第3話 前夜
あたし達は、少し話し合ってから、宿に入った。
しばらくして、執事さんの使いがやってきた。
そいつは手紙と手付金と町娘の衣裳を置いて、そそくさと帰って行った。
「まぁ、後は任せるって感じかしら」
サテアは手紙を、シルヴァンは衣裳を確認している。
「もう、下着が入っていない!」
そう文句を言ったのは、もちろんエルフ。
私のを貸そうかと言うと、可愛くないからと拒否された。
「あーそうですか」
そんな事もあった夕暮れ、皆で飲み屋に出かけた。
シルヴァンは男の格好で陽気に参加している。
あたしも寝巻を兼ねた大きめの男の服。
手付金が入った事もあるけれど、どうせ、見張られているはず。
きっと奴隷商人側の手の者はいる、ならばと飲み屋に繰り出したわけ。
敵をあぶり出しておく事は、無駄じゃない、出せなくてもいいけど。
あたし達は普段通り、飲み食いし、くだらない話をしながら、たまにさりげなく辺りを見る、それだけ。
ただ、シルヴァンがそれをすると店の女の子が笑顔でやってくるだけ。
サテアは、壁の席に座って、一切、興味ないという風に飲んでいる。
長身で美形でちょっと場違い感があって、遠巻きに客も店員もチラ見して溜息をつくだけ。
スレイマンに期待するだけ無駄、使えるのは、あたしだけ。
それっぽいのが数名、さあ、どうでるか。
「あたし、眠いから先に戻るわ」
私は、立ち上がると、腕をバイバイと手を振って店の外に出た。
冬には、もう少しあるけど、夜は肌寒い。
飲み屋からあたしを追って出て来る客もいない。
(ならば…)
あたしは、建物の角で横っ飛びをすると、音も立てずに森に向かって走り出していた。
夜目は利くし、あの雑な地図でも、あたしには問題は無い。
奴隷商人、そうね敵のアジトは、ここから見える彼らの指定した場所よりも先のはず。
彼らが手練れなら、あたしはそこに近づくべきじゃない。
罠なら、仕掛け済だろうし、見張りがいるかもしれない。
明日、この場で起こることは、あの二人に一切任せる。
あたしは、近くの太い樹に駆け上る。
ここからは枝のしなりを使っての空中の移動にする。
上から月の光で踏まれた下草の影を見れば、方向はおのずと絞られる。
できれば、少しでもアジトに近い所に潜伏したいところ。
鞭を取り出して、ひとつ飛ばして別の木へと跳んだ。
そして、その樹の幹の付け根に座りこむ。
(綺麗な月)
今夜は、ここで眠ろう。私は身体を幹に委ねて眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます