第22話 盗掘団との遭遇(後)
退路を断たれた盗掘団は、発掘した魔石すら放置して、身を寄せ合いながら震えている。
唯一、杖を持った男だけ、半ば自棄のようになりながらもサリオン様に向き直った。
「畜生、なんでこんな化け物がここに。言えっ、目的は何だ!?」
「目的? ……かっこい良い所を、見せること?」
きょとんとしながら返答するサリオン様に、杖の男は完全に理解不能なものを見つめる目を向けた。
無理もない。サリオン様はきっと嘘を吐いていない。
だが、その言葉と持っている力の強さがあまりに乖離しているのだ。
「だめだ、俺たちを弄んでいるんだ!」
「殺される……、殺される……」
「目を合わせるな、魂を抜かれるって聞いたことがあるぞ!」
盗掘団のうち、採掘作業をしていたであろう非戦闘民たちは、半狂乱で叫びながら声を上げている。
「酷いな。その噂、まだ流れてたんだ。僕も流石にそこまでのことは出来ないんだけど」
苦笑しながらサリオン様が髪をかきあげると、それだけでその場の全員がびくりと身を強張らせた。
もはや、サリオン様の一挙手一投足に怯えている状態だ。
その様子を見て、サリオン様がつまらなさそうに肩をすくめる。
「うーん、思ったほど向かって来てくれなかったし、もう終わりにしようか」
「――え?」
ぼそりとサリオン様が言った次の瞬間、ポータルを塞いでいた黒い茨の蔓が無数に伸び出てくる。
そのまま息つく間もなく、盗掘団全員が絡めとられ、洞窟の岩肌にしばりつけられてしまった。
捕らえられた盗掘団は数人を除いて、動揺で気を失ってしまっているらしい。
なんとか意識がある残りの数人も、恐怖で震え、憎まれ口を叩くことすらできない。
一通りの始末を終えると、サリオン様はくるりと私の方へ振り返った。
「カナリヤ、もう出てきて大丈夫だよ」
声を掛けられて、私はハッとして立ちあがった。
目の前で行われた戦闘――というにはあまりに一方的な行為が衝撃的すぎて、何処か気持ちがそわそわと落ち着かない。
「サリオン様、あの、ご無事……ですよね」
「勿論だとも、傷一つないよ。それに鉱山を無事に守った! 見ていた? 僕、格好良かった?」
目を輝かせながら、サリオン様は無邪気な様子で問いかけてくる。
私は言葉に詰まって、目を泳がせた。
「あの、はい、見てました。凄かったです。とても格好良かったです。でも……」
「でも?」
歯切れの悪い私の言葉に、サリオン様は不思議そうに首を傾げる。
私は躊躇いながらも、思っていたことを口にした。
「でも、サリオン様が化け物と呼ばれるのは……なんだか、嫌でした」
「え、なんで?」
「なんでって……サリオン様は、化け物ではないからですよ」
「そう? 人間にとっては、化け物に違いはないと思うし。それだけ畏怖されているんだから、悪いことではないとヴァルクも言っていたし」
「それでも、私は嫌なんです!」
珍しく引かない様子の私に、サリオン様が少しだけたじろいだ気がした。
「サリオン様が優しい方だって、私、知っていますから」
私が真剣な顔で続けてそう言うと、サリオン様が大きく瞳を瞬かせる。
それから少しの間をおいて、ふっと微笑んだ。
「そうか、分かった」
そして私に優しく手を差し出してくれる。
「帰ろう、カナリヤ」
「はい、サリオン様」
こうして私たちは連れ立って帰る――前に、サリオン様が盗掘現場に引き返した。
山積みにされたまま放置されている魔石の原石を、籠からひとつ拾い上げる。
「折角だから、ひとつ貰っていこう。泥棒を退治したんだから、それくらいの報酬はあっていいよね」
悪戯っぽく笑うサリオン様に、私は苦笑を返した。
「そ、そうですね。きっとそれ位は、許されるような」
そういえば、あの盗掘団の人たちはいつまで拘束されているのだろう。
自力で抜け出すのはきっと無理だろうから、助け出されるまであのままな気がする。
早めに誰かに発見されることを祈りたい。
悪い人たちではあると思うけれど、真っ当に更生して欲しいと願う。
そして私たちは魔石の原石一つを手に入れて、アウロスの待つ場所まで戻っていくのだった。
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