AIに文学的評価をさせてみる

 ライトノベル全盛の昨今です。「ライトノベルは文学じゃない」と言われる方々もいますが、それは違うと思います。ウィリアム・シェイクスピアが劇作家として現役だったテューダー朝後期からステュアート朝初期、イングランドは空前の演劇ブームで、連日新作が上演され、台本を提供する作家が大勢いました。シェイクスピアが一人勝ちしていたわけではありません。


 日本でも、江戸時代後期の化政文化のころ、多くの戯作や読本が出版されました。その中から『東海道中膝栗毛』や『南総里見八犬伝』といった名作が生まれました。


 何が言いたいかというと、玉石混交の巨大なカオスの中から、真に輝くものが時間の試練を経て生き残るということです。というわけで、今の無数に書かれているライトノベルの中からも、文学史に残る傑作が現れるかもしれません。ただ、大半は忘れ去られるでしょう。


 ところで「文学」を大辞林で引くと「言語表現による芸術作品」となります。では「芸術」引くと「特殊な素材・手段・形式により、技巧を駆使して美を創造・表現しようとする人間活動、およびその作品」となりますが釈然としません。醜さを描き高い評価を得ている「芸術作品」も数多くあるからです。


 私の考えでは文学とは、単に“美の創造・表現”ではなく、物語・人物・独白・象徴といった言語表現を通じて、世界の見方・価値観・倫理を問い直す営みです。

したがって、醜悪さ・悲惨・矛盾・倒錯といった題材も文学となりうると考えます。

 ゆえに、当然、伝えたいテーマがあり、そのテーマをどのように表現するかが作品のレベルを決めることになるでしょう。文学作品はしばしば生き方・社会問題・倫理・人間の行動と相互関係を描くことで読者に自ら考えることを促します。他方、読者には、語彙、論理的思考、共感力、背景知識や時代性の理解が必要です。


 さて、四つのAIを使った作品評価ですが、文学の領域に踏み込んでみたいと思います。


 ただ、「この作品は文学として何点?」と質問するのはあんまりなので、少し工夫します。AIは過去の文学作品はすべて知っており、その評価もデータとして蓄積しているので、それらと比較させて相対評価をさせようと思います。しかしながら、あくまでも「過去の作品と比較しての評価」ですからAIが知らない価値を提供していても、そこは評価されないでしょう。


 ここまで考えて、こんな質問を考えてみました。

「文学を、『物語・人物・独白・象徴といった言語表現を通じて、世界の見方・価値観・倫理を問い直す営み』と定義する。これを踏まえ、文学作品のレベルとは『テーマとそのテーマの表現方法』のレベルとする。この定義とレベル設定の上で、この作品は日本の近代幻想文学、伝奇文学、さらにSF作品の中で、どのように位置づけられるかを論じてほしい。加えて21世紀に入ってからの作品群の中ではどのレベルにあると言えるかを、おおむね2000文字で示してほしい。作者への配慮は一切なしで」

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