宙をかける傭兵

鹿目陽

第1話 プロローグ

第七宇宙にある、とある惑星付近で、数万もの軍隊が衝突していた。

下らない貴族の小競り合いが悪化し、戦争に発展。数日間続くと見込まれた戦争は、僅か一日にして優劣を露にした。この戦局となったのは、単純に一番上に立っている貴族の作戦が悉く見破られ意味をなさなかったことにある。


戦争の原因となった惑星ノアを眼下に、敗北を認めた貴族は最後の命令を下した。


「全軍に告ぐ、突撃!!」


大音量でシールド内に響く声に従い、俺は指示に従ってスロットルを解放した。上官である貴族の指示に従い、仲間たちが順番に宇宙の塵とかしていく。花火のように散り散りに爆散していく機体をかき分けるようにして、俺は全速力で敵小隊に乗り込んだ。


「何をしているっ!無駄死にするくらいなら、敵に弾の一発でも当ててみろっ!」


一方的に垂れ流しにされている通信からは、司令艦から無謀な要請が届く。こちらから文句の一つでも言いたいが、どうせこちらから言葉を届ける事はできない。

俺たちに選べるのは、どのように死ぬか、それだけだ。


無謀な突撃命令が行われ、俺と同じ前線部隊は僅か五分で壊滅的被害を受けた。最初は数千機もいた味方の人型装甲騎士も、遂に残すは俺と極僅か。初めのうちは識別レーダーに溢れるくらいいたはずなのに、今反応を確認すれば残り百機もいない。

無謀な突撃、考えられていない戦略、最初から見えていた戦力差。どれほどの数を集めようとも、圧倒的な質の前には意味をなさなかった。


「はあ、まさか十五回の戦争で終わるとはな。お前らもみじめだな………いや、俺も変わらないか」


ため息交じりにそういったのは、小隊長だ。俺たち屑をまとめ上げて指揮系統を維持するための末端。身分的には平民や小貴族が当てられることが多く、今回は平民だった。


十五回の戦争で死ぬ、それを惨めだと笑うがこの世界では長生きした方だ。彼の経験した戦場は、十五個。だが、それは半年の間にすべて終結しており、今日は十六回目の戦争になり、生きて帰れないことは初めからわかっていた。


「最後の仕事だ。コード001、自由に戦うことを許可する。好きなように戦え。どうせ負け戦だ、敵を一人でも多く撃滅して、散れ」


コード001というのは、この小隊における俺の識別番号だ。直接、俺に死んで来いという命令が下った。ならば、言われた通りに突撃をかまして死ぬだけだ。散れ、という命令は、逃げることを許容しないという事でもある。

負け戦では、こうして末端から殺されて行くのだから仕方ない事だ。俺は、少しだけ口角をあげ、味方機に対して「いってくる」と、信号を発した。


そして、全身無傷なところがどこにも見当たらない人型装甲騎士は、全身から軋み音をあげ、青い光を全身から放ちながら敵艦隊へ一直線に突撃を行うのだった。

その騎士は最後に全身を真っ赤に染めあげながら、惑星ノアへと散っていった。

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