『俺のママになってくれ』と懇願して数々の冒険者パーティーを追放され続けた俺、ついに女神を見つける。あと、俺を追放したクズパーティーは粛清な!
立沢るうど
第一話……女神降臨
「てめぇ、いい加減にしろ! キモいんだよ!」
「うっ……!」
午後、ダンジョンに向かう準備をしていた一室で、パーティーリーダーの『バイスン』から横っ腹に蹴りを入れられ、俺は倒れ込んだ。
「トリプルAランク確実と言われている俺様のパーティーには、お前みたいな変態がいてもらっちゃあ困るんだよ!」
「お、俺の改善提案があったから、お前達『トップオブトップ』がAランクに上がれたんだろ……!」
「んなわけねぇだろ! なに捏造してるんだよ!」
「くっ……! た、頼む……『ムリエ』……。ママに……俺のママになってくれ……。このままだと俺は……死んでしまう……」
「バイスン、コイツ早く追い出してよ。マジでキモすぎ」
「あ、あんなに仲が良かったじゃないか俺達……。どうして……」
「はぁ? 何、勘違いしてんの? ただ新入りのお守りしてただけでしょ? 私はバイスン一筋なんだけど」
「『
おっと、お前には母親がいないんだったな。まぁ、いてもロクでもない女だろうが。ガッハッハッハ!」
体格の良いバイスンの豪快な笑いに合わせ、周囲の連中も大笑いしていた。
しかし、俺はその嘲笑を気にも留めずに立ち上がり、懇願を続けた。
「ここが最後の希望だったんだ……。頼む……ムリエ……。限界なんだ……おっぱいを吸わせてくれ……」
「事ある毎に、おっぱいおっぱいって……。どう考えても異常者だろ! 早く行けよ、ノロマ!」
十六歳の女子とは思えないムリエの容赦ない啖呵と蹴りによって、ついに俺は部屋から追い出された。
「う……うぅ……」
かくして、俺は『セントマリー学園』を後にし、ヨロヨロとあてもなく彷徨うことになった。
◆
どのぐらい時間が経ったのだろうか。
俺はもう歩けず、どこかも分からない道端にうつ伏せになっていた。
このまま死ぬのだろうか。
ママさえ見つかれば、こんなことにはならなかったのに。
いや……。『ママ』が特別だったんだ……。『あんなママ』は他にいないんだ……。
もういい……。どうなってもいい……。
ママ……。今、会いに行くから……。
「……だ……大丈夫⁉️」
すると、誰かが俺に声をかけた。
もう死なせてほしいのに……。
「ちょ、ちょっと待って、『ミレイ』! ソイツ、例の変態だよ!」
「でも……放って置けないよ!」
「もしかしたら、倒れてるのは演技で、ドサクサに紛れてエッチなことしてくるかも!」
俺を見つけたのは、女子三人らしい。
ミレイという名前から察するに、『
俺は彼女達を一方的に知っていたが、彼女達も俺を知っていたのか。まぁ、悪い噂のようだが……。
しかし、この三人なら……。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ!
ミレイの腕に優しく抱かれた俺が、彼女達に目を向けようとした時、全く別の複数の足音が聞こえた。
「おやぁ? セントマリー学園の生徒さん? こんな所で会うなんて奇遇だなぁ。いや、運命だこりゃぁ!」
「な、なんだよ、お前達」
怪しい輩に対して、彼女達の内の一人、『
ショートカットで男勝りな性格の彼女らしい態度だが、この場合は危険だ。
「なんだよって、失礼な女だなぁ。やっぱり、クズ生徒の集まりなんだな。とりあえず、俺達と来てもらおうか」
「はぁ⁉️ 何言ってんだよ。一般人が私達に勝てるわけないだろ……って、なんだよそれ」
カチャッという音と共に、男は何かを手にしたようだ。
「これ? これはね、こういうふうに使うんだよ♪」
パァン!
「ぐああああぁぁぁぁ!」
俺の右ふくらはぎを何かが貫通し、激痛が走った。
あれは……『拳銃』!
「神代くん!」
「だ、大丈夫だ……。おかげで意識がハッキリしてきた……」
「おやおや、女の前だからって強がってまぁ」
「な、なんなんだよそれ! 『スキル』か⁉️ 『スキル』なのか⁉️ 学園の卒業生なのか⁉️」
彼女達は知らない。あれが拳銃と呼ばれるものだと。
いや、彼女達だけではない。この世界のほとんどの人間が知らないモノだ。
『向こうの世界』ほど武器の開発技術が発達していないこの世界では……。
それをヤツは持っている。
しかし、ナツの言うことも半分当たっている。アレは実物ではない。男のスキルによって具現化されたものだ。
「…………。こうなったら……」
すでに諦めていた俺が、なぜその判断をしたのか分からない。
しかし俺は、ただただ最後の力と言葉を振り絞っていた。
「ミレイ……! 俺のママになってくれ……! 頼む……! おっぱいを吸わせてくれ……!」
「ええええ⁉️」
「お前、バカなのか⁉️」
「こんな時に何言ってるの!」
彼女達のもう一人、『
こんな時『だからこそ』、俺は言ったのだ。
「ミレイ、死にたいのか! お前の身体がめちゃくちゃにされてもいいのか!」
「あっはっはっは! 君、『こっち側』の人間だったのか! それとも、冥土の土産かな?」
男が笑うと、仲間の輩連中も笑い出した。
「そ、そんなことより、脚の血を止めないと……。魔法を……念のために救急車も……」
「そんなことより、おっぱいだ! 早くしろ! 俺が死ぬ前に早く……! 頼むから……!」
「はーあ……名言も聞けたことだし、茶番は終わりだ。おい、女どもを連れて行け」
「はっ!」
俺の意識が途絶えかけ、ミレイの腕からずり落ちそうになると、連中はナツとスイの腕を掴み、彼女達を攫い始めた。
「や、やめろ!」
「離して!」
「ナッちゃん! スーちゃん!」
「ミレイ……お前の友達がどうなってもいいのか……! おっぱいを……おっぱいをくれぇ! 俺の……『女神』になってくれええええ!」
その瞬間、ミレイがビクッと震えたような気がした。
「君、最後まで面白いこと言うなぁ。個人的には生かしておきたいけど、まぁ無理だね。せめて、一発で脳天をぶち抜いてやるよ」
そして、リーダーの男が俺達に歩み寄ろうとしたその時。
「か、神代くんが……死んじゃう……。も、もうどうなっても……知らない!」
これほど懇願した俺が言うのもなんだが、彼女の言葉をにわかには信じられなかった。
しかしその直後、彼女は制服と下着を一気にたくし上げ、豊満な左乳房とその先端を俺の口にあてがった。
ああ、ついに……。俺は、ついに『女神』を見つけたんだ……。
『ミレイママ』、ありがとう。
思いっ切り吸わせてもらうよ。この世界で一番美しく、尊い、君のおっぱいを。
そして、『二人だけの時間』が訪れた。
「ん……あ……か、神代くん……。そんなに激しく……吸ったら……あぁ……恥ずかし……あ……あれ……? なんか……みんな止まってる……」
「ふぅぅぅぅ……助かったぁ……。ありがとう、ミレイ。でも、時間がない。ナツとスイを学園まで運ぶぞ! おっぱいはそのまま放り出しておいてくれ。いつでも吸えるように」
周囲の時間が停止している中、俺は立ち上がって、男達に掴まれていたナツとスイの腕を解放し、まずはナツを背負った。
「女子が人を背負うのは無理だろうから、少しずつ引き摺っておいてくれ。大丈夫、思っているよりも力は必要ないはずだ」
「ま、待って神代くん! どういうこと⁉️ 脚は⁉️ あんなに血が出てた脚はどうしたの⁉️ ズボンも!」
「おっぱいを吸って全部治ったんだよ! いいから早く! あと四分三十秒しかないぞ!」
「ええええ⁉️」
どうやら、ここは学園から全然離れていない場所だったらしく、二人を正門まで運んでも残り一分の猶予があった。
「じゃあ、ちょっと後処理をしてくる。ここにいてくれ。おっぱいはもう戻していい」
「え、うん……」
ミレイのきょとんとした顔を他所に、俺は急いで現場に戻ると、男の拳銃を持った右腕を曲げ、さらに銃口を男の少し開いた口の中に向け、引き金を引いた。
そして、再度その場から急いで立ち去り、俺が丁度正門に着いた頃に時間切れ。
時が動き出した。
パァン……。
微かな破裂音が、いくつか隔たれた障害物を越えて聞こえてきて、無事、当面の問題解決に至ったことが分かった。
「ミレイ、約束してくれ。さっきまでのことは誰にも何も言わないこと。恥ずかしいとか恐ろしいとか、そういう問題じゃなく。君の、君達の将来に関わることだ。大丈夫、すぐに話すから。俺に付いてきてくれ」
「う、うん……」
「ちょっと待てよ!」
俺達が学園内に向かおうとした時、動けるようになったナツが引き止めてきた。
「『学園一の変態』が、なんでミレイと気安く話してるんだよ!」
「ミレイ、ダメだよ。危険人物に近づいちゃ。ほら、こっちに来て!」
「え……? あ、あの……」
「学園長から呼び出されてるんだよ、俺とミレイは。心配なら、お前達も一緒に来いよ。ただし、学園長室の前までだけどな」
「本当なのかよ? 怪しいな」
「そもそも、一緒にいること自体が変な噂になっちゃうでしょ!」
「……」
「じゃあ、離れていいから。ただし、ミレイとは余計な会話をするなよ。これからするのは大事な話だから」
「……。どうする?」
「本当に学園長に呼ばれていたとしたら行くしかないけど……」
「私もなんで呼ばれてるのか分からないけど……。行ってみたら分かるよ!」
「その通り。流石、学園一の美少女パーティー、『リトルヴィーナス』のリーダーだ」
「おだてりゃいいってもんじゃないぞ?」
「私達のパーティー名を知ってるってことは、私達のランクも知ってるんでしょ?」
「ははは……。その相談も学園長にできたらいいなぁ……」
「その必要はない。『Dランク』の落ちこぼれ美少女パーティーを、この俺が『レジェンドランク』に引き上げるから」
『…………。ええええぇぇぇぇ⁉️』
俺の宣言に、少しの間を置いて、三人がこれまでに見たことがないほど驚きの表情になった。
「お前達、『リトルヴィーナス』のパーティー名から察するに、『メガミバースト』のフォロワーパーティーだろ? 当然、同じレジェンドランクを目指しているはずだ」
「いや、そうだけどさぁ!」
「現実はそんなに甘くないし……」
「うん……」
「しかも、顔と身体目的で、お前達をパーティーに加えようとしてくる連中は数知れず」
「お前が言うな! 『俺のママになってくれ』とか『おっぱいを吸わせてくれ』とか誰彼構わず言いまくってるクセに! なんで退学になってないんだよ!」
「これまで私達に言ってこなかったのは運が良かったけど、パトロールのあとに正門前で話しかけられた時は、ついに来たかって思ったね」
「え……?」
「退学寸前だったことは間違いないが……ミレイ、急ぐぞ。詳しくは、あとだ」
「う、うん……!」
それから、俺達は足早に学園長室に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます