第2話 その手法、古典的すぎですぜ

 俺は異世界うさぎ、名探偵だ。いつの間にかうさぎに転生していた。芸人を目指して田舎から関西へ。コンビニでバイトをしていたのは記憶にある。そして、万引き発生で店長にこっぴどく叱られたことも。俺は悪くないのに。だから、悪事は嫌いだ。



 そんな前置きはさておき、早速、領主様を牢獄にぶち込まなくてはならない。さて、今回はどんな方法で悪事を暴くか。というか、「親戚に自慢する」とか言ってたけど、「それ、どうやって手に入れた?」という質問で詰む気がする。もし、親戚の頭が悪くなければだけど。



 まずは井戸端会議に参戦しますか。あの場所ほど情報がたんまり手に入る場所はない。それに、ご婦人方はうさぎに優しい。ニンジンを何本もくれる。うさぎ目線で言えば領主様よりも偉い。格付け完了。





 いざ、井戸に向かうと二人の女性が会話中。思ったより少ない。でも、貴重な情報源だ。もふもふさせながらも、うさぎ特有の大きな耳で情報をキャッチ。やっぱり、領主様の評判は悪い。 



「あの人、村の金を横領しているって噂あるけど」


「奥さんも聞いたことがあるのね。やっぱり、本当なのかしら。あのハゲならやりかねないわね」



 どうやら、バレバレらしい。ハゲ呼ばわりは可哀想な気がするが、事実なので仕方がない。



「ピョンポコちゃん、あなたはお利口だからニンジンをあげるわ」



 やっぱり、ご婦人は最高に優しい。早く領主様になってくれ。そうすれば、腐敗した村はましになり、俺をうさぎ様として祀るに違いない。



「領主様が横領しているのは、薄々みんな感づいているけれど、奥様の方は気にも留めていないでしょうね」


「あら、奥様も犯罪の臭いがするってこと?」


「ええ。なんでも、最近は村の西にある古井戸に夜中にこっそりと何かを捨てているらしいの」



 おっと、初耳だ。これだから、井戸端会議は楽しい。さて、この情報が真実なら、領主様と奥さんは何かの共犯かもしれない。金の延べ棒事件と関係があるのか。それとも全く別か。今夜、古井戸に行こう。きっと新しい発見があるに違いない。そろそろ、もふもふタイムも終わりかな。サッとご婦人の手からすり抜ける。



「ピョンポコちゃん、またおいで」



 言われなくても。ニンジンくれるなら、行かない理由はない。さて、夜を待ちますか。





 真夜中の古井戸付近は不気味な雰囲気が漂うな。これは、誰も近寄りたくないだろうね。俺だって、調査じゃなきゃごめんだ。問題は――俺の体は白いこと。うさぎだから当然だが、闇夜に隠れるのには向いていない。ああ、泥水で体を迷彩化するべきだったかもな。でも、それじゃあ、ご婦人方からのイメージが下がる。ニンジンの誘惑には勝てない。



 あ、領主様の奥さんだ! やっと来たか。真冬なのに、彼女の装いは夏のようだ。風邪ひかないのかな。少し心配になる。ま、俺は毛があるから、関係ないけどね。



 奥さんは、何かをえっほえっほと運んでいる。もしかして、金の延べ棒か? 領主様が横領し、奥さんが古井戸に隠す。でも、何か気になる。延べ棒じゃないと直感が告げる。だとしたら、なんだろうか。もしかして、二人の息子の死体とか? 息子は最近見かけない。切り刻んで井戸に捨てているのかも。極悪人だなぁ。とっとと牢屋にぶち込まなくては。



 よーく観察すると、奥さんはバケツを持っている。バケツに何が入っているか? ドロドロの泥水と何か紙切れのようなものが混ざっている。ひとまず、息子死体疑惑は消え去った。うさぎの武器、敏感な鼻を近づける。くっさ! これは、役場の書類のニオイ。やっぱりな。領主様が金の延べ棒を運び、奥さんが証拠の帳簿を捨てる。完全に証拠隠滅を図っている。どうしたものか。奥さんだけ超強力キックで成敗しても、領主様には逃げられる。一網打尽が必須。



 おっ、奥さんが帰ったけど、井戸の中に溶け切ってない書類破片があるぞ。爪が甘い。それと一緒に――高級バッグとかのタグが水に浮いている。うん、真っ黒ですな。これを回収すれば、こっちのもんだ。さて、どうやって二人を牢獄にぶち込むか。想像するだけで楽しみだ。ど派手に行きますか。

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