出会い
順調に魔物を狩っていた騎士達だったが、後ろから新手が現れた。
「ば、バカな!サラマンダーだと!?」
サラマンダーとは全身を炎に包まれていた大きな蜥蜴のような魔物だ。Aランクの魔物に分類される。
『この辺りにいる魔物ではない』
騎士達は動揺して陣形が崩れてしまった。
魔物達も散りながら逃げ出していった。
「目標変更!サラマンダー!他の魔物は無視して良い!」
隊長っぽい騎士が周囲の騎士達をまとめて、すぐに持ち直した。
サラマンダーが炎を吐くが、前衛の騎士が大盾で防いだ。
「グワッ!?」
何とか防いだが、熱で盾が持てなくなり、手を火傷したのだ。
「魔法支援なしに通常の大盾では防ぎきれないか。全員、待避しろ!誰か援軍の魔法部隊を呼んできてくれ!オレが時間を稼ぐ!」
1人の騎士がサラマンダーに切り込み、注意を引いた。その間に他の仲間は撤退していった。
「良い判断だよ。動きからあの隊長さんはかなり腕が立つみたい」
何人は逃げ出さずに遠くから様子を伺っているようだ。
騎士はサラマンダーの炎を避けながら、剣で斬り付けダメージを与えていた。
「凄い。これなら倒せるかも」
空からいつでも援護できるように見守っていたシオンの目の前で予想外の事が起こった。
サラマンダーが周囲に炎を放ち、熱と燃えた炎で周囲が見えにくくなった時、遠巻きにいた騎士の1人が隊長さんに近づき、後ろから斬り付けたのだ。
「嘘でしょ!?仲間割れ!?」
斬り付けた騎士はそのまますぐに逃げて行った。そして倒れた隊長の騎士にサラマンダーが狙いを付ける。
サラマンダーが大きく口を開いて大きなブレスを吐こうとした時、間一髪でシオンは目の前に飛び降りてきた。
「効かないよ」
サラマンダーのブレスが放たれた時、シオンは結界を張った。
「けっこう凄い威力かも」
シオンは右手で結界を張りながら、後ろを向いて左手で隊長さんに回復魔法を使った。
これぞ上級技術である2重詠唱である!
「グッ………君は?」
「喋らないで。今、治癒しているから」
サラマンダーはブレスが効かなかったので、結界に突進してぶつかったり、尻尾を鞭の様にして結界に攻撃を続けた。
「もう!回復魔法に集中できないじゃない!」
シオンは一瞬、結界を解いて氷の魔法を放った。サラマンダーの周囲を凍らせて、氷に閉じ込めた。
「今のうちに」
両手で隊長さんに回復魔法を掛けた。両手で行なった事ですぐに傷が治った。
「助力感謝する」
「いいですよ。それよりサラマンダーを何とかしないと」
すでに氷を溶かして動き出そうとしていた。
「オレの魔法属性は火属性でサラマンダーと相性は悪いが………今なら殺れる」
隊長さんの闘気が膨れ上がった。
『凄いね。闘気が視覚できるほど上がっているわ』
隊長は剣に『闘気』を纏わせると動きだしたサラマンダーに向かっていった。
「流石のサラマンダーも氷に閉じ込められて動きが鈍っているな!喰らえ!剣技スキル【ドラゴン斬り】」
(ド◯クエじゃないよ?)
隊長の放った剣戟が竜の姿となりサラマンダーの首を切り落とした。ってか、サラマンダーはドラゴンじゃないけど良いの?まぁ似たような物か!
「凄い!初めてみたよ!」
シオンは素晴らしい剣技に心の中で拍手した。
あ、そういえば………
シオンは周囲を見渡し、また風魔法で空中に上がった。
「お、おい!きみ!?」
騎士は急に飛んで行ったシオンを呼び止めるが、シオンは飛んで行ってしまった。
唖然としている隊長だったが、すぐにシオンは戻ってきた。
「一体なにが……?」
「あ、ゴメンなさい。貴方を襲った騎士を捕まえてきたの」
ドサッと気絶している騎士を降ろした。
隊長は少し呆然としていたが、すぐに我に返ると兜を取って御礼を言った。
「助けて頂きありがとうございました」
金色の髪に緑色の瞳の若い騎士だった。
「あら?凄く若いですね」
「ええ、よく言われます。今15歳で今度16になります」
「失礼しました。遠くから見ていましたが、素晴らしい剣技の持ち主でしたので、もっと年上かなと思ったので」
「ここは魔物が多く、厳しい訓練を受けてきましたので」
騎士は少し笑いながら答えた。
「私はジークフリートと申します。ジークとお呼び下さい【聖女様】」
???
「聖女…………ですか?私はただの旅の者ですよ?」
「そんなバカな!あれほどの結界魔法を使えるのは神の寵愛を受けた聖女様ぐらいですよ!」
シオンは首を振り、厳しい修行の果て身に付けたものだと伝えた。
「そうですか。しかし私の暗殺を目論む者が混じっているとは思っていませんでした。本当にありがとうございました。ぜひ御礼をさせて下さい」
「別にいいですよ~」
「いえいえ、命の恩人に何もしないなんてありえません!そうだ。旅の者と言いましたよね?ぜひ、うちで泊まっていってください」
うちに泊まる?
宿屋さんなのかな?
それならいいか。
「そこまで言うなら、泊まって行こうかな?私はシオンと言います」
「おお、ありがとうございます!」
ちょうどよいタイミングで仲間の騎士団が戻ってきたので事情を説明して街に戻ることになった。
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