第2話

すこし思考が、ゲシュタルト崩壊してた。


眉の毛が、1本1本、よく見えている。なにか、ほかの生き物のようにも見えてくる。


鏡の向こう側にある顔の、パーツの、ひとつひとつに、それぞれに与えられた形があること。


意味もなく、口を開けてみる。


「まー・・・・・・」


声を、出してみた。


「ま、ま、まー・・・・・・」


唇に焦点を合わせて見つめて、なんか艶っぽい?


じぶんの顔の、パーツの、ひとつひとつを、私は、たぶん好きなんだと思う。


じっと見る。鏡の向こうをジッと見つめる。


化粧をする。このひとときが永遠に続く心地で念入りに、それでいて雑な手先で。


リップを引いて、


「んぱー・・・・・・」


ソファに座って待っている、彼の呆れた顔が、すこし視界に入った気がした。


ここからは見えないけど、そんな気がした。


心って、広がって、輪郭のない雲のようだ。


「ジャーーン!」


着替えて、ポーズを決めてみた。


「んー?」


顔を、覗き込んでくる。


「なーに?」


「なんでもなーい」


彼は、ふにゃふにゃ笑って、ごまかした。

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