準備は念入りに!
空を飛んでシオンは大聖堂へと戻ってきた。
「あれ?今、どこから現われたの???」
大聖堂前に立っていた警備の人は首を傾げたが、シオンは急ぎの用事だと教皇様のお目通しを伝えた。
普通なら拒否されるが、1ヶ月以上もここで暮らして、教皇様の護衛としていたシオンの顔を知っていたので、護衛の兵はすぐに教皇様に連絡をしてくれた。
「久しぶりというのもおかしな話じゃの。シオン1人で戻ってくるとは緊急の事案じゃろ?話してみるがよい」
個別の部屋に通されたシオンはエルフの里の話を伝えた。
「大悪魔ヴァプラじゃと!あの古の悪魔が復活しようとしていると!」
「正確には、首謀者がエルフの大樹の魔力を使って召喚しようとした所を、時を止める秘術で喰い止めている状態なのよ。エルフの里のエルフ全員の命と引き換えにね」
なんということだと、教皇様も驚きを隠せない状態であった。
「それで、本当に戦うというのかね?」
「ええ、勝算がない訳でもないし、それに、エルフは自分達だけじゃなく、この国、この世界のために自分達の命を代価に時を止める秘術で、私たちを人知れず助けてくれていたのよ?なら今度はこっちが助ける番でしょう?」
シオンの言葉に教皇様は大笑いした。
「わっははははは!それは確かにのぅ!まさか十年もの間、大悪魔の召喚を封じておってくれたとは・・・我々はなんと無知であったのか・・・」
自分の非力さに教皇は項垂れた。
「時を止める秘術で、現時点でどれだけのエルフがすでに死んでしまったかはわからないの。でも、少しでも早く時を止める秘術を解除すれば、それだけ多くのエルフが救えるわ」
教皇様は力強く頷くと、何をしたらいいか尋ねた。
「対悪魔用の聖剣と武具か。よかろう。大聖堂に保管されているものであれば、あるだけ持って行くが良い。それと罠を作る人手は必要かのぅ?」
「そこが難しいのよね。エルフの里の場所は余り知られたくないし、物資だけ頂ければ私達で何とかしてみせます」
「なるほど。ならば聖堂騎士団を1番近い村に派遣しよう。これは我が国だけの問題ではないからのぅ。隣国にも早馬で使者を送るとしよう」
「それならシリウス王国にはこの手紙も一緒に送って欲しいの」
シオンはジークの手紙を教皇に渡した。
「少し前にシリウス王国でサラマンダーが召喚されて、危ない所だったの。もしかしたらエルフの国で悪魔を召喚したヤツと同一人物かもしれないのよ」
!?
「なんと!そういえば、裏稼業の者も魔物を従えておったのぅ?簡単に使える魔法ではないし、技術譲渡でも受けてたかもしれん。こちらでも調べておくとしよう」
「ありがとうございます」
「それでどれくらいで準備が整うのじゃ?」
「約3週間もあれば」
教皇は少し考えてから、カレンダーに印をつけて渡した。
「ならば決戦の日はこの日にして欲しいのじゃ」
日付は1ヶ月後になっていた。
なぜこの日に?と思ったシオンを見て教皇が先に話した。
「まず、早馬でこの事を隣国に知らせて、悪魔の対策に兵士を派遣、もしくは準備するのに1ヶ月は掛かる。そして、もうすぐ夏じゃ。この日が1番日の出の時間が長い日なのじゃ」
なるほど。
夜になると悪魔は力を増す。ならば日の出とともに封印を解除して戦うなら、1番日中の時間の長い日を選んでくれたのね。
「ありがとうございます。全力で悪魔を撃退してみせます!」
大聖堂の宝物庫に案内されると、そこにあった聖剣と呼ばれる武具を見させてもらった。
大聖堂の宝物庫は金銀財宝に溢れるところではなく、年代を感じさせる古美術品の宝庫であった。
「ほとんどが偽物か力を無くしているかですね」
シオンは魔力の波動を感じ取り、力のある武具を探した。
立派に飾られている剣や防具は力が感じられず、部屋の隅っこで木の箱に入れられている所から力を感じた。
「開けてもいいですか?」
「好きにして良いぞぃ」
一応、確認してから木の箱を開くと、中から錆びた剣が出てきた。
「流石にそれは使えんじゃろう?」
「確かに・・・あ、もしかして!」
最近の定番になりつつある特技、あ~ナムナムと祈ると剣が眩い光を放った。
すると錆びついた剣は新品同様になって空中に浮いて輝きを放っていた。
「これはすごいのぅ!」
誰の目から見ても立派な聖剣であった。
「私は剣も使うけど魔法が主体だからジークかレオナに使ってもらおっと」
シオンが握ると聖剣は光りをとめて静かになった。
「しかし勉強になりますな。力ある聖剣は神聖力を注ぐと元に戻るなど、誰も知らない事でしたぞ?」
「あははは、ただの思いつきだったんでしけどね。そういえばこの聖剣に名前はあるんですか?」
教皇様もはて?と知らなかったので、入っていた箱を調べると名前が書いてあった。
天叢雲剣(アメノムラクモノツルギ)
「なんでファンタジー世界で漢字の名前の聖剣なのよっ!」
どうでもいいシオンのツッコミの声がこだまするのであった。
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