第14話◇薔薇尽くしのアフタヌーンティ
「実は、そのお祖母様のことで、困っているのよね」
わたくしが今後についてもやもやと考えていると、先ほどよりもしょんぼりした声でレジーナが呟いた。
なので、わたくしは、ついつい薔薇のことに持っていかれそうになっていた意識を引き戻す。
心配。
不安。
そんな気持ちが強く伝わってきたから。
「住んでいる別邸が老朽化していて。取り壊すにも補修するにも、とにかくこの屋敷でしばらく一緒に住もうと説得しているのだけど、なかなか納得してくれなくて……」
「どうして?」
「何やら、お祖父様との思い出が多すぎて、離れられないんですって。使用人も最低限だし、防犯だって……」
「うーん、さすがに心配よね」
「そうなの」
過去に「ちょっと怖い」ってこぼしていたことは何度もあったけれど、それでもレジーナにとっては大好きなお祖母様なんだろう。
わたくしの立場ではライランズの問題には踏み込めないけれど、せめてと寄り添って話を聞く。
「ライランズ伯爵家はお祖母様が跡取り娘で、お祖父様は当時、敵対していた家門からお婿さんとして我が家に入ったそうなの。でもね、すっごく仲良しだったみたい。夜会のたびに二人とも、この薔薇を身に着けていたんですって」
「そうなのね……」
再度、わたくしはその薔薇を見つめた。
夜会のたびにおそろいの花を纏う、素敵だわ。
わたくしとウィル様も、今後そういうことができるのかしら。
たとえば「希望のかけら」を、わたくしの髪とウィル様の胸元に飾っちゃう、とか……。
ホワホワとその姿を想像してみる。
とりわけ、自分のことよりもウィル様に対する妄想の方が膨らんでいく。
ウィル様の銀髪とブルーグレーの瞳の色に潜む青みと、怜悧なお顔立ち。
そこに、「希望のかけら」の白の花びらの奥に潜む青みが呼応して、きっと素晴らしく映えるわ。
氷の魔法の魔力の印象にもぴったり。
衣装はぜひ、花が引き立つように黒にして頂きたいわね……。
でも花びらは丸っこい丸弁、しかもティーカップのような形をしたカップ咲きだから、見た目の印象はコロンとしていて、柔らかい、可愛らしい雰囲気でもある。
花色のクールさと、形の可愛らしさのギャップ萌え。
そこが「希望のかけら」の特徴だったりするのよね。
普段は「冷徹」と言われているウィル様だけど、本当はそんなに怖い方じゃないのよ、と婚約者のわたくしはアピールしたい。
そう、ウィル様もギャップ萌えがある方……。
どこか怖くて強引だけど、逆に可愛らしいところもおありだし。
ちょっと、子供時代のわたくし、あの方に一番似合う薔薇を手渡したのかもしれない。
でかした、センスあるわ。
だって、ウィル様にぴったり似合うんだもの、あの花。
美しすぎる……ッ。
「お嬢様。お茶とお菓子をお持ちしました」
そこまで妄想が暴走したところで、先ほどわたくしを案内してくれたアンが再度現れた。
「わぁ。今日はとっても豪華だわ!!」
テーブルの上に置かれた三段のティースタンドとお茶のポットとカップを見た瞬間、レジーナが歓声を上げる。
言葉の通り、本当に豪華だった。
マクファーソン・ライランズ両家の料理人の本気を見たわね。
「すごい、レジーナが用意してくれたサンドイッチとスコーンも、みんな美味しそう!!あら、キッシュまであるのね?キッシュの上にサーモンの薔薇が……。ふふっ、最高!!」
「サンドイッチのパンの部分も、薔薇の焼き印がついているわね。横にはスライスきゅうりを丸めて作られた薔薇も。薔薇尽くしね」
わたくしが持ち込んだ薔薇のジャムは、黄色の蔓薔薇が描かれた小皿に盛られていて、ティーポットの横に用意されている。
薔薇がモチーフのケーキ・クッキー・マフィンもティースタンドの三段目に。
二人して、自然とニコニコしてしまう。
わたくしもレジーナもそれぞれ大変なことは色々とあるけれど。
結局、憂鬱な気持ちなんてものは、こういう満足感で吹き飛ばすに限るわね……!!
さあ、頂きましょう、とわたくしたちは席について、今日の会食を始めた。
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