【朗報】厳しすぎる女上司(26)の正体、俺の推しVだった。毎晩100円スパチャで「部下の褒め方」を教えたら、翌朝デスクに缶コーヒーが置かれて職場がイージーモードになった件
第3話 【悲報】俺の推しV、謎の太客(5万円)に「札束」で殴られて雲行きが怪しい件
第3話 【悲報】俺の推しV、謎の太客(5万円)に「札束」で殴られて雲行きが怪しい件
イージーモードは、加速している。
あの日以来、氷室課長との連携は神がかっていた。
俺が夜に「100円」で伝えた攻略法を、彼女は翌日、完璧に実行する。
理不尽なダメ出しは消え、俺の提案は通り、残業はゼロ。
周囲の同僚たちは「最近の旭、何か覚醒してないか?」「氷室課長の扱い上手すぎだろ」と噂している。
気分は悪くない。
いや、最高だ。
だが、光が強くなれば、影もまた濃くなるのが世の常だ。(超かっこいい)(最近黒子のバスケを読んだ)
◇
「……やぁ、旭くん。調子はどうだい?」
給湯室でコーヒーを淹れていると、ふわりと甘い香水の香りがした。
振り返ると、ロマンスグレーの紳士が立っていた。
軽井沢部長だ。
この殺伐とした営業部における、聖域(サンクチュアリ)のような存在。
「あ、お疲れ様です! おかげさまで順調です」
「そうかそうか。君の活躍は聞いているよ。
……氷室くんも、君には随分と助けられているようだね」
彼は、目を細めて微笑んだ。
その笑顔には、上司特有の威圧感がない。
「彼女は優秀なんだが、少し『あそび』がなくてね。
タイヤも空気パンパンだと、ちょっとした段差でパンクしてしまうだろう?
私がいくら言っても、彼女はいささか頑張りすぎてしまうのでね」
部長は、憂いを含んだ溜息をついた。
「君のような、柔軟な考えができる若手が彼女を支えてくれて、私は安心しているよ。
……彼女が潰れてしまわないよう、君からもよろしく頼むね」
俺の肩に置かれた手は、温かい。
(……なんて、いい人なんだ)
俺は感動すら覚える。
氷室課長は変わったとはいえ、やはり緊張感はある。
対して、軽井沢部長は「逃げ場」を作ってくれる。
「何かあったら、いつでも相談しなさい。私は君の味方だからね」
彼はニッコリと笑い、去っていった。
俺は、その背中に深く頭を下げる。
この会社には、厳しいけれど熱い課長と、優しくて器の大きい部長がいる。
まあ、恵まれているんだろう。
ブラック企業だと思っていたが、住めば都とはこのことか。
◇
深夜1時。
いつもの儀式の時間。
『こんココ~!』
画面の中のココちゃんは、今日も元気だ。
最近、俺のアドバイスのおかげで、リアル仕事のストレスが減っているらしい。 配信の声にも張りがある。
そのせいか、同接数も徐々に増え始め、コメント欄の流れも速くなっていた。
『えー、というわけで! 今日は
平和な雑談枠。
の、はずだった。
『えっと……PN「名無し」さんから。 「ココちゃん、最近調子乗ってない? ゲームも下手なくせに、仕事できるアピールうざいんだけど。てか声がキモい。引退しろ」』
空気が、凍る。
ココちゃんのアバターが固まる。
いわゆる「荒らし」だ。
人が増えれば、こういう手合いも湧いてくる。
『あ、えっと……ごめんね、不快にさせちゃったかな……』
ココちゃんが萎縮する。
彼女は真面目すぎる。こういう悪意を、真正面から受け止めてしまうタイプだ。
コメント欄がざわつく。 「無視でいいよ」「通報通報」「気にすんな」。
俺もキーボードに手を置く。
何か、フォローを入れないと。
だが、俺の100円スパチャで、このドス黒い悪意を払拭できるか?
その時だった。
ドォォォォン!!
画面全体を覆い尽くすような、ド派手な真紅のエフェクト。
鼓膜を揺らす、重低音の通知音。
赤スパチャ、50,000円。
送り主の名は、『会長K』。
『会長K:ココさん。雑音など気にする必要はありませんよ。 貴方の魅力は、大人の私が保証します。 貴方は、貴方のままで素晴らしい。 自信を持ちなさい。私がついています』
圧倒的。
圧倒的な、財力と包容力。
アンチの小賢しい暴言など、5万円という物理的な質量の前では塵に等しい。
『えっ……!? か、会長Kさん!? ご、5万……!? ありがとうございます!』
ココちゃんの声が裏返る。
コメント欄が一気に沸騰する。
「うおおおおお!」「ナイス赤スパ!」「かっけぇ……」「これが大人の余裕か」 「アンチ息してるー?w」
荒らしのコメントは、称賛の嵐に流され、跡形もなく消え去った。
『すごい……。会長Kさん、本当にありがとうございます。 私、元気出ました! 雑音なんて気にしません!』
ココちゃんが、安堵の笑顔を見せる。
俺は、打ちかけていたコメントを消した。
(……すげぇな)
俺の100円は、彼女の「行動」を変えることはできる。
だが、彼女を「守る」力においては、この太客には勝てない。
会長K。
アイコンは、高級そうなワイングラス。
言葉選びも知的で、落ち着いている。
きっと、社会的地位のある人物なのだろう。
俺は、少しだけ複雑な気持ちになりながらも、安堵の息を吐く。
よかった。
彼女には、俺(サトウ)以外にも、強力な味方がいる。
これなら、彼女の配信活動も安泰だ。
俺は、祝杯代わりにストロング缶を開ける。
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