3 探索-2-
都市には大小いくつものゲートがあるが通常、調査団が利用するのは上層部と直結している大型のゲートだ。
一度に多くの隊員や物資を載せるため、カーゴ部分は広く大きく造られている。
また、この立地は収獲物を貯蔵庫に運ぶのにも適している。
人員や物資の動線は徹底的に計算しつくされており、資源の乏しい地下都市ではあらゆるものが常に最適化を目指しているのだ。
「よう、どうした? 表情が固いぞ」
ガラの悪そうな声にアナグマが振り返ると、恰幅のいい男がいた。
年齢はカイロウと同じくらい。
身体に衰えが出始める頃のハズだが、この男には老いを感じさせない溌剌さがあった。
見覚えのない顔だ。
隊にこんな男がいただろうか……と思いつつ、彼は、
「平気ですよ」
と静かな声で返した。
緊張などしていない。
地上での行動は慣れている。
収獲にありつける嗅覚も、積み重ねた経験も、運の良ささえも――。
一線級であるという自負があった。
だからといって慢心はしない。
彼に足りないのはチームで行動する経験である。
「あと五分で地上だ」
ゴンドラの音に混じっても、カイロウの声はよく通る。
進む先に目をやると、暗闇の奥にわずかに光が差している。
扉の隙間から漏れているのだ。
地上は日が沈んでからかなり経っているハズだが、夜目の利く彼らにはしっかりとそれが見てとれた。
「最終確認だ。まず川を目指して直進する。川の流れに沿って下り、A地点で目的の物を回収する。今回は狩猟が目的じゃない。連中が出てきたらとにかく逃げろ」
「了解!」
一同が声をそろえる。
それ以外の返答は必要ない。
ゴンドラが速度を落とすと、岩壁に擬した扉がゆっくりと開きはじめた。
ゴンドラが完全に停止すると同時にアナグマたちは素早く降りて扉をくぐり、壁面に隠されたパネルを押す。
背後で閉じられたドアを振り返れば、ここに地下へと続く道があるとは誰も思わないだろう。
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