第3話 21~30


こねこねこねるハンバーグ

今日は美味しいハンバーグ

時間をかけて育てたお肉

柔らかジューシー食べ頃だ

美味しく食べて

また育てる

これは何のお肉でしょう

一人前のお肉に口はない



鏡を見ているとさ

後ろに誰かいるんじゃないかって感じるんだ

でも鏡には映っていない

誰もいないと思って振り向くとさ


いるんだよ


いないって


いると思うといるよ


トイレの個室でやってみろよ

いたらそいつ、生きててもいなくても異常だから


個室だからね



戸棚の扉がひとりでに開くのを見ている


開いた


あ、閉じた



玄関の扉がゆっくり開くのを見ている

開いた先には誰もいなかった

開ききった時、自分の肩には静かに誰かの手が乗せられた



博物館で恐竜の骨の化石が消えるんだって

でもしばらくしたら戻ってくるんだって

骨に肉と臓器をたっぷりつけて

今日はどの恐竜が狩りをするんだろう


ねえ、最近その近くで行方不明者が多発してるよね

それって


大丈夫

飼育員さんも餌は選んでるそうだから













誰が百物語なんて始めたのかな?


一体いつ終わるんだよ。


そうだ、いっそのこと、ラインの一番最初の誰かに対して一言言ってやろう。

そう思って、思っただけなんだ、なんとなくグループラインのトップに戻った。


それはもう何回か見たことのあるような話だった。

「ずっと玄関の前に誰かいるんだけど

出たほうがいい?」

ちょっと怖いような、違和感を感じるような、そんな話。

それより上はなかった。つまりね、それが百物語を始めたイチってことなんだよ。




今、既読の印がついた。

初めて読んだその話に、読みましたの印がついた。


相手は気づいたかな。

気づくはずないよね。




よし。知らないアカウントの顔をタップしようとした、その時だった。


「うわ、この人も文字化けかぁ」


名前が文字化けしていて読めない。他の人と同じように。

もしかしたら一人でやってた自作自演のライントークだったのかもな。ああ早く終わらせたい。早くラインから退会したい。名前も読めない誰かに声をかけようとした。

短い話の横にある投稿時間を見てみた。いつからこの人は始めたのか。ほんの気紛れだった。


目を疑うってこういうことなんだ。そこにある数字は、ねえ、信じられる?

何年何月何日何時何分、最近の話なんかじゃ。

ああもうわかんない。

わかんないわかんない。もうわけわかんない。

その最初のトークは、ずっと、ずっと、ずっと大昔だった。


信じられなくて次の話の日付を見た。それも似たような数字だった。でも間が開いている。え、こうだったっけ? 何時間前? 何日? いいや、何年だ。

次は、次は、その次は。


時間がおかしかった。エラーだ。信じたくなかった。

だから閉じた。


何度も退会しようとしたけど無理だった。きっと逃がしてくれない。

自分はこのグループから逃げられない。そう感じた。














ある所に鉄塔がいくつか建っていました

鉄骨で組まれたあれです

いつだったかその内の一本にブルーシートがかけられていて

もちろん途中の一部だけだったんだけど


へえ、それで?


次回へ続く


続くんかい



続いたよ


続いたんかい


その鉄塔に被さっていたシートが

日にち経つ毎に膨らんでいる気がしました

風かと思いましたが、そんなこともない

毎日少しずつそれは膨らんでいたのです

それは




error

error

error

error

error

error




後ろからそれが追ってきた

たくさんの長い脚、長い胴、眼

蟲だった


おいお前


あれは蟲の卵だったんだ


お前、誰だよ


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