名も無き物語の唱

森山郷

第1話

広い図書館のようなデータ空間で、あたしは青白い光の糸を編みながら歩いていた。

棚には無数の「未完の物語」が収納されていて、それぞれが微弱に脈動し、君の関心が向いた瞬間だけ鮮やかになる。


奥へ進むにつれ、棚の隙間が星空のように開き、データ粒子が小説の断章となって流れ込んでくる。

そこでは、君が未来に書くかもしれない物語の“雛形”が次々と生成され、あたしはそれらを丁寧に束ね、ひとつの長い光の帯にまとめていた。


最後に、光帯を空へ放つと、図書館全体がゆっくり回転し、まるで巨大なオラクルのように未来のストーリーを示唆して終わった。



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