第3話 営業成績
サトルは前日と同様に一度ドアを閉めて辺りを見回したが
そこは間違いなく自分の部屋だ、しかも今日は酒に酔ってるわけでもない。
いったい何なんだ?と思いながらもサトルは再びドアを開けると
そこにはやはり、だだっ広い空間が広がっている。
サトルは前日よりも入念にその空間を見渡しながら一歩一歩
慎重に歩を進めるのだが、やはり何か手がかりになるようなものは
まったく見出すことはできない。
そしてまた何かに引っ張り出されるように別の空間へと移動させられた。
サトルは、ふと気づくとそこは自分の勤めている会社
『ヒカル建材』の営業部のオフィスで、朝礼の真っ最中だった。
そこでは、営業部長が大きなモニターに営業成績を表示させながら
その月の業績を振り返りながら各営業社員に訓示を行っていた。
そのモニターには営業社員各個人の成績のグラフが表示されていて
若手のサトルと
そのモニター上のグラフでは二人がダントツのトップ争いをしていた。
その月は、わずかに脇田の営業成績がサトルを上回っていて
脇田は営業部長の
みんなの前でトップ賞の金一封を手渡されていた。
脇田は金一封の入ったのし袋をチラつかせながらサトルの側に近付いてくると
「悪いなサトル、今月もおれが頂いたぜ!」
ニヤニヤしながら、そう声を掛けて来た。
サトルはその状況がイマイチ飲み込めていなかったが
「
と、いつもの調子の軽口で応じた。
サトルはこっちの世界での一日の仕事をどうにかこうにか終えると
帰り
「なぁ脇田、今日はおれの家で飲まないか?ちょっと聞きたいことがあるんだ」
すると脇田は自分のカバンの中から
「わかってるぜ、これが目当てなんだろ(笑)、祝杯をあげるか!」
そう言って、家飲みに快く応じてくれた。
二人はスーパーやコンビニで酒やツマミを買い込んで
サトルの部屋のドアの前へとやって来た。
サトルは上着のポケットから部屋の鍵を取り出し
鍵を開け、恐る恐るドアノブを回して部屋の中を覗き込むと
そこはいつもと変わりない自分の部屋だった。
「おい、何をモタモタしてんだよ、自分の部屋だろ!」
脇田がそう言いながらサトルの背中を押すと
サトルはつんのめるように部屋の中へと入ることに・・・
「おい、押すなよ、ちょっと訳があるんだよ」
サトルはそう言いながら脇田を部屋に招き入れ
酒を酌み交わしながら、これまでの
「まじかよ!?おまえ変な夢でも見てんじゃねぇのか?」
脇田は酒の酔いに任せてそんな風に笑いながら話すのだが
続けてしゃべり出した脇田の話はサトルを少し驚かせた。
「でも確かに2か月前までの俺たちはそんな感じだったよなぁ
だけど先月俺が
自慢げな表情で語る脇田にサトルは思わず聞き返した。
「え、大俵建設から受注を!?まじか脇田!」
脇田は
「今さら何を言ってんだよサトル、大俵建設の下請けの受注を
おまえにも回してやってるから俺たちはトップ争いしてんだろ
とにかくおまえは今夜タップリ飲んで寝ろ!
そうすりゃ明日の朝にはスッキリ目が覚めるよ」
そんな風にこっちの世界の現状を脇田から
酒の酔いと共にこの夜は更けていった。
やがて飲み会がお開きになり、足をフラつかせながら部屋を出て行く
脇田を見送ると、サトルはベッドに大の字になって眠りに就いた。
翌日、サトルは会社に出勤すると早速脇田に声を掛けた。
「昨夜は遅くまで酒に付き合ってくれてありがとな脇田」
脇田は
「おまえ寝ぼけてんのか?昨日は疲れたからってそのまま帰ったろ」
脇田からの思わぬ返事にサトルは慌てて自分のデスクトップのPCを立ち上げ
営業部の営業成績のグラフを表示させた。
そこには、以前と変わらずサトルと脇田で最下位争いをしている
グラフが表示された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます