勇者だが、魔王に求婚されてしまい、討伐対象が今日から配偶者になった件

犬海よる

第1話 決戦?

 俺は17歳になっていた。この世界の成人になって1年。この世界は16歳で大人として認められるみたいだ。そして、ようやくここまで来たか。異世界に転生して17年。師匠はいるが、師匠以外の仲間はいなかった。仲間はいなくともここまで来られた。自分で自分をほめたい。魔王城に入り、玉座の間っぽいところに到着する。そこにいる魔王らしき魔物が玉座に座っていた。魔王が玉座から腰を上げる。

 

「待っていたよ。勇者君、私を倒しに来たんだね?」

「そうだ。お前を倒して、世界を平和にします。」

「その願いはかなえられないだろう。なんせ、私は君と結婚したいのだから。」


 

 ん?聞き間違いだろうか。君と結婚したいと聞こえたような…。いや、そんなわけない。結婚=俺のことを好きってことになるよな?なんだ…聞き間違いか。やはり、俺は疲れてるのか。今日のためにかなり特訓してきたからな。それとも、この魔王が結構俺にとってタイプだから、幻聴が聞こえたのだろうか…。身長が165センチぐらいで、肌は紫であるが、俺のタイプだ。


 

「おーい、聞いてる? 私と結婚してくれない?」

「嫌です。」

「きっぱり言うねぇ…。じゃあ、理由を教えてあげよう。君の強さを見込んで結婚したいと思ったんだよ。何よりも顔が好き!」


 

 ただの面食いじゃねーか。転生した俺は、ショタでイケメンではある。それは認める。それと、顔が好きと魔族に初めて言われた。魔族も人間を好きになったりするんだな……って他人事みたいに言ってる場合じゃない。罠かもしれない。油断するな俺。でも好きと言われて悪い気はしなかった。


 

「もし、断ったら?」

「君の住んでる村を焼く。」

「そうか…それは困る。やはり、戦うしかないか。」

「冗談だよ。魔王は、そんなことしない。だが、戦うのも嫌だ。結婚してよ。ね?」


 

 とにやけて、魔王が一歩ずつ近づいてきた。罠だと思ったので、俺は剣を取り出した。

「何のつもりだ!」

「どうしても結婚する気ないなら、好きになってもらうしかないと思ってね。」


 

 と囁くように言うと、剣を払いのけ、抱きつかれた。抱きつかれて、巨乳(推定Jカップ)が当たった。俺は、カップ数を当てるのだけは自信があった。そして、俺は、前世でも今世でも女の人に触れたことがなかったので、ドキドキして正直悪い気分ではなかった。(相手は魔族ではあるが)

「やめろ!」


 

 魔王を倒しに来たことを思い出し、我に返った。しかし、その時にはすでに遅かった。くそっ、女性への免疫がまるでゼロだ。魔族も女性と見ちまう…。だが、魔王はやめなかった。そして、肩に手を回し、顔を近づけてきて、キスをされた。最初に思ったのがこうだった。こいつ、キスに慣れてやがる! しかし、キスをしたことないので、すぐに好きになってしまいそうになった。そう、俺はちょろいのだ。自分ではわかっているが、まさか魔王にファーストキスをするとはだれも予想しなかっただろう。


 

「結婚したら、この私とキスも毎日できるし、それ以上もできるよ? 何より、世界中の誰もが蒼の敵になっても私だけは、いつも味方だよ。」


 

 それに、こいつは、俺が童貞というのをお見通しなのか。魔王に求婚され、平和より、自分が幸せになりたいと思ってしまう自分がいた。何より、今まで自分に対してこんなに優しい言葉をかけてくれる人はいなかった。正直、世の中の誰もが他人の幸せより、自分の幸せだろう。だんだん結婚する方に心が傾いていた。よし、決めた。俺も他人の事なんか気にせず、幸せになろう。それに村を焼かれては困る。よし、結婚しよう。これは、決して自分の欲望のためではない。村のためだ!」


 

「わかった。しょうがない。…しょうがなくですよ? 結婚してあげますよ!」


 

 と叫んだ。

「じゃあ、決まりだね。今日から、君は私の夫だね。よろしくね。私の夫だから、みんなは私のこと 魔王様と呼ぶけど、○○ちゃんとか○○って呼び捨てとか○○君って呼んでいいよ。」

 って名前は言わないんかいっ!とツッコミをいれたかったが、あえて突っ込まなかった。あと、『ちゃん』と呼び捨てはわかるが、君?君は、 国会答弁じゃあるまいし、ないだろう…と心の中でツッコミを入れた。


 

「あと、世界征服の手伝いをしてよね。『あと』って言ったけど、こっちの方が重要だけどね。」

「わかりました。頑張ります!」

「頑張ってね。期待してるよ。そうだ。せっかくだから、働きに見合ったご褒美をあげましょう。」

「ご褒美とは例えば?」

「そりゃ、勿論、あんなことやこんなことだよ?」


 

 そうか。あんなことやこんなことか…。俺はやる気しか出なかった。男っていうのは、あんなことやこんなことの報酬があると、何でも頑張れるような単純な生き物なんです。

「それじゃあ、明日は結婚パーティーをするから、みんなの顔を覚えておくように。あと、誘惑されても浮気はだめだよ。私、嫉妬深いから、怒るよ。あと、今日は、私も疲れたから、今日はだめな日だよ。ごめんね。」

「大丈夫ですよ。」

「明日は忙しくなるから、今日は寝る?」

「そうですね。寝ましょう。」

「明日は少し早起きだよ。大丈夫?」

「頑張って起きてみます。」

「うん、頑張ってね。おやすみなさい。我が愛しの夫よ。」


 

 こうして俺たちの結婚生活が幕を開けた。

------------------------------------------------------------------------------------------------ご覧いただきありがとうございます。まだまだ小説執筆は初心者ですが、間に合えば、2日に1話、22時に更新していきます。星や応援などは今後の作品作りの励みになるので、よろしければよろしくお願いいたします。

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