第3話 こっちが立てばそっちが倒れる??
〜前回のあらすじ〜
*
動物園気分で世界を見守る神様。
「ナズナ先輩、そんな気持ちで僕を見ていたんですね」
そして少し傷つく部下。
*
「また喧嘩してるし…」
うんざりするナズナ。世界を作ってから2日、世界の人間は喧嘩ばかりしていた。
この間までただただ話して歩いていたらだけなのに、なぜか喧嘩が勃発し、なぜか長く続く。
食べ物の奪い合い、人権争い、暴力から言葉での喧嘩まで。誰がドアを閉めるかまでも喧嘩する。
ナズナはバカバカしくなりながらも喧嘩を止め、発展を進め、今日もカタカタと仕事と向き合う。
ただ、そんな時にある“人間”を見ると少し癒されると言う。
「ナズナ先輩、また‘アイ’ちゃんをみてるんですか?」
どこからかわからなくマサノリがナズナの仕事具合を見る。
「うん、この子は平和だから癒されるんだよね」
すこしニヤニヤとしながら見るナズナ。
ナズナが見つめているのは、世界で作った789027人目に作った‘サノ・アイ’という人物。
サラサラな黒髪、美肌、美しく茶色い目。
いつでも笑顔なのがいいらしい。
なぜかナズナが世界から目を離している間に体に傷ができることがあるが、よくアイはヘラヘラとしており、いつでも笑顔で、なのにたまに夜に泣いていることがある。不思議な子だ。
ナズナはこの子が全く喧嘩をしていないことに関心しており、とにかく幸運だけを送っている…つもりだ。
喧嘩ばかりする人間、書き物で他の人のを写す人間、一人の人間を囲って言葉の暴力を振るう人間、悪を笑う人間。
人間にはろくなのがいない、まずは土地を広げよう。
土地を巡って喧嘩が起こる。
なぜだ?
人間は短気だ、感情を増やそう。
優しさを使って悪を創る人間が増えた。
おかしいじゃないか。
人間が病気だ、薬を増やそう。
過ぎた極楽に使う人間が現れた。
幸せなのはいいが…。
人間は強欲だ、食料を増やそう。
食材を巡って喧嘩が起こる。
空腹はいつ満たされる?
そんなことの繰り返し、そんなのが数週間も続いた。
アイの傷も増えて、涙の量が増えてゆくばかり。
なにかがおかしい。アイはいつでも笑っているのに、泣くことも多くなった。
何かが本当におかしい。
ナズナは一度、アイのことをじっくりと観察してみることにした。
ある日、アイは他の人間に酷い言葉と暴力を受けていた。なのに、ヘラヘラしている。
ただのじゃれあいかと思った。
なのに、夜になると涙を流す。
次の日も、アイがひどく扱われいた。今度は産み親にも。酷く、強く、辛く。
いつの日か、アイからは笑顔が消えた。
一度だけ、アイが神社で強く懇願している日があった。ナズナを象徴する神社の前で膝を地面に突き、涙を流しながら懇願する。
『神様、神様!もし、いるのであれば、私を愛してください。神様、神様!お願いだから、この残酷な世界を消してください!』
無茶な願いだった。
自分の手で世界を消してしまうと、学校から退学にされてしまうからなのである。
ある日、アイは高いビルの上にいた。
そよそよと風がなびき、気持ちよさそうにしている。美しい黒髪がそよそよとなびく。
するとアイは急に靴を脱ぎ、真っ赤な口紅を口に塗り、いつも飲んでいた梅ソーダを一口、二口飲み、背中を地面に向けて飛び降りた。
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