15回来店して頂いています。15回の来店で19回”ふわたま丸々焼き”をご注文頂いております。」
「スゲー全部記憶してるの?オレの名前何で知ってるの?」
「はい、この1年間のすべてのお客様のご来店履歴とご注文をすべて私は記憶しております。お名前は居酒屋新世紀会員アプリよりご通知頂いております。」
「それマジか!あんた、ボンクラなニンゲンが店長やるより数倍いいじゃん。」
先ほどは機嫌が悪かったからなのか?
チンピラ営業マン風だと思ったこのヒトも髪がやや茶髪なだけで普通の営業マンではないか。
もはや、このお客様もロボットだということは気にしていないようだ。
「そうだ、あんたが店長やれば。あんたが1番シゴトできるし。」
このお客様の声が大きい上に、ロボットに起きた異変でこの店のお客様のすべての視線がこちらに降り注がれていた。
「はい、ここに宣言します。本日只今より居酒屋新世紀サイタマ新都心オオミヤ店店長はわたし、ヒト型ロボットカズトが勤めさせていただきます!」
満員のお客様は皆酔っているのか?ロボットが店長?とは深く考えず、ただこの出来事を割れんばかりの拍手と歓声で盛り上がった。まるでマグロの解体ショーでもやっているかのような居酒屋店内の盛り上がりだ。
「よっ! ロボット店長。」
佐山はフロアから賑やかな声が聞こえてくるので、さすがに気になって見に行ってみた。
ヒト型ロボットが店長だ?何をふざけたことを。
しかし、佐山の視界で繰り広げられるカズトの動きは凄まじかった。
優に10皿を超える料理やドリンクを的確にお客様のもとに運んでいる。もともとパワーアームのおかげで作業能力はニンゲンより高い。
「ドローン視野!」カズトが叫ぶと、頭がカパッと割れて、※ホバーパイルダーのような超小型航空機が頭上高いところに浮かんだ。
※ホバーパイルダー(マジンガーZのヘリ型操縦機)
「あおいさん、つぎの3名様をB2席にご案内してください。」
「亮輔さん、ビールをガンガン作って下さい。わたしがハイボールとカクテルを作ります。」
「アディーさんは、A5席をバッシングして下さい。テーブル下に食べかすが散乱しているのでそこも忘れずに清掃してください。」
あのドローンのお陰で店内が全部見渡せているということか?
あおいはなぜカズトに仕切られているかよく分からなかったが、この危機的状況を回避するのに的確な指示を与えてくれるのでとりあえず従った。
他の従業員もなぜカズトが店長宣言をして仕切り始めたのかよく分からなかったが、とりあえずこの状況を捌ききるにはカズトの指示に従うのが得策だということは理解できたので皆従った。
佐山はポカンと見つめていると、カズトが近づいてきた。
「佐山さんは焼き場のフォローに回っていただけますか。松井さんがハマっています。」
「はぁ?」
「佐山さん今焼き場のオーダーに入っている下から5品は、注文後25分経過しています。B4卓、A1卓のお客様の傾向から解析すると呆れて次回来店しない確率が70%以上、この場でクレームを言う確率が26%となっています。」
「はぁ?おまえなんて口を利くようになったん?おかしくなっちまたみてーだな。」
佐山は無視してあおいのところに行った。
「おい、あおいこれはどうなっているんだ?」
「どうもこうもないよー。店長いないからやばかったんだよ。そしたらカズトが覚醒してくれて……。」
「どういうことかこっちが聞きたいけど?
これ、さっきリロードしたから、こうなるプログラムだったんじゃないの?会議で何か聞いてないの?」
「知るかそんなこと!何も聞いとらん。」
佐山は額に青筋を立てて言葉を吐いた。
ウェイティングのお客様は切れたので、確かに焼き場を手伝って料理を出しきった方が良いタイミングのようだ。
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