第2話 後ろにも目をつけろとか言う奴がいるけど、死ぬときはあっさり死ぬもんだ
ヒロミちゃんの印象を一言で言うならば「愛すべき小動物=たまに怒ると猛獣」…これに尽きる。
ゆるフワの漆黒のセミロングに大きな瞳、食べたもんは何処に行くんだ!と問いたくなるようなスレンダーボディのくせに胸だけはたわわなEカップ、それらを覆い隠すようなピンクの花がらのロングワンピースとかが良く似合う…職場のアイドルとは良く言ったものだ。
「情けねえ…うちのアイドルのヒロミちゃんを他支店の野郎にかっさらわれやがって」
ヒロミちゃんが渋谷支店の河村先輩と付き合いはじめた頃、上の連中には散々嫌味を言われたものだった。
そんな事言われたって、こっちだって散々高嶺の花って揶揄されながら受付の愛子ちゃんに猛アプローチ中だったんだから…まあ…見る目が無かった…時が経った今は…本当にそう思ってる…
―
―
「…ガクガクブルブル…」
さて…当のヒロミちゃんは新宿2丁目の小綺麗なラブホの大きなベッドの片隅を占拠して、さっきからガクガクブルブルと
「…」
「…オドオド…ソワソワ…」
…うん…余裕たっぷりで遊んでる…ヒロミちゃんは俺に襲われるなんて毛ほども考えていないんだろう…まあ間違いが起こるならもっと前に起こってる…テニス部の合宿とかで散々酔っ払ったまま雑魚寝とか一緒にしてた俺たちは…朝起きたら身長150cmの小柄な彼女が俺のふところにスルリと潜り込んでて周り中が大騒ぎとか…河村先輩にえらい怒られたこともあったなあ……
「…なあ…ヒロミどん」
「…ガクガクガクガク…」
「…もう…それ良いでしょ?聞いてよ」
「…何かね…ミキヤどん」
遊びを止められたヒロミちゃんがちょっと不機嫌そうに枕を抱えた上目遣いで睨んでいる…ほんと…見てくれはまさに職場のアイドルなんだよなあ。
「あ〜、そろそろ先にシャワー浴びてきてくんね」
「…は?」
「…へ?」
ぷるぷるぷるぷる…なんかベッドの上の小動物が震え出した。
「…し」
「し?」
「死ね!!この淫獣野郎〜」
「待て待て待て待て!」
で…出たっ!…ヒロミちゃんの激オコモード…ほんとに待ってよ!……その手に取った枕はまだ良いけどさ…コンドームの入った箱は投げつけられるとマジで痛そうだよ!
「ひ…ひ…ヒロミちゃん…君…自分の最大の魅力って何だと思ってる?」
「…控えめに言って…顔?」
ちっとも控えめじゃないじゃん!こらっ!!
「違う!…い…いや…確かに顔も可愛い!…け…けど…ヒロミちゃんの最大の魅力は…その香しい女の子の匂いなんだ!」
「…何バカなこと語ってんの!?…バカなの?…こ…この変態!!」
「へ…変態って……これ絶対に河村先輩からも言われたことあるだろ!?」
そう…ヒロミちゃんの特徴…実はこの子は女の子の匂いが強いんだ。
ず〜っとその匂いに包まれていると頭がおかしくなるって…あんたの彼氏の河村先輩もほざいていたんだよ!
ラブホの密室の何がキツイかって…さっきからヒロミちゃんの女の子の匂いがどんどん強くなっていってて、酔いが醒めちゃってる身としては…ほんと拷問…
「…ほんとにさ……さっさとシャワー浴びてもらわないと…こっちもおかしくなりそうなんだよ!」
「ミキヤくんのエッチ!…こんな状況でシャワーなんか……公開ストリップみたいなもんじゃん!」
まあ…ラブホのお風呂の扉なんか…視覚的には無いようなもんだけどさ…
「もう…今更じゃないの?そういうの俺たちは」
匂い的にはヤバいけど…見てくれはねえ…確かにヒロミちゃんはかわいいけど…微妙に趣味が違うって言うか…
「…あっ…ミキヤくんそう言うこと言うんだ…だったら!」
そして…俺は有無を言わさずトイレに放り込まれた!!
…シャワー終わったら声かけるからそれまで出てくんな!…とてもありがたいお言葉ですね…ちっくしょう!
―
―
―
「…ミキヤく〜んお待たせ〜…って…トイレの壁にもたれ掛かって寝ちゃってる…起きてよ風邪引いちゃうよ〜って全然起きないなあ…
ちょっと悪いことしちゃったかな…でもトイレの扉を開けておけば気がついたときにシャワー終わったって分かるよね…あたしも寝ちゃおっと……おやすみなさ〜い」
―
―
―◇
―
夢を見ていた…大学生の頃の…
「…う…ん」
あの頃俺の隣には高校の後輩の元カノゆうこちゃんがいてくれていて…でも彼女は最後の最後に九州の大学を選んだ。
「ミキヤくん…ごめんなさい…あたしはやっぱり九州に行く…だから…最後だから…今日は……生で…」
―
―
「み…ミキヤくん…待って…ああっ!」
ガウン姿で寝ていたゆうこちゃんに覆いかぶさる…何か言いたげな彼女の唇を塞ぎ可愛い舌を絡め取る。
「…ん…んん…んんっ…あ…あ…」
可愛い舌を堪能しながら…俺の手はガウンの胸元へ…
「きゃう!…あっあっ…だ…だめ…そんなとこつまんじゃ…やっあっあっあっ…は…離し…あっあ〜〜っ」
そのまま舌で転がしながら…ブルブルと震えている彼女は…既に濡れそぼっていて…
「あ……あっ…み…ミキヤくん…待って…や…あっ…そ…そんな…おっきい…………待って待ってよ!…は…はいらないって…あっ!…あっあっあ〜〜お…お…おっきい〜っ……かたいよ〜っ!!」
―
―
―
…あれ…狭い…余る…なんで?
…ゆうこちゃんはジャストフィットのハズ…でも…もう…出る…
「あっ…あ〜、で…出てる……い…イクイクイク逝く〜っ!!」
俺の愛情を受けて彼女の身体が一気に痙攣して逝き続ける…俺は……精を…精を…あれぇ?
「…ひ…ひ……ヒロミ…ちゃん!?」
「あ…あ…あ…あぅ〜」
え…ええっ!?
俺の眼前に…組し抱かれたヒロミちゃんが…しかも…俺たちはまだ…繋がったまま……
お…お……俺っ…寝ぼけてたっ!?
「はあ…はあ…み…ミキヤくん…生だよぅ」
大きな瞳に涙をためたヒロミちゃんが…かわいい…
「え…え…」
「あ…赤ちゃん…出来ちゃうよぅ」
「あ…うん」
ものすごくヘンテコりんな返事を返す俺……
「だ…だからもう…離して…お願い……」
「…」
あの…ヒロミちゃんの中に…俺の…
その瞬間…ヒロミちゃんは俺にとって「女」になった…というか…今までの俺っていったい……
「…あっ…ああっ!!」
そう考えたら…俺は彼女を抱えあげていた…ずん…とばかりに…俺は彼女の腰を引き付け…余っていた俺の愛情を…一気に!!
「あっ!…お…おっきいっ!!…だ…駄目……やあああぁあ〜っ、…あ…あたって…イクイクイク〜」
―
―
はっきり言おう…過去も…そして
―
―
―(翌朝)
―
「…ヒロミちゃん…」
「…ミキヤくん…う…動かない…で…お願い…」
当たり前のように…ヒロミちゃんは俺の腕の中…ヒロミちゃんの強い女の子の匂いが俺達をこれでもかというくらい包んでいて…
「あ…あ…あ…」
「ヒロミちゃん…」
「あ…だめ…だ…だめ…だってば…」
ヒロミちゃんの必死のイヤイヤはほんとに…
「あっ!あっ!あっ!あああああっ!!!……ああああああっ!!!、い…イクイクイク逝く〜っ!!」
―
―
―
「…ミキヤくん…お話があります!」
「…は…はい…」
まだ…繋がったままの俺達なんだけど…
「…あたしは今日、会社を休みます」
「…はい……ねえ…大丈夫なの?…経理のほう…」
ヒロミちゃんが突然休んだら…うち立ちいかないんじゃ…
「…だからミキヤくんも…休んでください」
「…い…いや…俺たち土曜日は掻き入れどき…」
「休んでください!!」
「…はい…」
「大事な話があります…ゆっくり話しましょう…分かりましたねっ!?」
「……」
「こ…こらっ!…こ…腰を…動かされると……あっあっあっああ〜っ!」
「…」
「…み…ミキヤくんのばかっ…あ…ああっ!…や…やめ…この…変態…あああっ!!!あああっ!!!やああ〜っ」
そうだよね…大事な話…いっぱいあるよね…でも…今はさ…
ヒロミちゃんには河村先輩がいる。
それに…いくら二股不倫騒動のはてとは言え、愛子ちゃんとの社内恋愛が破局したばかりの俺がヒロミちゃんに手を出すのは…社内的には流石に理解が貰えないかもしれない。
それでも今は、ヒロミちゃんの香しい女の子の匂いに包まれながら…ヒロミちゃんの身体に愛情を注ぎ込み続けたい…そんな風に思い続けて…いたんだ…
そう思わざるをえない魅力が…ヒロミちゃんには溢れていたんだよ!
―
―
…なんて…
―
…思ってても…
―
…終わりは必ずくる…
―
―
―
「………バカっ」
「………ごめんって」
新宿2丁目の場末の純喫茶…周り中が多分一戦終わらせたオカマのおにいさん達の視線の中……隅のボックス席で俺はヒロミちゃんに睨みつけられて小さくなっていた。
―
―
延々と続くかと思われたラブホでの情事…ふと見たベッド脇のデジタル時計が会社の始業時間が近いことを教えてくれて名残惜しいけど俺はヒロミちゃんから離れた…その瞬間!
ドンっ!!
思いっ切り押されてびっくりする俺を尻目にバスルームに逃げ込むヒロミちゃん。
そして…
「…ミキヤくん!…シャワー交代!…着替えて待ってるからねっ!!」
強い口調のヒロミちゃんの瞳には、いつもの理知的な光が灯っていて…俺はこの非日常な時間が終わってしまったことを実感させられていた。
―
時間差で会社に仮病連絡を行った後、すっかりいつもの調子に戻った俺達…
「お話があります!逃さないからねっ!」
いや…逃げようがないですよ…ヒロミサマ。
既に俺の頭に中にも【現実】ってやつが押し寄せていたんだ。
―
―
―(新宿2丁目の純喫茶)
―
「…赤ちゃん出来ちゃったら…責任とるよね!」
「もちろんですよ…ヒロミサマ」
「…その言い方軽い!…ミキヤくんのバカっ!!」
「そんなこと言われたって…」
いや…反論はやめよう…口とテニスでヒロミちゃんに勝てる日は決して来ない……言えば百倍になって返ってくるだけだ!
「あの…子供が出来ていたとしてですね…それ河村先輩とのお子様の可能性は…」
「
「…」
いや…確か
「…あの…それって…いわゆる避妊はしてないという」
「…何回やっても出来ないんだから上手くやってんの…避妊よっ!」
「…」
「…それにさ…」
「…それに?」
「…もし本当に子供が出来ていたとしたら…ミキヤくんとの子かもしれない赤ちゃんを……正博くんとは一緒に育てられないよ…」
なるほど…
「…承知仕りました」
「…絶対だかんね!」
「…と…ところでですね…次の生理のご予定は…」
「…秘密!」
「ひ…ひでえ!」
それはないよ…あんまりだよ!
ヒロミちゃんがプンプンプンプン…激オコモードも本当にかわいいんだけど……
「しばらく反省して怯えてたら良いのよ!」
「……」
「…そ…それとさ」
「…それと?」
「…生理が来るまで…あたし正博くんとは会わないから…」
「…」
「もし誘われたら、ミキヤくんがのっぴきならない相談があるとかで先約がある…と言って断るから」
「…へ?」
「シナリオを考えて…口裏合わせで今日中に連絡すること!」
「…な…なんて理不尽な…」
「……なんか言った?この淫獣!」
お陰様で…河村先輩には俺の愛子ちゃんへの失恋話は筒抜けだから…その辺りを絡めて話せばしばらくは何とかなりそう…かなあ……
…こりゃだめだ…ヒロミちゃんには…今まで以上に頭が上がんなくなる…ヒロミちゃんの糾弾は…しばらく止まりそうになかった。
「…それとさ…まだ肝心要な話があるんだけど」
「…なんすか?…河村先輩への言い訳以上に何かあるとは…俺には思えないんだけど」
「昨日のこと…ヒロシくんやキョウコちゃんには…何て言うつもりなの?」
「あ〜、それはですね…考えてあるんですよ」
実はそっちの言い訳は…既に出来ていたんだ。
―
―
―
―
「…バカですか?インポなんですか?あんな可愛い子と一晩中一緒にいたくせに…」
「…うるっさいわ!」
翌日の日曜日、横浜の現場に出社した俺は、案の定、ヒロシからの質問攻めにあっていたのだけれど。
「確かにホテルにはファミコンソフトがいっぱい有りましたけど……何でよりにもよってテニスゲームなんか選んじゃうかな…」
「…お互い負けそうになるとリセット押しちゃうんだよね……それで全然勝負がつかないんだけど…あの子勝負がつくまでやめさせてくれないからさ…朝方ヘロヘロでもう会社も休んじゃおう…と」
「…ほんと子供なんですねミキヤさん…信じられません」
「…お前がオコチャマだと嘲笑っていたとヒロミちゃんにはしっかり伝えとくわ!」
実のところ…俺とヒロミちゃんのテニス部リアルペアは、ダブルスパートナーとしては無類の相性を誇るんだけど…いざシングルスで向き合うとちょうど実力が拮抗する上にお互い負けず嫌いなんで
『罵り合いながら延々とラリーを続けるバカップルペア』
として社内では周知されていたんだよね…今回の言い訳はそれを当てにしてたんで上手くいくとは思ってたんだけど…
それにしても…本当にあっさり信じてもらえましたよヒロミさん…俺達って…よっぽどオコチャマだと思われてるんだなっ!
「それはそれとして…」
「…ギクッ」
「お前らはどうしたんだよ!」
「…」
「…」
「い…いやだなあ…俺達はミキヤさんたちがさっさと部屋に行っちゃったから諦めてタクシーで帰りましたよ」
「…嘘だね…俺達がチェックアウトの際に、連れのカップルは?って聞いたんだよ。お前らほぼ始発時間でチェックアウトしたんだよね」
「あ〜バレてんのか〜」
「そんな嘘をかますってことは……お前らまさか?」
「はい…」
「…」
「やっちゃいました…どうしましょう…」
どうやら…こっちのカップルも……のっぴきならなくなっているようだった。
―
―
―
―
「あ〜、こっちもキョウコちゃんから聞いたよ」
流石に1人では抱えきれず…その日の夜、俺はヒロミちゃんに泣きつきの電話を掛けていた。
「キョウコちゃん、大分焦燥していたよ」
「…それはそうでしょ…あの子明確に婚約者がいるんだから。…たださ…」
「?」
「…社内で誰にも言ってないんだけどさ…ヒロシも相方の美幸ちゃんっていう他社の彼女と…結納寸前なんだよね」
「え…え〜っ!……そうなの?」
そう…二人ともヤバさは…俺達の比じゃないんだよね…
「…明日…キョウコちゃんと飲むことになってて…ミキヤくんにつきそいを頼もうと思っていたんだけど…」
「実は俺もヒロシから泣きつかれていて、ヒロミちゃんに付き合って貰いたかったんだけど」
「…」
「…」
「明日の夜は…一緒にやるしか…ないね」
「うん…はあ〜憂鬱だよ…」
明日月曜日は俺達にとっては休日前…ちなみに河村先輩からは当然のようにヒロミちゃんにデートのお誘いがあったみたいだけど、ヒロシたちののっぴきのなさが半端ない状態にさすがの先輩もあっさり引き下がったようだった……まあそれは不幸中の幸い?……なのかなあ……
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