其ノニ ホネとケガレ
【怪異】。
山奥からやってきた超自然的な霊体生物の総称。奴らは街に降り、2万人を超える市民が被害に遭った。
「新人ちゃんは元気いっぱいでよろしいな〜その元気、お勉強の方にも向けてくれたらもっとええんとちゃう?」
「言いたい事があるならはっきり言えばいい」
「は?」
「私が無断で祓除した件を咎めたいんだろ?だが、私らがやる事は1匹でも多く怪異を殺すこと。
「アホちゃう?公務員やったら
「よせ、2人共」
俺は2人の諍いを仲裁する。県庁内を進み、エレベーターへ向かった。
「比嘉、君の言っていることは間違っている。
エレベーターに乗り込んだ後、地下7階で開いた。長い通路の奥には厳重な扉が物々しい雰囲気を放っている。
受付窓のブザーを鳴らすと、社歴30年の大ベテランである源さんが顔を覗かせた。
「よお、悠里ちゃん。その子が新人か?配属初日で契約させるのはちと早すぎじゃないかい?この前の2、3日で辞めた子みたいになるぞ?」
「少なくとも、そいつよりは
扉の奥にはさらに長い通路へ続き、等間隔に並んだ扉から獣の唸り声の様なものが聞こえる。
「ここは霊安室。
通路の7割ほど進んだ場所。床には赤い線が引かれている。
「比嘉、君にはここにいる怪異の1体と契約を結んでもらう。ただし、この赤い線は越えるな。制御不能だったり、契約の代償が重い怪異だけが閉じ込められているエリアだ。さて、どんなのがいい?
「……質問がある」
「なんだ?」
「赤い線の向こう。ドアが開いているのは何故?」
比嘉の言葉に思わず振り向く。
彼女の言う通り、要警戒エリアの扉が開いていた。
ノータイムですぐ側の警報器のボタンに手を伸ばす。だが、扉からゴム鞠の様に黒い影が飛び出してきた。
「蛭ッ!!」
影は山田、俺の順にぶつかり、壁際まで吹き飛ばされた。付着した蛭を払う。
山蛭の怪異をクッションにしなければ大怪我は間違いなかっただろう。山田も猩猩の怪異を
だが、まずい事に黒い影は比嘉の前に顕現した。
巨大な蛇の
<ネェネェ、ネェネェ。ナンデ君ハソンナニ怒ッテイルノ?>
蛇の怪異は比嘉に話しかけた。
知性のある奴ほど強力かつ厄介なものはない。だが、比嘉は真っ直ぐ怪異を睨みつけていた。
「私は
<ヤダ!ヤダ!我ヲ愛セヨォォオオオ!愛シテェエエエエ!!!>
蛇の怪異は頭蓋骨を左右に大きく振り、悲鳴の様な叫びを上げた。新人にはあまりにも酷な状況のはずだった。
「何だお前?私に愛して欲しいのか?だったら私に協力しろ!お前が最後の1匹なる迄、怪異を狩るんだ!そしたら、少しは愛せるかもね?」
<アアアアッ!!契約スル!契約スルゥ!!ヨク聞ケ!我ガ名ハ【
蝮の怪異のケガレが比嘉にまとわりつき、瞬く間に彼女の肉体に宿ったのが分かった。
「アイツ、やばぁ……」
「ああ、最悪だ……」
興奮した様に赤く染まった彼女の頬を見て、そう言えば、まだ比嘉の笑った顔を見てないとぼんやりと思う。そして、これから山の様に書かなければならない報告書が脳裏をよぎり、このまま逃げ出したい衝動がふと湧いた。
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