少年期編

第2話 成長とオレ

時は飛び、僕は5歳になった。

あの日、僕が生まれてから様々なことを学び知った。

まず、家系の話をしよう。

僕の家系は、アドマイヤ家と言い貴族の階級は公爵家だった。

僕的には父親を見た時あまりにも筋骨隆々だったので辺境の家かと思った。

まぁ、あながち間違いではないんだけど。

父親の名前は、『ヴィリアンス・ル・ナーガント・アドマイヤ』

母親の名前は、『シェイル・ル・ヴァリアント・アドマイヤ』

聞いた話によると、父は婿としてこの家に来たため公爵の地位にはいないらしい。

どうやら元々辺境伯家の三男であり、家を継げないため王都に騎士になるためきたらしい。騎士に為った後、その実力で成り上がり母に見初められたのだとか。

一方母の方は、公爵家で家を継げる人間が母しかおらず、しかし公爵家を女性が継ぐにも旦那がいなければあとがなくなる。そんな時、母は父に惚れたらしいのだ。


まあ、家の話はこの辺にして。

次に今の時代や社会的なことを調べた。

まず、どうやら今の時代はではなくが生きていた時代の1000年後ということがわかった。

歴史書では『大いなる災を払いし、金髪のヴァルキリーがその剣で世界を光へと導き新たなる時代を作った』とされていたのだ。

きっと彼女のことだろう。

なぜそう思ったのかわからない。

だが、そう感じたんだ。

また、この国の名前は『ヴァレリア帝国』といい今のこの国では3家の公爵家から50年に1度皇帝を選び国のあり方を決めるのだそうだ。


僕は、これまでのことを思い出していると。


「アルス様、朝食のお時間ですのでお支度をしに参りました!」

可愛らしい少女の声が聞こえた。

「ああ、マリーヌ。入っていいよ」

「失礼します!」

彼女の名前はマリーヌ。獣人のメイドであり、僕が生まれた時に見たメイドの娘だ。

「お着替えをさせていただきますね!」

そう言いながら可愛らしい『クマ』耳を動かしていた。

「本日はお目覚めが遅かったですが何かありましたか?」

「いや、特に何もないよ。久しぶりにのんびりしようと思ってね」

「そうですか!体調がすぐれなければどうしようかと…」

「心配ありがとね」

「いえ!主人の心配をするのは当たり前のことですので!」

「それでもさ」


「そういえば、マリーヌ今日の予定はどんな感じだい?」

「はい!本日の予定は午前には前々からお願いされていた剣の指導者との顔合わせを、午後から本格的に修行を開始すると聞かされております!!」

「そっか、わかった。なら、とりあえずは朝ごはんを食べに行こうか」

「かしこまりました!」


そういうと僕たちは、食堂の方へと向かった。




「おお、アルス来たか!」

朝ごはんを食べた後、父の書斎に向かうと父と女剣士が座っていた。

「遅れて申し訳ありません父上」

「いや、問題ないさ!さて、こちらの女性がお前の剣の指導をしてくださる方だ」

「私の名前は、ユーリです。これからよろしくお願いします」

彼女はそう挨拶した。ただ、僕は何か違和感を感じた。前世で感じた何か。

「よ、よろしくお願いします」

そうは言ったが、僕は正直あまり信用ができそうにないなぁ。なんか嫌な感じがする。なんなんだろう…?

「それでは、ヴィリアンス様午後から修行を始めますので準備の方をしに行かせてもらいますね」

「ああ、わかった。アルス、お前も午後の修行野田絵の支度をしておきなさい」

「わかりました。失礼します」

そう言い書斎の外へ出た。彼女は一体何なんだろうか。

「アルス様!お部屋へ戻りましょう!お支度の手伝いをさせていただきます!」

「うん、おねがいするね」

「そういえば、ご主人様あの女性は何だか変な匂いがしますね」

変な匂い?何か感じたのかな?

「何かおかしかったかい?」

「おかしかったというか…、まるで死体のような匂いを感じたのです…」

死体…、彼女は獣人だ。匂いを間違えるわけがない。だが死体だと?見た感じ彼女は生きてるように感じた。アンデットでも倒した?

「アンデットでも倒したのかね?」

「その…、倒したにしては匂いが強いのです…」

「そっか…」

「アルス様…?」

そう彼女は心配そうに僕を見た。ここは、心配させないようにしないとね!

「僕は、大丈夫!ただ、マリーヌがそういうなら気を付けておくよ!」

「はい!」




午後になり修行が始まった。

「では、修行を始めていきましょう」

「はい」

「では、まずは剣を打ち込んできてください」

「いきなりですか?」

いきなりは困る…まだ前世の力の制御が完全ではない。下手にやると、おかしいことになる。どうすれば…

「ふむ、なら一度素振りでもしてください。10分ぐらいでいいでしょう。」

「わかりました」

よかった。とりあえず力加減を間違えることはなさそうだ。

まずは、剣の振り方を思い出そう。心を落ち着かせ、あの頃の自分を…あの頃のオレの振り方を…

目の前に敵がいることを想像し、とにかく殺すことを考える。

そうだ、オレはとにかくそれだけを考えてた。

体の芯から心まで冷え切っていく。

「…っ!!」

「なっ?!」

オレは女剣士に言った。

「それでは、やりましょうか」

「っひ?!」

ただ一振り、されどその一振りでその女剣士も感じ取ったのだろう。その表情は恐怖に染まっていた。

おそらくこの者もそれなりの使い手なのだろう。だからこそ、感じ取れた。オレに戻ったことを。もし戦えば、死ぬということを。

「わ、私の予想以上でした!!今日はここまでとします!!し、失礼します!」

そういうと、逃げるように帰っていった。




「アルス様!!先ほど指導者殿が屋敷の外へ走っていってしまったのですが何か問題が!!」

オレの心に暖かさがもどっていく。

「いや、何でかわからないんだけど慌てて帰ってしまったんだ」

あの時、どうして僕がオレに戻ろうとしたのかわからない。だけど、何か悪寒がした。その瞬間僕は躊躇をやめた。あの感覚は、前世のオレがよく感じてたもの。だ。

「そうなんですか?何ででしょうね?ですが、あの時の指導者殿は嫌な匂いを感じなかったのです」

「そうなんだね。それはよかったよ」

「とりあえず、旦那様に連絡をしておきますね!!」

「うん、お願い」

そう言い、僕たちは屋敷へ戻って行った。







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