クラスで一番可愛い女子のお母さんとデキてます
青キング(Aoking)
美奈子さんとの幸せな時間
頭の下から伝わる体温と柔らかさが心地よく、寝入りそうになった意識を寸前で手元へ引き寄せた。
まどろみから目を開けると、休日の昼間だというのに焦がれて会いに来た愛しの女性の顔が微笑んで俺を見下ろしていた。
「浩介くん、寝てもよかったのに」
愛しの女性である美奈子さんの温和な声がソファの上で降り注ぐ。
美奈子さんは小学校からの幼馴染である絵奈の母親だ。そんな絵奈との関係にお節介でも焼きそうな立場の美奈子さんに俺は膝枕をしてもらっている。
じっと見つめていると、美奈子さんが少し顔を近づけてきた。
動いたせいか美奈子さんの耳横の髪が垂れて先っぽが俺の頬に触れる。
「浩介くんは今どんなことを考えてたの?」
「美奈子さんのこと」
「私の、どんなこと?」
「やっぱり綺麗だなって」
本音を口にすると、近くにある美奈子さんの顔に赤みが差した。
そうしてすぐに俺が大好きな照れた笑顔を見せてくれる。
「もう、あんまりおばさんを持ち上げちゃダメよ。ちょっと嬉しくなっちゃうから」
「嬉しくなってください。僕は本気で言ってますよ」
「うん、ありがとう浩介くん」
美奈子さんは満更でもない表情で頷き、俺の頭を優しく撫でてくれる。
撫でられるのに任せていると、美奈子さんの手が止まり頬に当たっていた髪の毛をごく自然に耳横へかき上げた。
「ねえ浩介くん、私のこと好き?」
「好きですよ」
俺の言葉にお世辞など一切含まれていない。
美奈子さんによく好きかどうか聞かれるけれど、気持ちは揺るがない。
俺の言葉に心が満たされるのか、美奈子さんが恍惚とした目をして見つめてくる。
「私も浩介くんのこと好き」
そう返すと、垂れ下がっていないのに耳横へ髪の毛をかき上げる仕草をする。
無駄に見える仕草も、美奈子さんの微細な心の動きの表れだと思うと愛おしい。
それにしても、こうして間近で見られる絵奈よりも柔和な美奈子さんの顔も好きだ。
「浩介くんっ」
俺の名前を呟きながら美奈子さんがさらに顔を近づけてくる。
今日も受け入れるつもりで俺は首に力を入れて目を閉じた。
美奈子さんの微かな息遣いの後、口が塞がれる感覚に遅れて舌が触れ合った。
何度目か知れず互いに恐れのなくなった舌の動きで絡め合う。
ちょっと息が苦しくなってくると、美奈子さんの舌が離れて髪の毛が二部ほど触れる位置まで顔が上がる。
美奈子さんは唇に人差し指を当てて微笑む。
「キスが上手くなったね、浩介くん」
誰のおかげだと思ってるんだ。
俺は笑い返した。
「美奈子さんのためですから」
答えてから美奈子さんの息遣いが離れたことに寂しさを覚える。
不意打ちを承知で腕を伸ばして美奈子さんの首に回した。
顔を引き寄せて唇を合わせると、数秒して美奈子さんが弱い力で抵抗して顔を離した。
少しはにかみを含んで美奈子さんが眉を顰めてみせる。
「浩介くん、ここはダメ」
「……はい」
「ベッド行こ」
「はい」
素直に応じて、美奈子さんの腿から上体を起こした。
膝枕をやめた美奈子さんはソファから立ち上がってリビングのドアまで歩いた。
ドアノブに手を掛けてから、ソファにまだ足を投げ出している俺を振り向いて口を開く。
なんと言うのか、おおよそ分かっている。
「浩介くん、準備あるから……」
「三分待ってね、ですよね」
先回りして言うと、一瞬だけ怒ったような目をしてから表情を和らげた。
「年上を立ててよ、もう」
「年齢なんて気にしてませんからね」
「じゃあ、ちゃんと三分経ってから来てね」
「はい」
俺の返事を聞くと、美奈子さんはリビングから出ていった。
きっかり三分を計るために、リビングボードに置かれた猫の顔の形をした時計を覗いた。
時計の表示は、十四時少し過ぎを指していた。
日が暮れる頃には絵奈が帰ってきてしまうだろう。
美奈子さんといられるのが残り数時間だと思うと、たった三分さえ惜しいような気がしてしまった。
以前の自分だったら、三分なんて吐いて捨てていたのに。
待ちながら美奈子さんとデキるきっかけになった日を思い出す。
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