第5話-計画?
「えぇー!? なんで土下座するのですか!? あの、頭を上げてください!」
「ダメだ! これをやらなきゃ……必要なんだ! 俺が何をしたのかのためと……そして、俺自身のために!!」
「うぅ……何を言っているのか分からない……あの、気にしないでください。だってさっきのことは……その……無意識にやったので……」
(ん……? あれ? 何だこの雰囲気?)
なんとなく、予想外に変な空気になった。なんで赤くなってるんだろう――
「……くっ!」
突然、全身にチクチクとした痛みが走った。それとともに、吐き気にも近いふらつきを感じた。
姿勢が崩れ、腕で支えていなければ床に倒れそうなほどだ。
「あっ! 大丈夫ですか!?」
彼女は俺の体を支え、ベッドに座るのを手伝ってくれた。
「無理しないでください。ひどい状態から目覚めたばかりなのですから……」
「うっ……いや、それでも……必要なことだったから……」
「……ふふっ。さっきのことはもう気にしないでください」
「……それじゃ、お言葉に甘えて……ふっ、改めて……無意識だったとはいえ 言い訳にはならない。本当にごめん」
「あはは……また 謝罪からですか」
「まあ、あはは……はっきりさせないとから」
でないと、逮捕されるかもしれない。マジで……
もうこの件が話題にならないように、きっぱりとケジメをつけなければならない。
ロリコンの烙印を押されるのは嫌だ。
「えへへっ、本当に大丈夫です。どうぞ、ご心配なく」
(……かわいい)
彼女は無邪気に笑った。年相応の笑顔で、明るく、見るからに元気だ。その笑顔の可愛らしさには、誰が見てもかわいいと思うはずだ。
(うん、彼女には、さっきの悲しそうな泣き顔よりも笑顔のほうが似合う)
そう、これは自然な反応なんだ。彼女の笑顔を見て可愛いと思ったからと言って、俺がロリコンになるわけではないんだ。
そう、俺はロリコンではないのだ、うん。
「えー……確か、君はあの子だよな?」
「はい。あの時は父さんを助けてくれて本当にありがとうございます。ブラッドフォード様が私たちを助けてくれて、本当によかったです」
「いや、それは気にしない……ん? ブラッドフォード様……?」
「あ、はい。学生証でお名前を知りました。圭ブラッドフォード様……ですよね?」
ブラッドフォード圭……って……え?
誰でが? 俺が? えっ?
まさか……本当に…………
俺が、ブラッドフォード圭……だとしたら、ここは……ここは本当に…………!
「あの……ブラッドフォード様? どうかしたんですか?」
「え? あ……いや、なんでもない……気にしないで……そうか……俺の学生証で……」
「はい、これです。倒れたときにポケットから落ちたんだと思います」
彼女はそう言って俺にその学生証を渡す。
学生証自体はシンプルなものだった。名前と持ち主の写真、そして学園の名前とエンブレムが書かれていた。変なところは何もない。
しかし、それを見た瞬間、俺は動揺を禁じ得なかった。
(そういうことか……)
「……あの」
だめだな。あんまり黙っているわけにもいかない。
「拾ってくれてありがとう」
「あ、いえ! 感謝するような大層なものではないですので…………それに……」
「ん? どうした?」
「えっと……その……」
少女は何かを伝えたいようだが、何かの理由でそれをためらっているようだ。表情には、悩んでいることを物語っている。
まさか――
「えっと……寝ている間に何かあった?」
「えっ! あ……それは……」
その反応本当にまさか……!
「俺……さっきより、もっととんでもないことを……!?」
「え? あ――」
「やめてやめてやめて! 言わないでくれ! 頼む! 心が折れるから!」
恥ずかしくてしゃがみこんでしまった。自分が何をしたのか知るのが怖いし、この後どうすればいいのか見当もつかなかった……
「あの! 違います! そんなんじゃないんです。ブラッドフォード様は何も悪いことはしていません! むしろ、とんでもないことをしてしまったのは私たちの方なんです!」
「……え? どういうこと??」
「あの……その……とんでもないことなんですけど……そうなんですけど……でもその……まだ何もしてないっていうか……本当にごめんなさい!」
さっきよりも震えている……とんでもないこととは一体……まあでも、とにかく――
「そんなに緊張しないで……大丈夫だから。何の話かわからないけど、お前たちに悪意を持ってやったわけでもないだろう? なら、問題ないよ」
何をしたのか見当も尽きないが、大したことではないだろう。
俺が寝ている間に何かしてしまったかもしれない、という可能性に比べれば……
うん……それ以上のとんでもないことはないと思う。
「ごめんなさい……」
「あはは、本当にだいじょ――」
「あるんです……」
「……ぶ?」
「実は……えっと、その……村のみんなが……ブラッドフォード様が、治らなかったり、意識が戻らなかったりした時にどうするか……っていう話をしてたのです……」
「……うん?」
「その……どこかに埋めるとか……森に捨てるとか……海に流す……とか……です」
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………パードン?」
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