Lv.999の赤ちゃん
猫師匠
プロローグ
――エルダランディア。
剣と魔法が支配するこの世界は、今や魔王バロガルドの闇に覆われつつあった。
そんな折、王都から旅立ったひと組の勇者一行がいた。
勇者アレン、僧侶セレナ、剣士ブリッツ、魔法使いジーク、盗賊ミラ。
世界を救うべく、魔王討伐の旅を続けていた。
ある日、一行は西方の辺境の村に立ち寄る。
村の外れに広がるキャベツ畑を通りかかったそのとき――
「……今、泣き声がしなかったか?」
アレンが足を止める。
畑の奥から、か細い泣き声が風に乗って届いてきた。
セレナが駆け寄り、そっと葉をかき分けると――
「赤ちゃん……! こんな所でひとりで……!」
そこにはキャベツの葉っぱにくるまれた小さな赤子が、泣きながら手足をばたつかせていた。
村人たちに聞いても、この赤子の親については誰も知らない。
捨てられたのか、奇跡的に生き延びたのか……。
アレンは決意を込めて言った。
「勇者として、見捨てるわけにはいかない。俺たちで育てよう」
かくして勇者一行は、赤ちゃんを抱えて旅を続けることになった。
◆
道中、赤ちゃんを抱いたセレナとアレンを見た村人や宿屋の主人は、決まって同じことを口にする。
「まあまあ、お二人のお子様ですか?」
「ち、違うわ!!」
二人は息ぴったりに全力で否定した。
そんなある日、森の中で魔王軍の獣人兵に囲まれた勇者一行は、窮地に立たされる。
剣も魔法も尽き、絶体絶命……その時。
「危ないっ!」
セレナが叫んだ。
ハイハイで前に出ていく赤ちゃん。
そしておっとりと“ばぶー”と声を上げた――次の瞬間。
天空が裂け、まばゆい光の槍が無数に降り注ぎ、獣人兵たちを一瞬で灰に変えた。
勇者一行は呆然と立ち尽くす。
「……い、いまの、赤ちゃんが?」
その時、森の奥から魔王軍の斥候たちがその光景を目撃し、震え上がりながら村へ逃げ帰った。
「勇者たちは無敵だ! 赤ん坊すら魔法を操るらしいぞ!」
◆
だが、勇者たちはまだ知らない。
その赤ちゃん――やがて“カナタ”と名付けられる子――こそ、
かつてこの世界を救い、災厄の竜バハルゲートを討った伝説の“英雄王”セリウス・グランディアの転生体であり、
レベル999の力を秘めた最強の存在だったことを。
これは、勇者一行と一人の赤ちゃんが織りなす、
ギャグ満載の大冒険譚の始まりである。
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