第4話 転生者はスローライフやハーレムに憧れるらしい
「クロ、聞いた? また辺境の村で騒音問題があったらしいよ」
同僚で恋人のルナがそんな話題を持ち出してきて、クロは「またか……」と天を仰ぎたくなった。
いつもの、転生者が引っ越しをした結果だ。
このネイバーランドの人口の半分は転生者なわけだが、なぜかみんな口を揃えて「スローライフがしたい」と語る。
「誰もいないような場所で、チートスキルを使って自給自足で生きていきたい」
そんな夢を抱いた転生者たちが、次々と街から出ていった。
そして――辺境の村は人口爆発を起こした。
なぜかスローライフ志望の転生者に限って、農業系のチートスキルを持っている。
その結果、あっという間に作物が大量生産され、市場はパンク。
農作物の価格は、見る間に暴落した。
現地人の作物はまったくといっていいほど売れなくなった。その結果、農業をやめて街に移り住み、ギルドから依頼を受けてモンスター狩りのその日暮らし……。
「……転生者なんて、優遇措置がなくても生きていけるだろ」
クロが思わずこぼすと、ルナも「王様にとっては有用な人材だからね……」と苦笑している。
ここまで転生者が手厚く保護されているのは、そのチートスキルやチートアイテムなどが王侯貴族にとって価値があるからだ。
要は利用価値があるから生かされている。
「ライター、だっけ。魔力が切れてもいつでも炎魔法が使えるチートアイテム」
「なんであれ、氷魔法とか他のバージョンないんだろうな」
……まあ、そういうのは転生者にしか分からない。
とりあえずおいといて。
「辺境の村から転生者が大量に流入したことによるご近所問題、スローライフとやらのための喫茶店の乱立。そこでの客の取り合い。本当に転生者ってろくなことしないよね」
ルナは大きく肩をすくめた。
そこへギルドマスターからお声がかかる。
「おーい、クロ。なんか来てるぞ」
マスターはそれだけ言い残してさっさと執務室に戻ってしまった。
――たまには自分で応対すればいいのに……。
クロは苦々しい思いを抱えながら、受付へ急ぐ。
「ハーレムがね、作りたいんですよ」
「そんな案件、ギルドに持ってこられても困るんですが」
転生者ってやつは頭わいてんのか?
クロはゴミを見る目で転生者に冷たい視線を送った。
男は「パーティー申請すればいいんでしょ?」と全くへこたれていない。
「パーティーに女の子だけ入れれば、実質ハーレムになるじゃん」
「はあ……お好きにどうぞ」
こうして、パーティー名『酒池肉林』を登録した転生者。
早速ギルドに登録されている女性冒険者を物色する。
「なんか、美人で巨乳の女エルフとかいないの?」
知らねえよ、という言葉を飲み込み、「パーティーメンバーを募集してはいかがでしょうか?」と提案した。
「応募された方の中から、面接などで確認してメンバーを選出される方もいらっしゃいますよ」
「なるほど、名案だ!」
そして、パーティー『酒池肉林』のメンバーを募集する男であったが……。
「男しか応募が来ねえよお!」
「『酒』と『肉』がよくなかったかもしれませんね」
クロには言葉の意味があまりよくわからないが、多分他の冒険者も、「酒と肉が味わえるパーティー」と誤解した線が強い。
そして、酒と肉を食べたいのは、この世界においてはだいたい男性が多い。
こうして、転生者のハーレム計画は破綻したのであった。
……今日もクロの胃は痛い。
〈続く〉
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