第31話
そんな中、
「そうだ、おだんご!」
「ききょうとよみちゃんが疲れているから、
「……
「ふむ。この場で、どのようにして団子を創るか、見せてもらうとしよう。材料はおろか、水や火気もないこの場所で、まさか無から有を創り出すというのか」
「うん。おだんご、おいしくなぁれ」
その瞬間、周囲の空間が、一瞬だけ淡い
【みんなが喜ぶ美味しいお団子が、たくさんお皿に並んでいる】
その無垢な願望が、そのまま世界の新しい
彼女の小さな手のひらの上に、大きな木の器がぽんっ!と現れ、みたらし、胡麻、よもぎ餡、香ばしい味噌だれ、さらには季節外れの栗餡や桜の塩漬けを混ぜ込んだ珍しいものまで、様々な味の団子が、数十本、これまたぽぽんっ!と、でたらめに積み上げられた。一本一本が完璧な焼き加減と照りを持ち、湯気一つ立たないが、口に運べば温かさを感じさせる、矛盾した完璧さを具現化していた。
驚き過ぎて
「な……数十本!? しかも、この多岐にわたる味付けと形状を、一度に、一瞬で創り上げたというのか……!」
(でたらめな、力……。この幼神の中に、何かの過去の記憶の残滓が……いや、そうではない。この「団子を作る」という、その無作為で単純な願望が、世界の
完全に
(儂の因果律の
「これは……! 単なる
「……これが、慈愛による創造か。まさしく、我らが知る
「わー! おいしい! ききょうちゃん、よみちゃん、しろ、力いっぱいー!」
「ふふ。みんなが元気になって良かった」
―しばらくして、
(この子は、儂の
かつて、想い人である秋人を救えなかった無力感。その時、
(儂が、過去の因果から目を背け、この子に「娘」という役割を押し付けているのではないか? この圧倒的な力を持つ存在の「保護者」を名乗る資格が、儂にあるのか? 儂の愛は、この子の無垢な力を、世界の
その時、
「ねえ、ききょう。おだんご、美味しい? この味噌だれ、よみちゃんが美味しいって!」
「うむ。格別に美味い。そなたが、儂の疲れを癒してくれたのだな」
「えへへ」
その笑顔は、
(
―
「さて、
「
白虎には、桜花に追加で創造してもらった数十本の団子を風呂敷で包んで背負ってもらった。
「
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