1-0:Prologue

 I pray.

Flesh of the father.

Soul of the mother.

Beneath the gemini star.


Is it only silence?

Is it only violence?

That mourn the sacrificed?


Have you forgotten?

The color of truth—

it gleams like silver.


A justice without righteousness

is no truth at all.


Your eyes—glassy orbs.

Unfeeling.


Feel it—pain.

Feel it—agony.

Feel it—tragedy.


Even if the flowers wither,

the star won’t fade.


The last breath,

once lost,

returns to God

from the fingertip of Adam….


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 ── Stella Maris(ステラマリス)大聖堂。

首都東京の埋め立て地に新設されし、祈りの地。その名の示す通り、海上に青く輝く聖母の星をイメージさせる、壮麗で美しい聖堂だ。

尖塔に輝く星々の装飾と、天空と海を混ぜたような青一色のステンドグラスの物珍しさが、

完成間近のこの施設の話題となっていた。


今は緊急封鎖警報により、建設が一時的に中断されたため、建物内に他の人影はなく、真青なステンドグラス越しに伸びる影は、2つだけ。


フードを被った若者とボロ布を纏った老人が互いを見つめなながら歩いている。

美しいステンドグラスも、豪奢なチャペルチェアも二人の視界には入っていない様だった。


コツ、コツ、コツ、ズッ、ズル、ズル…


静かな聖堂内に響く、足音と衣擦れが、

呼応しているかのようだ。

耳が痛くなりそうな静寂のあと、ついに──若者が口を開く。


「…始まりの者よ」

しっかりと響いた声は吐息と共に白く、凍え切っている。

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老人:

「これは呪いだ」

「いや、祝福だ」

「祝福された(呪われた)息子たち、嗚呼、可哀想に。」

「愉快だ」

「全部、原初の女(あの女)のせいだ」

「我らが父が過ちを犯した」

「憎い!」

「悍ましい!気色が悪い!!

…だが、甘美だ。」

「さあ、歓びを分かち合おう、我が兄弟、我が子孫、下僕であり、宿敵の星の者よ。」

「さあ、さあ、さあ、さあ!」

「…さあ、始めよう。」

「見せておくれ。味わわせておくれ」

「お前の悲劇(死)を。」


若者:

「いや、」

「死ぬのは、貴方だ」





暗転。

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