元聖女が魔族の少女を拾って楽園を作る話
三色ライト
第1話 元聖女、魔族の女の子を拾う
「ラティーナ、お前はクビだ」
「……は?」
王都の中心、文化と経済の中心地で、私は勇者にクビを宣告された。
勇者がソファに深く座り、偉そうにふんぞり返ってクビを宣告する。この光景は見慣れたものだった。
これまで勇者は何人もの逸材を引き入れ、気に入らなかったら即クビにする。そうすることで自分の気に入った人間のみを側近に置く、ヨイショパーティを形成していたからだ。
私もこれまで、何人も歯を食いしばりながら逸材たちを見送ってきた。
「一応聞いておくわ。何で聖女である私がクビなわけ?」
私が問うと、勇者は指をパチンと鳴らした。
すると後ろのドアから半裸の女性が2人現れ、勇者を挟むようにソファに腰掛けた。
「コイツらもお前と同じようにバフの魔法が使える。お前は面は良いが俺に対して不敬な態度を取るだろう。これまでは貴重なバフ要員で目を瞑ってやったが、もうお前に用はない」
「不敬ですって? 神にでもなったつもり?」
「当たり前だ。世界が俺を勇者に選び、必然、俺は選ばれた。神でなくして何なのだ?」
この男、ゲスな上に頭もイカれたか。
「あっそ。確かに私はアンタに裸を見せるつもりもサービスするつもりもない。私のバフが必要ないってなら、こっちこそ願い下げ」
「ふん、最後まで可愛くない女だ」
「じゃあね勇者。死ぬならせいぜい戦場で死になさい。女に刺されて死んだなんて、末代までの恥よ? あぁ、末代を残せたらの話だけどね」
「貴様ぁっ!」
激昂した勇者から逃げるように立ち去り、勇者も追ってはこなかった。きっとあの半裸の女たちとよろしくやっているのだろう。
私はラティーナ・マーシャル。
聖女に選ばれた20歳の女。
勇者パーティに加わり、我々人類と大陸を二分する魔族や脅威と戦い続け、いつしか英雄と呼ばれるようになった。
といっても今この瞬間、無職になったんだけどね。
「あームカつく! あのクソ勇者! のたれ死ねクソが!」
……っといけない。口が悪いよラティーナ。私は聖女、誰よりも誰にでも優しい女。
「ってバカバカしい! 勇者パーティを抜けたら一般人! 使命に生きる必要なし! もういいもん、好きに自由に生きてやる!」
幸い貯金はたんまりだ。5年以上あのクソのパーティーで英雄やってたからね。
これまで私は人類のために身を粉にして働いてきた。でも私が不要ならそれで結構! 私だって生きたいように生きてやる!
「まずその1っ! 王都近郊に一軒家を建てる!」
今までは勇者パーティの一員に与えられる部屋に住んでいた。住み心地は良かったけど、借り物という意識は抜けず、常に人の目を感じた。
「そしてその2っ! 誰にも邪魔されずゆっくり過ごす!」
今までが忙しすぎた。うら若き乙女には苦痛そのもの!
「そしてその3っ! ちょっと勇者と人類にプチ復讐してやる!」
あのクソ勇者も、それを神と持て囃す人類も気に入らない!
でも親切な人もいるのは事実だ。だからプチ復讐で我慢する!
「あっははは、楽しい人生になりそうじゃない!」
聖女ラティーナ、第二の人生に胸が躍るってもんよ!
え? 躍るほどの胸は無いだろって? よし、お前も復讐対象だ☆
◆数日後◆
「完ぺき! パーフェクト!」
ここは"誓いの丘"。
王都からちょっと離れたところにあるだだっ広い丘だ。
ここには他の民家は一軒もない。というか、滅多に人が立ち入らない。
なぜって? 理由は分からないのよね。ただ何となく、誓いの丘は神聖な場所だから立ち入ってはならぬと代々教えられてきたのよ。その意味も忘れて、惰性で教えだけ守ってる感じ。
でもまぁ、私自身が神聖な存在だし良いかなって(?)
私はここに数日かけて理想のマイホームを建てた。
資材は現地調達。組み立ては得意の魔法でちょちょいのちょい!
あー我ながら天才。さすが天才聖女様。
広々としたリビング、その日によって気分を変えられるように3つも作った寝室、大きなお風呂!
そして何より魔法でシステム化された水道・電気・炎。
これなら王都より快適かもね。
「我ながら天才だわ……」
自分の才能が恐ろしくて震える。あと曇ってきて寒くて震える。
「部屋のストーブ入れちゃおっと」
私は新居に逃げ込んで、ボタン一つで火が灯るストーブを付けた。
しばらくストーブの暖気でウトウトしていたら、何やら外が騒がしくて目を覚ました。
水垢ひとつない窓ガラスから外を見ると、空は濃灰の曇に覆われ光を遮っていた。
風は吹き荒れ、木々が倒れんばかりに揺れている。
雨は横殴りに降っており、打たれたら痛そうなレベルだ。
「嵐じゃない。勘弁してよ、もう」
こちとら新しい人生の船出を始めたところなのに。縁起が悪いわね。
ゴトッッッッ!!
「ひぇっ!?」
な、なんか玄関の方から鈍い音がしたんだけど。
家材が崩れた? そんなバカな、私の魔法による組み立てが、嵐程度に負けるはずがない。
えっと、じゃあ……
「お、お化け……? まさか出るの、ここ……」
無理無理! お化けとか1番無理! だって私は聖女だから! お化けとか対極の存在すぎて無理!
恐る恐る、すり足で玄関に向かい、意を決してドアを開けた。
すると、視界の下に灰色の何かが丸く転がっていた。
「何これ……柔らかい?」
「はぅ」
「…………はぁ?」
今のは声だった。
じゃあ私が今触っているのは何? ……耳っ!?
まるで狼のような、灰色の毛を纏う尖った耳
ファーフードの付いた、薄汚れたパーカー。
そのフードを取ってみると……
「魔族の……女の子?」
年端もいかぬ少女の顔が現れ、その顔は苦痛に包まれていた。
これが、すべての始まり。
◆あとがき◆
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