うどん打ち体験:二人の休日

冬休みのある日の午後、拳ちゃんは凛花と一緒に街外れの体験工房にやってきた。今日は特別な日、二人でうどんを作る体験だ。


「今日は、あーしと一緒に本格的なうどんを作るんだよ!」

凛花は笑顔で拳ちゃんの手を引き、教室のように明るい体験工房の中へ足を踏み入れる。エプロンをつけたその姿は、普段のギャルっぽさを残しつつ、どこか料理上手な妹キャラのような雰囲気も漂わせていた。


「え、えっと……あーし、こんなに粉を触るの初めてかも……」

拳ちゃんは凛花の張り切る様子に微笑む。

「大丈夫だって、拳ちゃん。あーしが教えてあげるから」


作業台には小麦粉と塩水が用意されている。まずは生地作りから始まる。粉と塩水を混ぜ、こねていく作業だ。拳ちゃんは思わず手を伸ばす。「うわ……意外と力いるな」


「そりゃそうだよ、拳ちゃん。力加減が大事なの。生地を均一にするのがうどんの命!」

凛花は手慣れた様子でこねていく。その指先は滑らかで、まるで手元から小麦粉の精霊でも生まれるかのようだ。


拳ちゃんは少し焦りつつも、一生懸命こねる。

「うー、でも……手が粉だらけになるな」

「ふふ、拳ちゃん、手が汚れるのも楽しいのよ。こういうのって、思い出になるんだから」


二人の間には、自然な笑いと温かな空気が流れる。互いに粉をつけ合いながら、ちょっとしたイタズラも交えつつ、作業は進んでいく。


「そろそろ寝かせる時間だね」

凛花はこね終わった生地をラップで包み、少し休ませる。

「この間に、ちょっと休憩しよっか。拳ちゃん、あーしの作ったお菓子食べる?」


拳ちゃんは目を輝かせ、「え、マジか!?」と手を差し伸べる。小さなお菓子を頬張ると、凛花は笑いながら「でしょ? ギャルでも、甘いものには手を抜かないの!」と得意げだ。


そして、休憩の後はいよいよ延ばす作業。生地を麺棒で伸ばしていく。拳ちゃんは初めての体験に戸惑いながらも、凛花の手本を真似る。

「拳ちゃん、手首の角度が大事! 力任せにやるとダメだよ」

「う、うん……でも、難しいな」


凛花はにっこり笑いながら拳ちゃんの手に自分の手を添える。「ほら、一緒にやろう。あーしが支えてあげるから」

二人の手が触れ合い、生地が少しずつ均一に伸びていく。その瞬間、拳ちゃんは胸が少しドキドキするのを感じた。


「できた……かな?」

凛花は麺棒を置き、伸ばした生地を眺める。「うん、上出来だよ。さすが拳ちゃん、一生懸命やっただけある」

「ありがとう、凛花……でも、あーしの指示がなかったら絶対無理だったよ」


次は切る作業だ。生地を均一にたたみ、包丁で麺状にカットする。

「慎重にね、拳ちゃん。太さがバラバラだと茹でるときに困るから」

「う、うん……」

二人で肩を寄せ合いながら、細かい作業を進める。互いの呼吸や動きを感じながらの作業は、不思議と親密さを増していった。


切り終わった麺を茹でる時間になる。湯気の立ち上る大鍋の前で、凛花は楽しそうに笑う。

「茹でている間に、あーしと雑談しよっか」

「え、雑談?」

「そうそう、拳ちゃん、去年のお正月はどう過ごしてたの?」


二人は茹で上がるうどんを待ちながら、去年の思い出や好きな食べ物、くだらない笑い話を交わす。教室でも、プールでもない、静かで温かな時間。


やがて、うどんが茹で上がる。凛花はそっとざるに上げ、二人で味見。

「うん、もちもちで美味しい!」

「う、うまい……凛花、すごいな」

「ふふ、拳ちゃんが頑張ったおかげだよ。二人で作ったうどんは格別でしょ?」


拳ちゃんは頷き、凛花の笑顔をじっと見つめる。その瞬間、心の中にぽっと温かい気持ちが広がった。二人の距離がぐっと縮まったような感覚。


「……あーし、また一緒にこういうことしたいな」

拳ちゃんは笑顔で応える。「もちろんだよ。凛花となら、何でも楽しめそうだ」


外は夕暮れが近づき、窓の外の光が二人を包む。小さな体験工房の中で、二人はうどん作りを通して、また一つ思い出を重ねていったのだった。

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