めざせ!モノノケー1グランプリ!

阿弥陀乃トンマージ

ツカミ

「ふん……!」


 小柄で三つ編みが良く似合う可愛らしい女子が力を込める。周囲にビリビリと電撃がほとばしる。


「お、おお……」


「まあ、ざっとこんなもんや」


「す、すごい……」


 俺は素直に称賛する。


「せやろ? あっつ!?」


 三つ編みが鼻の頭をこすると、静電気が発生したようだ。三つ編みが顔をしかめながらズレた眼鏡を直す。


「パイセン~しまらないわね~」


 栗毛の長い髪の毛にゆるふわなウェーブをかけた女子が悪戯っぽく微笑む。スタイル抜群で、優し気な顔立ちをしており、これでもかと包容力の高さを感じさせる女子だ。


「……パイセンやなくて、ちゃんとキャプテンと呼べ言うてるやろ」


 三つ編み眼鏡がムッとする。


「……あなたがその呼び名にふさわしい人物ならば……自ずと呼ばれることになるでしょう……」


 ショートボブの髪の毛に青いメッシュを所々に入れた、長身で細身の女子が淡々と呟く。クールな雰囲気が言葉の端々から感じ取れる。


「そないじっくりと見極めんでもええねん! たかが高校のサークルの代表やねんから!」


「ふっ……」


「ふふっ……」


 ショートボブが両腕を組んで、ゆるふわウェーブが頬に片手を添えて、それぞれ微笑む。余裕を感じさせる。三つ編み眼鏡がさらにムッとする。


「ええい、その後方実力者面の雰囲気出すのやめろ! 去年から何度も言うてるけど、ウチの方が先輩なんやからな!」


「あ……」


 俺は思わず声を出してしまう。そうか、この三つ編みの子が一番先輩なんだっけ。ついつい忘れてしまう。三つ編み眼鏡がジト目で俺を見てくる。


「なんや?」


「い、いえ、なにも……」


「ふん、まあええわ……ほれ、アンタらも軽く手本を見せたり」


 三つ編み眼鏡がゆるふわウェーブとショートボブを促す。


「は~い、それじゃあアタシから~えいっ!」


 ゆるふわウェーブが力を込める。周囲がグラグラと揺れる。


「お、おお……」


「まあ、こんなものかしらね~」


「では、自分が……はっ!」


 ショートボブが力を込める。周囲にビュービューと突風が吹く。


「おお……」


「失礼……」


「さて、それでは一年の実力を見せてもらおうか?」


 三つ編み眼鏡が俺の隣に立つ、黒髪ロングの美人に視線を送る。黒髪ロングの子は頷いて、少し前に出る。


「……むん!」


 黒髪ロングの子が力を込める。周囲にメラメラと火の玉が発生する。


「おお!」


「うん、見事なもんや……さすがは経験者。それじゃあ、君の番や」


 三つ編み眼鏡が俺の方に向く。俺は黒髪ロングの子とすれ違う様に前に進み出る。そして、見よう見まねで力を込める。


「……はああああ……はあっ~!」


 俺の周囲には何も起こらなかった。ただし、俺の頭はツルツルと禿げ上がっていた。こ、これは……。


「よしっ! 逸材揃いやな! 今年は行けるで!」


 三つ編み眼鏡が満足げに頷く。どこを見て逸材だって言ってんだよ。大体今年は行けるって、どこに行く気なんだよ。っていうか、なんなんだ、この怪しげなサークルは!俺は少し前の時間を思い返してみる……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る