第2話 正夢!?

サトルの職場は『ヒカル建材』という建築資材の販売や貸し出しをしている会社で

サトルはそこの営業部に所属するひらのサラリーマンだ。


サトルが出勤すると、早速昨夜一緒に飲んだ同僚の脇田が声をかけてきた。


「おぅ、サトルおはよう!昨夜はまともに家に帰れたか?

おまえかなり酔っ払ってたぞ(笑)」


「ああ、なんとかな、気が付くと家の玄関で倒れてたよ(笑)」


(やっぱり俺はかなり酔っ払ってたんだな、あれはただの夢か・・・)


脇田との挨拶代わりのやりとりを交わしながら

改めて昨夜の出来事が夢だったことを自覚するサトルだった。


「おい中沢、ちょっと来てくれ」


サトルが今日の営業に向かうための準備をしていると

課長が声を掛けて来たので、課長のデスクの前に向かうと


「おまえ今日、三丁目のマンションの建設現場に行ってくれるか

大俵おおだわら建設のえらいさんが視察に来るらしいんだ

とりあえず新商品のパンフレットを持って挨拶に行ってきてくれ」


そんな風に課長に命じられた。


「あ、はい、わかりました、行ってきます!」


大俵建設は大手ゼネコンで、うまく取り入ることが出来ると

大口の受注も得られる可能性があることから

サトルは朝からかなり気合が入ってきている様子だ。


サトルが鼻歌まじりで外回りに出掛ける準備をしていると


「お、サトルご機嫌だな、今夜も一杯いくか?」


脇田が飲みのジェスチャーをしながら誘いを掛けてきた。


「ああ、そうだな、良い手応えの商談が出来たら付き合ってもいいかな」


脇田とのそんな余裕ありげな会話を交わしながら

サトルは意気揚々とマンションの建設現場へと向かって行った。




サトルが現場に到着すると、すでに大俵建設の重役と思われる人物が

取り巻きを何人か引き連れながら、マンションの建設状況などの説明を受けていた。


サトルはその人達の輪の後ろに付いて行きながら、頃合いを見計らって

その重役に名刺を差し出しながら挨拶をし、新商品のパンフレットを手渡した。


そのパンフレットを受け取り、パラパラっとめくって見た重役の反応は


「ん、また見ておくよ・・・」


そんな素っ気ない反応だったが、今のサトルに出来ることはそれが精一杯だった。



大手ゼネコンの重役に挨拶した緊張と、自分の能力の無力感で

呆然とその場に立ち尽くすサトルに、現場の作業員のおじさんが声を掛けてきた。


「おーい、そこのお兄ちゃん、手が空いてたらちょっと手伝ってくんねぇか?」


そのおじさんの声に、ふと我に返ったサトルは


「あ、はい、何でしょうか?」


おじさんの方に向かって応えると


「すまないが、ちょっとこれ運んでくんねぇかな?」


そう言うおじさんが立っている脇には、建築資材が山積みになっていて

何人かの作業員で手分けして運んでいた。


「あ、はい、わかりました!」


サトルはそう応えると、上着を脱ぎカバンと一緒に隅の方に置いて

シャツの腕まくりをしていると


「ほらっ、これ使いな」


そう言って、おじさんが作業用の手袋を放り投げてきた。


サトルは受け取った手袋を両手にはめると、他の作業員達と共に

そこそこの重さの建築資材を運ぶ作業を何度か繰り返した。


しばらくすると、そのおじさんが


「よぉーし、運び終えたみたいだな、ちょっと休憩すっか」


みんなにそう声を掛けると、作業員たちはそれぞれ休憩を取り始めた。


(あれ、この状況・・・昨夜夢で見た・・・正夢??)


サトルはそんなことを思い出しながら首を傾げていると


「よぉ兄ちゃん、さっきあっちでえらいさんにパンフレット見せてたろ

すまねぇが、あれ俺にも見せてくんねぇかな」


さっきのおじさんがそんな風に声を掛けて来た。


「あぁ、はい、すぐに持ってきます!」


サトルは手袋を外しながら、現場の隅のカバンを置いてある場所まで行き

中から新商品の外壁材のパンフレットを取り出し、おじさんに手渡した。


「ほぅ、面白いじゃねぇか、デザイン良いし、モノも良さそうだ」


おじさんはパンフレットをめくりながら、新商品を褒めちぎってくれた。


サトルはおじさんに褒めてもらった嬉しさも手伝って饒舌じょうぜつに新商品の紹介をし


「これ今、ウチのイチオシの商品なんですよ

よかったら戸建てのリフォームとかでもいいんで一度試してみてください!」


そんな風に、ここぞとばかりに新商品をプッシュすると

とりあえず、おじさんに名刺を渡して現場を後にした。




会社に戻ったサトルは、脇田から首尾しゅびはどうだったか問われると

大俵建設の重役には新商品の反応はかんばしいものは得られなかったが

現場監督っぽいおじさんには気に入られたのでプッシュしたむねの話をすると


「よぉーっし!それじゃ祝杯といこうじゃないか!!」


そんな風に飲みに誘われたのだが、現場での作業がこたえたのか

肉体的にも、そして精神的にも疲れていたので

仕事を終えると飲みの誘いを断り、帰宅することにした。


そして、いつものように自分の部屋の鍵を回しドアを開くと

そこは昨日見たのと同じ様な、だだっ広い空間が広がっていた。

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