003 「獣との戦闘 ~Battle~」

(警告。全力で回避行動を取ることをお勧めします)


 分かってるよ! それって問題の解決じゃないよね。ただ先延ばしにしているだけだよね。


 このままじゃ、俺がこの牙狼の食卓に並んじゃうよ。

 弱肉強食のヒエラルキーで言えば、今の俺は最下層。ピラミッドの底辺だよ。このまま何もしなかったら「いただきます」から「こちそうさま」までを体験できちゃう。


「じゃあ、どっちに逃げれば生存の確率は上がるの?」


 ダメもとで聞いてみる。


(回答。右斜め前の道に進んで下さい)


 右前方には大きな草が生い茂っている。その先に何があるか分からない。飛び込むのは危険な気がしたけど、どうせこのままだとバッドエンドしかない。


 しょうがない!

 男は度胸!

 俺には愛嬌だ!


 俺は意を決してその中に飛び込んだ。その時足に痛みを感じたけど今はそれどころじゃない。


「うわぁ!」


 飛び込んだ先は大きな下り坂だった。飛び込んだ勢いのまま俺は転がり落ちていく。途中、木の枝を掴んだりしたけど止まる気配はなかった。


 ズザザザザーーー!


(報告。牙狼の追跡はありません)


 サポートさんの声が頭の中で響いているけどそんなことを気にしている場合じゃない。

 転がる……というか滑落しているじゃん!


 ドン!


 派手な音を立てて俺は草原の上に落ちた。

 周囲に石やら木の枝なんかが散乱している。

 これが草原じゃなかったらきっと大怪我をしていただろう。


 い、生きてる! ……けど。


 痛い……身体中が痛い!


「痛っ!」


 身体は傷だらけだった。

 起き上がろうとすると足に激痛が走った。

 見ると足には大きな裂傷があった。飛び込んだ時に牙狼の爪が引き裂いたんだろう。血がダラダラと流れていてこのままだと出血多量で死んでしまうかもしれない。

 止血と傷口をふさがないとヤバイ。


(回答。スキル「復元」を使用することをお勧めします)


 復元? そういえばそんなスキルもあったな。そういえばスキルの説明を聞いていなかった。


 なんにせよ。これ以上悪くなることはないだろう。

 

(まずは、右手に光が集まることをイメージしてください)


 言われたとおりにイメージすると右手に力が集まっていくのを感じる。それは万物の力、世界の理の力だと自然に理解できた。


「復元!」


 俺の体がわずかに光る。

 わずかに感じる脱力感。

 すると身体中の傷が消えていく。それは傷が治っていくというより時間が巻き戻っているというか、元の状態に戻る感じだった。

 足の傷が消えた。それどころかボロボロだった服も元に戻っている。


「す、すごい……」


 回復とは違う。


(報告。復元のレベルが上がりました)



 NAME:???

 LEVEL:1

 HP 2/10 MP 5/10

 JOB:世界の管理者

 SKILL:管理者権限Lv1・英知の書Lv2・復元Lv2



 スキルを使用したことでレベルが上がったらしい。

 ってか、HP・MPの表示が追加されてる。

 体力2って……かなりギリギリだったんだなぁ俺。


 助かったのは奇跡としか言いようがない。


(報告。助言に従い行動した結果だと推測されます)


 ……も、もちろんサポートさんのお陰であります! 感謝しております!


 ゆっくりと起き上がる。

 ステータスを確認する。


 HP 3/10 MP 6/10


 少しずつだけど時間と共に回復していくらしい。

 でも、このままじゃダメだ。牙狼を倒す決定打が今の俺にはなかった。


 上の方から音がした。見上げると牙狼がかけ降りてくるところだった。


 おいおい。


 俺今、体力3だよ。

 一撃でも受ければ死んじゃうよ。


 逃げることは不可能だと考えた方がいい。


 何とかして、牙狼を倒すことができないだろうか。


(回答。危険を伴いますが確実に倒せる方法があります)


 サポートさんの声が脳裏にこだました。

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