第6話 ライトメタルの誕生

ブラックワイバーン肉のバーべキューパーテイーが終わったのは子供達が寝静まった頃だった。コランとミチルは村の広場の外れを借りて簡易住宅を設置してそこで就寝した。

村長は自宅に泊まって貰おうと努力したが、コランの旅行用簡易住宅が町の高級ホテル以上に立派だったのに驚き、粗末な自分の家に泊まって貰うのは失礼だと感じてしまったのだ。


何とかお礼をしたいと思うのだが貧乏なこの村には何も無い。

村長のお礼をしなければ!と思う気持ちは翌日にさらに膨らんだ。

【旅の仙人】ことコランが村中の家々を回って病気を患っている者を治療して回ってくれたのだ。治療費を受け取りもしないで。


「なぜこんなにも良くしてくださるのですか?」と尋ねたところ

「いやなに、ミチルがお友達の家族の病気を治してやって欲しいと泣きながら訴えるものじゃからじいじは孫娘の涙に弱いんじゃよ。1人だけを治したら不公平になるからみんなを治してやろうと思っただけじゃよ。爺馬鹿じじばかだと笑ってくれてもいいぞ」

「笑うなんてとんでもない!恐れ多いことです。悲しいことにオラたちの村にはお礼として支払うものが何も御座いません」

そんな話をしているところにミチルが子供達をぞろぞろ引き連れてやって来た。


「じいじ。これなあに?」

ミチルが差し出して訊いてきたそれは鉱物のようなとても硬いのに恐ろしく軽い代物だった。

「それはこの村を開拓した時に土地を耕す時に出て来た【軽石】ですな。何の役にも立たんので村はずれに積んでおいたものですじゃ」

村長の言葉にコランは食いついた。

「いらないものなら儂が貰っても良いかのう」

「そりゃ構いませんがこんなクズ石をどうするおつもりですか?」

「いやなに、ミチルが興味を持った物だから何か使い道が有るんじゃなかろうかと思うてのうほっほっほ」

とここでも爺馬鹿じじばかを発揮するコランだった。


コランは【軽石】を積んだ山を収納した。その日から錬金術で何事か研究を始めた。

そして2日目コランは手に鍬とスコップと鎌を手にして村人を集めてこれらを使ってみてくれと非力な女性達に言った。


鍬を振るったおかみさんは驚愕した。「なにこれ⁉とても軽いのに地面がサクサク耕せるわ!全然疲れないよ」


草刈鎌を手にした娘は言った。

「怖いくらいよく切れる。間違って自分の足を切ってしまわないように気をつけなくっちゃね」


スコップで穴を掘ってみたお婆さんは

「やだよ!ちょっと体重を掛けただけでどんどん穴が掘れるよ!言っておくけど、あたしゃそんなに太っていないからね!」


村長は問う。

「これは一体何なんでしょうか?」

「ああ、この前貰った【軽石】を錬金術で金属にしてみたんじゃよこれらの刃の部分を100個ずつ作っておいたので村の皆で取っ手の部分や柄の部分を作って取付けて村の皆で使っても良いし街で売っても良いし自由にしておくれ」


「そ、そんなあ、お礼にさし上げようと思ったのにオラたちが得してしまうなんて……」


がっくり崩れ落ちる村長。

そこへミチルが肩に手を置いて慰める。

「ごめんね村長さん。じいじはこんな人だから諦めてね」


「なんじゃミチルまるで儂が空気を読まぬ阿保みたいじゃないか!」

コランまで崩れ落ちる。

村人がどっと笑い出す。

この後ミチルが使う剣はこの軽石から錬金術で作り出したライトメタルの剣であり、ミスリルでさえ切ってしまうライトメタルの誕生のいきさつだった。

当然コランの杖もライトメタル製に変更してある。




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