ダチョウと幽霊*前編
「はあ」
「ですからね! うちに幽霊がでるんですよ」
「はは、これはまた」
恰幅のよい裕福層と分かるおじさんは声を荒げながら事務職のリソット・リージに詰め寄る。
もうかれこれ二時間は話しているので、手元のお茶は冷め切っているのに、ご本人は元気の一言で話が終わりそうにない。
繰り返しているのは「幽霊が出る」この言葉だけである。
「ダチョウ~」
パーテンションの裏で聞いていたダチョウとパエリャとラザニェ、それにピズとスパ。それにフランソワとセバスチャンとタナカサンと、アルフレド、とたくさんいる。
着ぐるみ組はふむふむと真剣に聞いている横で
「ええい、前金は五百万だ! これでもかっ」
「ダチョッ!」
「ごひゃくぅううんう」
叫びそうになったパエリャにラザニェが口をふさぐ。
大金だ。うちに来たと言うことはイーヴェのツテを頼っていたからだろう。ホント怖いよ、あの社長。こんな大金を胸元から出せる人が来るなんて。
「ええと、最後の確認になりますがお家のどこに幽霊が?」
「ちょうど階段の踊り場に出るんだ! 怖くて上れないから一階で寝泊まりしているんだよ! 頼む、早く幽霊を退治してくれ! 明日にでも来てくれたら、金を出す!」
激しい攻防で、少し呆れが入ったピズが、
「お茶を新しいのに変えましたわ」と湯気がたっている
「おお、ありがとう、あっつッ! とりあえず、頼むッ」
ピズがリソットに「大丈夫ですわ」と告げて「では」とリソットは細かい契約書を……依頼人は見ずに判を押してしまったが、契約がなった。
「では、明日、家で待っているぞ!」
バタンッと出て行く。
「サーチ完了。百年分のログを確認。目撃情報なし」
スパが綺麗な金髪をふわりと動かしながら、年上たちに首を振る。
なのでパエリャみたく人間からではなく、旧世代風に言えばアンドロイドで、その『アンドロイド』という言葉が人間との差別だ! と主張されて人間にも使う
同時に、
同じ凡庸娯楽機巧型であったフランソワたちと別枠になったのは
今でも
よく、おかしな話だとパエリャは口にする。
「今回はどうしよう? 幽霊って
「ダチョー」
「そしたら私たち
ダチョウにパエリャ、前衛担当のクマのセバスチャンはお呼びでないと顔を合わせる。
「逆に本物でしたら、どう決着をつけるかですわ」
ピズがトレイを持ちながら首を傾げた。
「ぼくは現場検証がしたいな。どんな機巧型でも跡が残る。そうじゃなかったら……」
「ダチョウ?」
「どうしよう」
五人と四体で首を捻っていると、
「みんな、みんな、こういうのはね。除霊っていうのがあるんだよ」
ピズが淹れてくれた
「じょ、れい?」
スパとフランソワが検索に入り、他のメンバーはリソットを見た。
「旧世代の『幽霊を退治する方法』だよ」
「検索完了、フランソワを通じて結果を報告します」
イヌのフランソワの目から宙に結果が表示される。
「塩を撒く。真言を唱える。全裸で踊る? なにこれ?」
パエリャは読み終えるとリソットを見ながら眉を顰めた。
「前にはね、オカルトっていうのがあったんだよ。その中で除霊に適したオカルトがあってね。もう二度と幽霊を出さないようにするってのがあったんだ。それを実行する人間も徳を積んだ人間なんだ」
「徳、というのはどういうものですの?」
ピズが聞くと、
「その人がしてきた善行を力に変えてだったかな」
「ここに善行を積み重ねてきた存在いないけど」
リソットの言葉を、ばっさりとパエリャが切る。
「そんなこと言わないでよー、パエリャちゃん。僕だって機巧型だと簡単だなーとは思ったけど」
オールバックの髪をなでつけながらリソットは、がっくりと肩を落とした。
「……踊り場を見てからの方が早そうだ」
ラザニェが呟いて、沈黙が訪れる。
「今回はサーチができて後衛もできるフランソワと
「ダチョーウ……ダチョウ!」
大勢で行っても仕方ないし、とパエリャは言ってダチョウを含めた後衛組の仕事となった。
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