第25話 映画館でも、とろけるほど甘い(3)
「じゃあ、チケット配るぞっ! 皆早く! 急がないと!」
八枚の事前予約チケットを手にした
いつもは気だるそうな
ここまでしゃきっとしている理由は、間違いなく『大好きな
細工したチケットを、上手いこと全員に配っていくその意気揚々とした背中は、どこか嬉しそうで気持ち悪かった(かなり)。
僕たちが見るホラー映画『パニック・オブ・日本庭園の謎』は、どうやら今期の映画ランキング第一位の実績を誇っているようだった。
それを示すように、すでに映画の上演を待つ客たちが長い列を作っている。
この様子からして、早いところ並んでおかないとスムーズに入場することができなくなってしまうだろう。僕がそのことを皆に伝えようとしていると、吹奏楽部の
「席自体は確保できてるけど、この人の多さだと入場に時間がかかりそうだよ? こんなとこでだべっててだいじょーぶかな」
僕と同じ思考だったようで、
それを聞いた彼女たちは『そうよね』『わ、そうだね……あ、その前にわたし売店にもう一回行ってくる』と、それぞれの反応を示している。後者は甘衣さんだ。
僕も特に用はないので、他の四人と一緒に列へ向かうことにした。
小走りで10メートル先にいる甘衣さんのもとへと向かった山田は、少し落ちたメガネを手で直してから、
しかし、映画館ロビーでの騒音の影響で、互いの声が聞こえないらしい。
何度か小首を傾げて『なーに?』というジェスチャーをしていた
二人がかなり近い距離で話している時間は、およそ10秒ほどだったが、どうしてか僕の胸はちくりとしたのだった。
……今日は、まだ
いや、だから何だと言うのか。僕が
先日、風邪をひいた
僕の狼狽などいざ知らず、
……なんか足が重たいよぅ。いつもは、こんなこと無いのに。山田と
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