ウォーズカード 応募受付期間終了時点までに本文が10万文字(文庫本1冊分の目安文字数)以上であること。なお、長編、連作短編等小説の形式は不問といたします。2月2日

鷹山トシキ

第1話 ​🥊 現代の闘士、奥州へ立つ

 🍂 郷土の呪いとムエタイの拳

​ 令和の世。秋田県大仙市出身のムエタイ選手、**斉藤 さいとうたける**は、12月15日に国内のタイトルマッチを控えていた。残り2週間しかない。彼は試合前の調整で、地元の古書店に立ち寄った際、埃を被った一枚の古いカードを見つける。

​ それは、まるでゲームのカードのような体裁だが、和紙に血のような朱色で「後三年の役」と記されていた。カードを手に取った瞬間、猛の左腕に熱い痛みが走る。

​「なんだ、これ…」

​ その夜、カードがまばゆい光を放ち、猛の視界が歪んだ。

​ 気づくと、猛は泥と血の匂いが漂う戦場に立っていた。周囲には鎧を着た武士たちがおり、秋田の地では見慣れぬ、殺伐とした空気が流れている。

​ 彼の左腕に刻まれたカードの文言が、現実の古文書のように詳細に展開された。

​【戦争カード:後三年の役】

​ 時代: 永保年間(1083年~)

​ 陣営: 源義家軍 vs. 清原家衡・武衡軍

​ 目的: 敵将・清原家衡を討伐せよ。

 ​制限時間: カードが光る間(約二週間)

​ 失敗条件:

  1. 制限時間超過(2025年へ強制送還)

 2. カードの破損(持ち主の即死)

 猛は戦場に放り込まれたのだ。

 ⚔️ 源義家との邂逅

​ 混乱する猛の前に、一際威厳のある武将が現れた。後の世に「八幡太郎」と称される、源 義家その人だった。

​「貴殿は、清原の悪鬼に立ち向かうために、遥か未来より天が遣わした闘士か」

​ 義家は、猛の左腕の光るカードに気づき、その力を察した。義家は、清原氏の内紛に介入し、兵糧攻めの最中だったが、決着がつかず苦戦していた。

​「私はムエタイ選手だ! 戦場なんてまっぴらだ!」と抵抗する猛だが、義家は涼しい顔で刀を鞘に戻した。

​「貴殿のその異形の武術、恐るるに足らぬ。しかし、この戦は奥州の民の運命を握る。そして、貴殿が戻るには、清原家衡を討ち、この戦を終わらせるしかない」

​ 猛は、故郷秋田の歴史に巻き込まれたことを理解した。ムエタイの技術は、刀や槍には劣るかもしれないが、この時代にはありえない**「徒手空拳」**の破壊力を持つ。

​「わかった。やろう。俺は、試合のリングじゃなく、この戦場で勝って、秋田に帰る!」

 💥 地獄の兵糧攻めとキック

​ 義家の陣営に加わった猛は、早速その異能の力を発揮する。

​ 清原軍が籠る**金沢柵かねざわのさく**への兵糧攻めは長期化し、両軍とも疲弊していた。そんな中、猛は義家の命を受け、清原軍の斥候せっこう部隊を相手に孤軍奮闘することになる。

​ 清原勢の侍が、猛に斬りかかる。猛は、刀の軌道を見切ると、得意のミドルキックを侍の胸板に叩き込んだ。

​ ドゴォ!

​ 甲冑ごと吹き飛ばされた侍は、そのまま戦闘不能に陥る。

​「な、なんだ、あの足技は! 鬼か!」

 清原勢の兵士たちが恐れおののいた。

​ しかし、清原氏の棟梁、**清原 家衡きよはらいえひら**は、猛の存在を脅威と見なした。

​「あの異国の武術を使う男を討て! カードの光が消える前に、奴を始末するのだ!」

​ 猛の左腕のカードは、時間と共に、光を強くしたり弱くしたりを繰り返している。残り時間は、刻一刻と迫っていた。

​ 猛のムエタイの闘志は、歴史の渦の中で、故郷の運命をかけた戦いへと駆り立てられていく。

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