第2話 新天地
穏やかに揺れる水面。朝陽がそこへ反射されてキラキラと光の網目を作っている。
それをカイリは、海原を進む船上から
水平線の向こうから潮の香りを乗せた風が吹きつける。それはカイリの黒髪を優しく撫ぜた後、湾岸道路や海上プラントの方へ向かう。そして、街路樹のように立ち並ぶ風力発電用のプロペラを忙しく回転させていた。
風の恩恵を受けているはそれだけではない。頭上から鳥のような甲高い生物の鳴き声がカイリの耳に届く。
見上げたカイリの目に映ったのは、空を泳ぐ無数の魚であった。
大きさは様々で市場で見かけるレベルから、ちょっとした小島くらいあるやつもいる。どの魚にもトンボのような
魚とは言ったものの、あれはカイリの知っている魚ではない。彼女の世界での認識では魚は水の中を泳ぐものであり、空を飛ぶものでは決してなかった。見た目が近いから便宜上そう呼んだだけだ。魚っぽい生物と言うのが正しい。
もちろん、そんな奇天烈な生物をカイリは今までお目にかかったことはない。
だからこそ、カイリは思いを強くする。
ああ、自分は異世界にやって来たんだということを。
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海洋世界〈オスティア〉。
それがカイリの異動先がある世界の名前であった。
世界の約95%以上が海で占められ、限り少ない陸地に人々が密集して暮らしている。
主要と呼べるほどの産業はない。ほとんどの人はさっきの空飛ぶ魚を捕らえるか、痩せた小さな土地を耕して生活の糧を得ている。
文明のレベルとしては田舎どころか未開の地一歩手前といったところだが、ただその割には異様に発達している部分もあった。
漁に使われるのは木製の
そんな歪な文明を持つに至ったのには、この世界の来歴が関わっている。
一世紀ほど前、まだ異世界への転移が禁止される前のこと。狩猟生活を営んでいたこの世界の人々の前に、圧倒的に発達した文明を持つ人々が大挙として押し寄せた。
次元世界全体を巻き込んだ大戦。その前線に近かったこの世界に補給基地を建設するため、彼らは現地の人々に協力を求めた。その見返りとして文明の利器がもたらされたというわけだ。
けれど、それも戦前の話。ご存知の通り、戦後は異世界への物品の往来が禁止された。そのため現在あるのは、その時に残されたものだけだ。それも保てる者がおらず朽ち果てつつある。
そうやって、いつかは元の静かな世界に戻るのだろうか。
発達した文明と旧来の文明がモザイクのように並ぶ光景にカイリが感傷を抱いていると、操舵室から日焼けにグラサンをかけた厳つい男が顔を出した。
この船の船長である彼曰くもうすぐ目的地が見えるそうで、カイリは船首の方へ移動する。
そして、カイリを迎えたのは広い海にぽかりと浮かぶ絶海の孤島。
それが彼女の新しい勤務先、異世界警察〈オスティア〉支局であった。
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