第2章 — 初めて魔法を見た赤ん坊
この新しい世界で生まれて数週間が経っても、カエル――今はアルヴェン――はまだ慣れなかった。
視界は少しははっきりしてきたが、それでもまだ小さく丸い。
少しだけハイハイできる。
集中すれば座ることもできる。
だが、周りの世界は……
光る線が刻まれた石の壁。
ファンタジー小説から飛び出したような彫刻風の木製家具。
夜空に漂う光が、星屑でできた蛍のように浮かぶ大きな窓。
すべてがあまりにも異なる。
ここ……絶対、地球じゃない。
毎日、新しい両親はあの聞き慣れない言語で話していた。
その声は暖かく、優しい。
言葉はまだ理解できないが、少しずつ抑揚で理解してきた:
心配、喜び、興奮、愛情。
それだけでも、アルヴェンの心は落ち着いた。
家の探検
アルヴェンは階段の近くまでハイハイした。
大きな木の段に目を奪われて。
よし……挑戦してみようか?
完全に無謀だ。
だが、心は大人のまま。
階段なんて、そんなに難しいはずがない。
第一段に手をかけ、体を引き上げ――
トゥク。
登れた。
誇らしかった。
信じられないほど誇らしかった。
「もう一段…」と思った。
だが、赤ん坊の足はぐらつき、手も滑った。
そして――
ふわっ――ドスン!
二段ほど転がり落ち、床に小さく無力にぶつかる。
小さな膝に鋭い痛みが走った。
「痛っ――!!」
口を開けた――
しかし、泣き声は出ない。
ただ、体が震えるだけ。
足音がドタドタと近づく。
母の大きな息遣い。
「アルヴェン! フィラ! フィラ!!」
すぐに抱き上げられ、ぎゅっと抱かれる。
父も駆け寄り、目を見開いた。
「ケラ?! フィラ・ネリ…また泣かない!?」
二人は恐怖の表情を浮かべていた――
転んだことではなく、まだ泣かないことに。
母は頬に手を添え、膝を確認する。
小さな傷から少し血が滲んでいた。
「レ…レン・ス……?」と心配そうに囁く。
父は首を振る。
「まだ静か。強いのか? それとも変……?」
アルヴェンは言いたかった。
強くない! ただ心は十六歳なんだ!
泣くのは恥ずかしい!
でも、できることは体をちょっと動かすだけ。
母は静かにため息をつき、膝に優しい手を置き、囁いた。
「バサ…ルリ…メ’ラ――」
アルヴェンは瞬きをした。
もしかして……歌ってるのか?
その旋律は柔らかく、ほとんど子守唄のようだった。
心の中で目を転がす。
マジかよ? 傷を癒す歌だって? 俺は五歳じゃないんだぞ。
効くわけない。十六歳だってば――
その時――
淡い緑の光が母の手の周りに集まった。
アルヴェンは固まった。
光はゆっくりと肌に浸透していく。
暖かく、安心できて、チクチクと小さな火花のような感覚。
気がつく前に――
痛みは消えた。
傷は閉じた。
完全に。
アルヴェンの目は大きく見開かれ、ほとんど痛いくらいだった。
…えっ!?
母は安堵の笑みを浮かべ、再び抱きしめた。
「ケラ…フィラ・ソナ。癒えた。」
父は優しく笑った。
「ほら? 安全だ。」
一方アルヴェンは心の中で叫んでいた。
何だって――!? 魔法!? 魔法が本当に!?
小さな胸がドキドキ鳴る。
この世界には魔法がある……
本物の治癒魔法がある……
前世の疲れと後悔が一瞬よぎった。
何年もの修行。
何年もの挫折。
受け入れられなかった死。
だがここでは……
この世界では……
魔法が存在する。
そして、それはすべてを変えた。
アルヴェンは小さな拳を握りしめ、新たな決意を胸にした。
もしここに魔法があるなら……
この世界に、知っている以上の力があるなら……
俺はそれを極める。
今度こそ……
無力なままにはならない。
今度こそ……
誰にも命を奪われないだけの強さを手に入れる。
こうして、生まれ変わった少年の新たな旅が始まった――
剣道の落ちこぼれではなく、
魔法が呼吸のように流れる世界の子として。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます