終焉の後の新たな人生:始まりの地点
@coneaa
プロローグ —— 滅びゆく技の最後の一太刀
竹刀がぶつかる音が、狭く埃っぽい道場に響く。
かつては生徒たちでいっぱいだったこの場所――笑い声、足音、そして「面!」という鋭い掛け声が飛び交っていた。
今は、残っているのはただ一人だけ。
十六歳のカエル・アラガは、あごに汗を滴らせながら構えを整え、再び竹刀を振り下ろした。
シュッ――ドン。
竹刀は使い古された稽古用の人形に当たり、その表面は何年もの使用でほとんど裂けそうになっていた。
「剣道なんて無駄だ。」
「誰ももうこの死にかけた武道をやらない。」
「情けない…まだ病弱な父のために稽古してるのか?」
その声は毎日のように聞こえる。
でも、カエルは無視した。
二階の小さな部屋で、かすかに薬の匂いがする部屋で横たわっているのは、すべてを教えてくれた父――
かつて尊敬された剣道の達人だった男が、病に蝕まれながら浅く息をしている。
カエルは握りを強めた。
名声のためじゃない――
栄光のためでもない――
ただ、父が残せる唯一の遺産だから。
稽古が終わる頃、太陽はすでに沈みかけていた。
カエルは汗をタオルで拭き、竹刀を肩にかけ、家路につく。
街は静かだった――あまりに静かで、違和感を覚えるほど。
その時――
「た、助けて!お願い――!」
カエルは立ち止まった。
同じくらいの年の少女が、二倍の大きさの男に抵抗している。
バッグはもう一方の手に握られ、盗んだ品物で膨らんでいた。
ひったくりだ。
そして、ジャケットの膨らみから――銃を持っていると分かる。
ほとんどの人なら逃げる。
でも、カエルの足は考える前に動いた。
「離せ!」
男は不快そうに振り向いた。
「お前は何だ?棒を持った子供か?」
カエルは竹刀を構えた。
構え――完璧。
視線――鋭く。
「覚えておけ…これを剣道という。古臭いかもしれないがな。」
男は笑った――
そして、カエルは動いた。
正確な横ステップ。
手首への鋭い一撃。
肋骨を狙った掃き払い。
竹刀で肺の空気を押し出され、男はよろめく。
カエルは男と少女の間に立つ。
「走れ!助けを呼べ!」
少女はためらったが、決然とした視線に押されて逃げ出した。
ひったくりは唸る。
「このガキ――!」
彼は銃に手を伸ばした。
カエルの体は思考よりも速く動く。
「面!」
竹刀は男の前腕に当たり、銃は暴発――
バンッ!
弾は耳をかすめて飛んでいった。
カエルは止まらない。
止まるわけにはいかない。
再び打つ――
小手!
胴!
面!
長年の稽古が、一度の必死の戦いにすべて注がれる。
泥棒は倒れた。
一瞬、安堵を感じた――
バンッ。
路地に隠れていた二人目の銃撃者が引き金を引いた。
衝撃が先に届き、音は後から。
胸を裂くような熱い痛み。
足は崩れ、世界は激しく傾く。
膝をつくカエル。
手は折れた竹刀に伸びる。
父の声がかすかに脳裏に響く:
「カエル…大切なものを守れ。」
温かい血が足元に広がる。
「いや…こんな…」
呻く、視界は暗く沈む。
「ずっと稽古してきた…ここで死ぬわけには…」
歯を食いしばる。
「これで終わるわけにはいかない…
一生懸命練習してきたのに…
路上で…死ぬためにじゃない…」
最後の息が震えながら吐き出された。
世界は闇に溶けていく。
そして、その闇の向こうで――
何かが見ていた。
何か古のものが。
何かが、彼の名を呼んでいた。
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