【最終話39話で完結】「The Lost Light: もう離さない」
ネヴァーランドヴァーセ
プロローグ:すべてが消える前に
イズミの胸は、目の前の少女を見つめて張り裂けそうだった。ナツメ。彼女はそこに立ち、果てしなく広がる虚無の中でひときわ儚げに見える。それでも、イズミの手を握るその力は強く、決して離そうとしない。不確かなものの淵にある、最後の確かさ。
ナツメは右手で涙を拭い、左手はなおもイズミの手を固く握りしめていた。指先が微かに震え、その細やかな震えが彼女の肌からイズミの肌へと伝わる。今この手を離せば、イズミは目の前から消えてしまいそうな、そんな錯覚にとらわれて。
「イズミ…」
ナツメがかすれた声で呼んだ。その声には、感動と恐れが混じり合っていた。
彼女はただ名前を呼んだのではなく、まるで二人のすべての記憶、すべての歩みを呼び戻そうとしているかのようだった。初めて出会った頃、ナツメがまだ口を開くのを恐れていたあの日から、イズミがいつも傍にいてくれた数々の瞬間まで。
イズミはその呼び声を聞き、深く息を吸った。彼の目はナツメを深く、静かに、それでいて感情をたっぷりと込めて見つめる。この瞬間を永遠に刻み込みたいかのように。
「ナツメ…」
優しく言葉を返した。
ナツメが顔を上げ、まつげに涙をたたえていた。その瞳はきらめいて見える。
イズミはもう一度深く息を吸い、静かでありながら感情に満ちた目で彼女を見つめた。彼の顔に薄い微笑みが浮かぶ。めったに見せない笑顔だった。ナツメにとって、これは彼女が今まで見た中で最も美しい笑顔に思えた。
「僕は…君を愛している」
その言葉はとても静かに発せられたが、周囲の白い空間全体を揺るがすかのように感じられた。ナツメは息をのんだ。自分の鼓動が耳の中で激しく打つのが聞こえる。
イズミは続けた。その声は真摯で深く、今まで抑え込んでいた感情がついに爆発したかのようだった。
「僕は、昔のナツメも、今のナツメも、これからのナツメも――どこにいても、どんな形でまた出会っても、愛している。今から…どこにいても、僕の気持ちは絶対に変わらない。愛してる、ナツメ。ずっと」
ナツメの涙がついに溢れた。彼女は一歩踏み出し、うつむいてイズミの胸にしっかりと寄りかかった。両手は震えながらイズミの上着の裾を握りしめ、崩れ落ちまいと耐えているようだった。
「イズミ…」声はかすれ、ほとんど聞こえないほど微かだった。
「イズミ…どうしてもっと早く言ってくれなかったの…」
イズミはただ優しく微笑んだ。彼の手がゆっくりとナツメの肩を囲み、温かく抱きしめる。少しうつむき、最後の言葉を囁くように言った。
「必ず君を探すよ、ナツメ。どこにいても。約束する」
ナツメはゆっくりとうなずいた。まだ目は潤んでいたが。彼女はそれに返す間もなかった。突然、何かが変わるのを感じたから――まるで体が軽くなり、光に持ち上げられるかのように。
ポータルの中の白い光はますます明るくなり、きらめく光の欠片のように輝いた。さらに明るく、さらに近づき、肌に触れるほどに。二人の呼吸は遅くなった。
イズミは変わらずナツメを抱きしめ、周囲の世界が色を失っていっても離さなかった。ナツメはイズミの上着をもっと強く握りしめ、その温もり全てをどこへでも持ち運ぼうとするかのように。
全てがさらに明るくなった。まるで終わりのない太陽の光の中に立っているかのようだった。
その触れ合いは次第に薄れていった。
ついに、白い世界全体が色を失い――彼らが通り過ぎた世界のすべてを記憶へと変え――暗闇に沈んだ。
『約束を忘れないで…』
それは夢だったのだろうか?
それとも、終わりにある現実なのだろうか?
そして、ここから…物語は始まる…
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