第8話 帰宅
『え!?あの人って魔王さんの知り合いだったんですか!?』
「そうだ。まあ、直接会ったこともないから知り合いといえるのか怪しいが………ちょうどいい機会だからミサキにも話しておこう。俺と勇者の関係は________」
あれから特に何事もなく学校での一日を終え、家に帰ってラフな格好に着替えた俺は、リビングにあるソファーで勇者のことについて話をした。
『へー、そんなことがあって、私の体に……………』
ソファーでくつろぐ俺の隣で体を伸ばしたミサキは、俺と勇者の関係、そして俺がこの世界に来た理由を聞いても、驚かずにダラダラしていた。
俺としてはこの話を学校でしたかったのだが、ミサキがずっと黙って話しかけてこなかったため、落ち込んでいたのか俺の独り言が増えないようにしていたのかよく分からず、なんとなく話しかけづらかったのだ。
とはいえこの様子を見るに、ただ落ち込んでいたから話しかけなかった、というわけではなさそうだ。
多分だが、ミサキは学校であまり話をしない性格なのかもしれない。
『…………………何か失礼なことを考えていませんか?』
俺にじっと見られていたからか、邪推したミサキが俺の膝の上に乗ってきた。
「いや、別に。ミサキは学校では大人しい奴だったのかと思ってな」
『結構失礼じゃないですか!』
ミサキが俺の太ももをぺちぺち叩いてきたが、全く痛くなかった。
ただ猫がじゃれて遊んでいるような微笑ましい光景にしか見えない。
だが、ミサキはそれなりに本気でたたいているようで、見た目だけでは飛んだり跳ねたり結構激しい動きをしていた。
『はあ、はあ…………それよりも、授業の方は大丈夫だったんですか?』
「ん?勿論…………………大丈夫だったぞ?」
『…………………大丈夫じゃなさそうですね』
俺はそれに言い返そうとしたが、俺とミサキの“大丈夫”の基準はかなり違う。
だからこそ俺も大丈夫と言いつつも言い淀んでいた訳なのだが_____
「今までの授業内容を一切覚えていないからな。理解できないのも当然だろう」
『そうですけど………………』
勿論のことながら、俺の記憶の中には授業を受けた記憶はない。だが、授業によって得られた知識はあるため、小学校と中学校の範囲くらいは思い出そうと思えば思い出せる。
これは恐らく、今までミサキがまじめに勉学に取り組んでいため、俺でさえ思い出そうとすれば思い出せるレベルまでの記憶になっているのだ。
だが、高校入学から授業を受けていた記憶がないのは勿論のこと、知識もない。そのため、途中から授業に参加したような状況になっている俺には、教師が何の話をしているのか全く理解できなかった。
「まあ、俺には記憶障害と幻聴という言い訳がある。何とかなるだろう」
授業中の俺はというと、教師の話をまじめに聞いてはいたが、怪我を理由に黒板に書かれたものをノートに写していなかった。それに加え、記憶障害を理由に質問に対してすべて分からないで通したのだ。
ミサキからすると、授業をまじめに受けずにサボっていたと思われても仕方ない状況だった。
『無駄な努力はしたくないんですもんね』
肩をすくめる俺に、太ももの上に乗ったミサキは半目で睨みながらそう言った。
どうやら、今日の朝に言った“勇者との戦い以外で労力を割きたくない”というのをまだ根に持っているようだ。
ミサキからしてみれば、自分ではないとはいえ、“この体”には勉強をして良い成績を残してほしいと言いたいところなのだろう。だが、俺がその勉強という努力をしたくないのを知っているからこそ、その言葉が出たのだ。
そして当然ながら、あの時言った言葉は今回も適応されるため俺が勉強をすることはない。
「俺はミサキの想像している通り勉強をすることはないが、悪い成績をとって悪目立ちしようとも思っていないぞ」
『え?でも理解できなかったんですよね?』
だが、努力をしないということは必ずしも良い成績を残せるとは限らない。
無駄な努力はしないが、できることはするというのが俺のポリシーなのだ。
「教師が決める成績の基準は、定期的に受けるテストの点数なのだろう?」
『それ以外にもありますけど……………大半はそうですね』
「なら、どうすればいいかは簡単に思いつくだろう。まじめなミサキは乗り気になれないかもしれないが、ミサキが協力すればテストで良い点を取ることは可能だ」
『え?私が_____って、まさか!』
ミサキにも俺が考えていることが理解できたのか、爪を立てながら起き上がった。
「ミサキの考えている通りのことをしようと思っている。利害は一致しているんだ。反対はしないでくれよ?」
『いや、それとこれとは話が………………!』
ミサキは俺にテストでいい点を取ってほしい。だが、俺は勉強をしたくない。それぞれの願いを両方叶える方法があるのに、ミサキは俺の太ももの上で立ち上がったまま異を唱えた。
まあ、反対してるのは今だけで言いくるめられそうだが______
「_______というか、ミサキ」
『何ですか…………?』
「俺の足に乗っているときは爪を立てないでくれないか?刺さって痛いんだが」
今の俺はミサキの持っていた部屋着を着ており、上はパーカーだが下はショートパンツと太ももが露出しているため、爪が直に当たるとかなり痛い。
『あ………………すみません』
そう言うと、先ほどまでの勢いが消し、爪を仕舞って太ももの上に座った。
いや、足の上から降りてくれてもいいんだぞ?
俺の言葉には、足の上から降りてほしいという意も込められていたのだが、爪を仕舞うという選択肢はあるものの、足の上から降りるという選択肢は彼女の頭に無いようだ。
そういえば、ミサキは病室のときから俺の上に乗るのが好きだったな。元の体に魂が引かれるとか、接触していると落ち着くとか何か理由が_______って、今はそんなことを考えている場合ではない。
「まあ拒否権はないとして、だ」
『え?拒否権ほしいんですけど……………』
「ミサキの考えている通りのことをするわけだが、一応妥協案も考えている」
『………………妥協案ですか?』
「ああ。ミサキが影から俺に問題の答えを教えるのは変わらないとして、ミサキ自身の手で問題を解けば、納得いくんじゃないか?」
『…………………確かに』
俺がテストでいい成績を残すために考えたのは、影にいるミサキが問題に対する答え、つまり、教科書やらスマートフォンを使って答えを導き出し、それを念話で伝えて俺が答案用紙に記入する、というものだ。
だがそれでは、変なところで真面目なミサキが納得しない。だからこそ考えたのがこの妥協案である。
そもそもテストを受けるべきなのはミサキ自身であり、ミサキが勉強をして俺に答案を伝え、俺が記入するというミサキ本来の力でテストを受けさせればいいのだ。
「どうだ?これならいいだろう?」
『…………………仕方ないですね、分かりましたよ』
「よし、そうと決まれば______」
俺は足の上であきらめるようにだらけてしまったミサキを見て、畳みかける。
「今度、数学の小テストがあると言っていたな。まずはそこで予行練習をするぞ」
『えぇ!?急ですね!』
「いっっ!!だから爪を立てるなと言っただろう!」
『あっ!すみません!』
驚いて立ち上がり、再び俺の足に爪を立てたミサキは慌てて詰めを仕舞った。
二度の失敗で反省したのか、ミサキは俺の太ももに手足が触れないように横向きに伸びた状態で脱力した。
………………いや、どいてほしいのだが。
『でも、そんな急に言われても勉強してませんし………………』
ミサキはしっぽを左右に揺らしながら悩んだ。
_______そう、彼女は悩んだのだ。
彼女は俺に良い成績をとってもらうために勉強をしてほしいと思っているなら、この状況は歓迎するべきことなのだ。
だが、彼女は俺に勉強をしろと言いつつも勉強をしたくなさそうにしている。
完全に矛盾していた。
「……………それがお前の本心か」
『ん?何か言いましたか?』
「いや、勉強したくないならしなくてもいいと言おうとしたんだ」
『え?』
彼女は、良い成績をとることが求められる社会に生きていたため、勉強に励んできたのだ。だが、本心では勉強したくないと思っていたためにミサキが“ミサキじゃなくなった”瞬間、その枷が外れ、本音が漏れるようになったのだろう。
それとも、彼女が俺に心を許しているからこそ本音を言っているのだろうか。
そういえば、今日の朝の出来事といい、やけに感情を表に出していたことが多かった気もする。だが、記憶の中にある“私”はそんな性格ではなかったはずだ。
俺だけじゃなく“ミサキ”も精神面で俺の影響を受けているのかも知れない。
「まあ、事故にあったばかりだから教師もそこら辺の事情は加味してくれるだろう」
『のわっ!』
俺はミサキを“両手で”抱き上げ、高く掲げた。
俺がミサキの些細な変化に気づいているのは、魂が混ざり合ったからなのか。
それとも、俺が魔王から人間に変わってしまったことを示しているのだろうか。
『急に何ですか?』
「………………いや、別に」
俺はそんなことを考えつつ、ソファーに寝転がりながらミサキをお腹の上にそっと下ろした。
『……………………テストまでに勉強しておきますよ』
「そうか」
『でも、勉強する時間はあまりとれないので期待しないでくださいね』
「そうか……………期待しているぞ」
『……………………私のこと分かってるくせに、そんなこと言うんですね』
「分かっているから言ったんだ」
『はいはい、分かりましたよ~』
そう言うと、ミサキは俺のお腹の上で丸まってしまった。
ミサキからの視線を感じたが、俺はミサキの方を見ずに天井を眺めていた。
『………………そーいえば。右腕、治ったんですね』
「ああ。昨日からずっと魔力で治していたからな」
実際には今日の昼頃に治っていたがギプスと包帯を外すタイミングがなかったため、部屋着に着替えた際に外しただけだ。
俺はミサキの近くに置いた右腕がつつかれているのを感じながら、目をつぶった。
「……………………」
どうもこの家に来てから、俺ではなくミサキとしての性質が表に出ることが多い気がする。
俺は俺だが、ミサキの魂も混ざっている。それも、死を覚悟してもうこの家に戻れないとあきらめていた魂だ。だからこそ、この家で過ごすことで俺に混ざったミサキの魂が揺さぶられているのだ。
その魂の揺らぎは時間がたつにつれて弱くなり、最終的には消えていくのだろう。それは俺の心に平穏が戻ってくるということであり、喜ぶべきことである。
だが、時間がたつにつれ、混ざり合った魂が変化してしまうかもしれないという問題もあった。
多分俺は、いつか俺とミサキの魂の境目がなくなり、俺が俺でなくなってしまうのかもしれないという変化を恐れているのだろう。
前の世界では勇者を倒すことしか考えていなかったのに、今の俺はそれ以外のことも考えている。いや、考えさせられている。
だからこそ、こうも思っているのだ。
このままでは、勇者を倒そうという思いすらも消えてしまうのではないか、と。
それは俺が魔王であると証明できる唯一の思いであり、それが消えてしまえば、俺が俺でなくなってしまうことを意味していた。
「まさか、魔王である俺がこんなことで悩ませられるとは______」
「ただいま~!」
俺が自身の変化に悩んでいた時、玄関から母親の声が聞こえた。
「『おかえり~』」
買い物に行っていた母親が帰ってきたらしい。
「ずいぶん時間がかかったんだな」
『いつもの道草じゃないですか?』
時計を見ると、母親が家を出て行ってから一時間も経っていた。
夕飯の買い出しに行くと言っていたがこんなにかかるはずがない。
ミサキの記憶によると、こういう日は決まって______
「荷物多いから運ぶの手伝って~!」
「『…………………』」
やはり、買い物に時間がかかっていたのは夕飯以外の買い物をしていたからのようだ。
ソファーに寝そべっている俺とそのお腹の上にいるミサキは目を合わせた。
多分というか確実に、俺とミサキは全く同じことを考えているだろう。
「『また変なものを買ってきたのか………………』」
何を買ってきたのか見るのが怖いが、呼ばれた以上手伝わないわけにもいかない。
『にょわっ!?』
俺はお腹に乗っているミサキをつまんで床に下ろし、ソファーから起き上がった。
そしてリビングの扉を開け、玄関へと向かうと_____
「…………………本当に多いな」
そこには食材が入った袋以外に、謎のオブジェ(?)が入った袋やさまざまな色をした箱があった。
「まおー君、玄関開けて~!」
まだ荷物があったのか玄関扉の薄ガラスの向こうには、大きな箱を持った母親の影が見えた。
「分かった」
俺は袋や箱をよけながら靴を履き、扉を開けた。
「ありがと~。そういえば右腕まだ治って無かったよね?ごめんね~手伝えとか言っちゃって________って、あれ!?もう治ったの!?」
「う、うむ…………」
母親は俺に話しかけながら玄関に入って荷物を置くと、鮮やかな二度見をして驚いていた。
「へーすごいね~。ミサキちゃんみたいな不思議な力のおかげ?」
「あ、ああ。魔力で治りを早くしたんだ」
「ほえ~……………」
ドアノブを握っていた俺の右手を取り、興味深そうにしげしげと観察していた母親は、分かっているのか分かっていないのか伝わらない相槌を打った。
せわしない母親の行動にうろたえていたが、ここは荷物のことを聞かなければ。
「それで、この荷物は?」
「ああこれ?なんだと思う?」
荷物の方へ意識をそらしたのが悪かったのか、右手を母親に握られたまま荷物の方へと引っ張られてしまった。
そして手を離したと思ったら母親に謎の板状のものを渡される。何やら片面がざらざらしているが、何に使うものか分からない。
下においてある他の荷物に目をやっても、用途の分からないようなものが多かったが、箱にプリントされた画像にやたらと猫が多いことに気が付いた。これはまさか________
「ミサキの、か?」
「正解!!」
どうやらミサキのために、猫を飼うために必要なものを一通り買ってきたらしい。
いや、猫の姿をしているが元人間だぞ?それでいいのか?
そう思って母親を見るも、楽しげに荷物を開ける母親にそれを問うことはできなかった。
「えーっと、これはね_______」
『はえ~、なるほど』
俺は完全に猫扱いされたことを気にしていないかミサキを見ると、母親に説明しながら差し出される猫用品を見て、うんうんと頷いていた。
猫扱いされているんだぞ?ミサキはそれでいいのか?
そう思うも、どちらも気にしていないようで楽しそうに猫用品を開封していた。
「これでいいのか………………」
俺は無理やり口に出すことで納得し、持っていた板をミサキの前へと置いた。
「ああ、それはね______」
『ふむふむ______』
俺は靴を脱いでミサキの隣に座り、二人を眺めた。
二人はお互いの傷をなめ合っていた朝までとは違い、ただ二人でいることを楽しんでいるように見えた。もう少しかかると思っていたが、どうやら母親の傷は癒えたらしい。
「______これは____後でお兄ちゃんに組み立ててもらおうね」
『なるほど______って、魔王さんをお兄ちゃん扱いするのはやめてってば!
ほら、魔王さんも何か言ってくださいって!』
「うーむ、後でな」
『ちょっと!手遅れになりますって!』
そう言うとミサキは俺にとびかかってくるが、母親はそれをただじゃれついているだけだと勘違いしたのか、ほほえましそうに眺めていた。
「あっ、そうだ!」
それどころか、何か思いついたような顔をしたと思ったら、袋から猫がじゃれついて遊ぶおもちゃを取り出し、ミサキの前で揺らした。
「いや、ミサキは元人間だぞ?そんなのに釣られるわけが______」
『わーーい!』
「うふふっ、かわいいわ~!こっちこっち!」
「ンニャムルーー!!」
「…………………」
どうやらミサキには野生の感が備わっていたらしく、おもちゃを持って廊下を歩いていく母親について行ってしまった。
とはいえ、ミサキは自分が猫になりきって母親に付き合っているようにも見えるし、母親は付き合ってくれているミサキを見て喜んでいるようにも見えた。
どうやら、この似たもの親子はたった一日でこの状況を受け入れてしまったらしい。
自分の体が猫になった娘と、自分の娘が猫になった母親。
大きな変化なのに、二人の関係は変わっていなかった。
そして、その中で俺は_______
「そうか、変化を恐れていたのは俺だけだったのか」
永遠に近い寿命を持つ魔族とは違い、寿命の短い人間は、日々変化をしてくものなのだ。
俺がミサキの影響を受けることを拒み続けていたのは間違いだったのかもしれない。
どんなにミサキに影響を受けたところで、俺は俺であり、本質は変わらないのだ。
廊下ではしゃぐ二人を見て俺はそう確信した。
「はー!楽しかった!!」
どうやら母親の体力が切れたらしく、散らかった玄関へと二人は戻ってきた。
『あれ?もう終わりですか?』
だが、ミサキは遊び足りなかったようで、母親の手にあるおもちゃをじっと見つめていた。
「……………………」
前言撤回。それにしても変わりすぎでは?本質すら変わってそうだけど?
いや、疑うのはよくない。
この二人は間違いなく親子だ。けして主人とペットなどという関係になってしまったわけでは______
「あ、あとこれも買ってきたんだった。ほらこれ!」
「『!!!!!』」
そう言った母親が取り出したのは、缶詰だった。
それも、猫のイラストが描かれ、猫用と書かれたそれは______
『猫缶…………………』
「それがささみ入りで、これが_______」
母親は猫缶を一つミサキの目の前に置くと、次々と袋から取り出していく。
だが、それを見つめるミサキは神妙な面持ちをしていた。
「待て。それ以上は………………」
「え?」
母親にここまで猫扱いされてショックを受けていると思った俺は、母親を止めた。
「っ!!」
そして俺が言いたいことに気づいたのか、母親ははっとした顔でミサキの方に顔を向けた。
そして俺も母親からミサキへと目を向けると、そこには_______
『ふむ、前からどんな味がするか気になってたんですよね………………』
母親が取り出していた様々な味の猫缶を小さな手で一つ一つ確認しながら選んでいるミサキの姿があった。
「ミサキちゃん……………ごめ_____」
「いや、待て」
「え?」
俺は再び母親を止めると、ミサキがじっと見ていた極上マグロと書かれた猫缶を開け、そっとミサキの前に置いた。
『食欲をそそられるいい匂いですね~』
そう言うと、ミサキは猫缶にかぶりついた。
「………………喜んでくれてるの?」
先ほどから不安げな顔をした母親にそう聞かれたが、喜んでいるのか俺にもよくわからない。
『あ、結構おいしいですね』
「………………………美味しい、だそうだ」
「喜んでくれてるのね!?」
母親の顔から影がなくなり、猫缶を食べるミサキをうれしそうに眺め始めた。
二人が納得しているならこれでいいのだろうが、何というかやはり………………これではいけないような気がする。
「まあ、見てくれは猫だがミサキは魔族だし、人と同じ味覚をしているから人間の食事を用意してやってくれないか?」
「?猫じゃないのね?」
「ああ。だから、食事は俺と同じものをこの体で食べやすいように出してくれ」
「分かったわ。ごめんなさいね、お母さん魔族?とかよくわからなくて」
それもそうか。
母親に魔族や今のミサキの体について詳しく説明していなかったため、話をする必要があるだろう。
というか、昨日の夕飯と今日の朝食は俺と同じものを食べていただろうに、疑問に思わなかったのだろうか。
「夕飯を食べ終わったらそこら辺の話をしよう」
「そうね、お願い。
ホントにごめんね~ミサキちゃん。今日の夕飯はとびきり豪華にするから!」
俺の言葉に神妙な面持ちでうなずいた母親は、すぐに俺から視線を外すといまだに猫缶を食べているミサキの方へと向かった。
『?別にいいですよ?たまにおやつで出してほしいくらいです。お母さんにそう伝えてもらえませんか?』
「……………………分かった」
どうやら俺は人間をなめていたらしい。
いや、ミサキが特別なだけか?
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