第一章 その名前は銀と雪の女神
とはいえ、部屋の外で騒いでいても埒があかない……もうここは覚悟を決めて!
「失礼します!」
侍女として褒められたものではない大声を出しながらノックを忘れて扉を開けると、真正面に真っ裸で窓ガラスに向かって「うふん」とポーズをとる痴女がいた。
「……」
服を着ているこちらが恥ずかしくなってしまいそうなほど完璧で、コルセットの必要もなく美しくくびれた腰、下品すぎない程度の大きさで、ツンと上を向いたハリのある臀部、そこから滑らかな曲線を描きながら女性らしいふっくらとした太ももと驚くほどくびれた足首が続き……
シミ一つない肩が多く揺れて振り返った瞬間、十八年連れ添った私の胸元に潜む子が哀れに思えて、気づけばそっと手を当ててあやしていた。
「えっきゃああ!」
飛び上がった拍子に弾んだ柔らかな軌跡を視線だけで追いかけ、静々と近づいて深く頭を下げる。
「アージェント王妃さま、おはようございます」
とはいえ、もう太陽は高く登っておはようなんて時間じゃない……もっとも、貴族や王族の妻はこんな時間まで寝ていても驚くことはない。
ましてやこの目の前の女は堕落と享楽の権化のような人間なのだ。
眠りたい時に眠り、起きたい時に起きるケモノと同じ生き方をしていても不思議じゃなかった。
「あ……おはよう」
ぽつ と返ってきたのが返事だと理解するのに随分と時間がかかった。
おはようって何だったっけ? って繰り返して、飲み込む頃には目の前の女は小さくうずくまり、顔を赤くしながら隠しきれない二つの山を腕で隠そうと奮闘していた。
「お 王妃さま? お召し物は?」
本来なら自分が用意するべきことなのだろうが、衣装部屋に入る許可さえもらってないのだから仕方がない。
ましてや……王妃が全裸でくねくねとポーズをとっているとは、普通は思わない!
窓に向かってなんて……もしや向こうに男でもいて、見せつけていたんだろうか? やっぱり噂通り、男を虜にする傾国の美女という噂は本当らしい……
いや、部屋の中で全裸を見せつけようとしているのだから、淫乱かそういった快楽から抜け出せない性分の人なのだろう。
「服……は、着ていなかったわ」
か細く返された声は絹で編まれたレースのように滑らかで美しい。
教会で鳴り響くベルのように清純な響きに、一瞬聞き惚れそうになったけれど慌てて首を振った。
裸を外に見せつける、変態なのだ と。
「衣装室への出入りを許可してくださいますか?」
「え? ……え、ええ」
返事をしつつも声は戸惑ってつっかえている。
今更何を?
毎月何着ものドレスを仕立てさせていることが今更に恥ずかしくなったのだろうか?
衣装部にいる友人が寝る間も惜しんで王妃の要求に応えようと頑張っている姿を思い出し、イライラとした感情を感じながら奥の扉へと向かう。
「…………?」
この窓……汚い。
これでも王宮侍女の端くれだ、衛生や掃除の不備にはそれなりに敏感で……
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